【森脇浩司の目】鷹千賀、初回3四球大荒れも復調を感じた訳 “縦振り”と“手首の立ち”

ソフトバンク・千賀滉大【写真:荒川祐史】

初回にタイムリー、押し出し四球で2失点もその後は危なげない投球を見せた千賀

■ソフトバンク 10-3 オリックス(14日・京セラドーム)

ソフトバンク、オリックスともに3連勝と好調のチームの戦いは終わってみれば17安打10得点でソフトバンクが快勝した。今季2度目の登板となったエース・千賀が初回に2失点と不安定な立ち上がりを見せたが6回2失点と試合を作った。ダイエー、ソフトバンク、中日でコーチを務め、オリックスでは監督も務めた森脇浩司氏は千賀に復調の気配を感じていた。

千賀は初回、2死一塁からジョーンズ、T-岡田に連打を浴び1点を失うと連続四球で押し出し。いきなり2点を失い同点に追い付かれた。150キロ後半の直球をマークするなどボール自体に力はあったが大荒れの展開を予想させる立ち上がりだった。

「初回が得意な投手はまずいない。パワーピッチャーは尚更でどうしても立ち上がりがポイントになる。前回同様に初回2失点のスタートとなったが同点までに抑えリードを許さなかったこと、2回に味方が1点を取ると下位打線とはいえ3者凡退で抑え続く3回も無失点で切り抜けゲームを落ち着かせたことが勝利に導く“エース”として最低限の役割を果たすことになった」

初回だけで3四球を与え37球を費やしたが、その後は危なげない投球を見せ最終イニングとなった6回は3者連続三振で締めくくった。中6日、しかも6連戦のカード頭で5回を持たず降板することを許さなかった。7日・前回登板の楽天戦は5回3失点、そして2度目の登板は6回2失点。まだ、本調子とは言えないが森脇氏は復調の気配を感じ取っていた。

最大の武器でもあるフォーク「手首が立ったリリースで投げられている場面も見られた」

「故障もありシーズンの登板は多少遅れ、まだまだ千賀本来の投球は出来ていない。それでも前回に比べると武器のフォークは改善させていた。横ぶり気味だった投球フォームは縦ぶりになり、手首が立った形のリリースでフォークも投げられている場面も見られた。初回2失点からその後は5イニングを無失点というのはさすがという投球だった」

森脇氏は千賀が6回を投げ切ったことで自身にも、そしてチームにも大きな好影響を与えたと分析する。仮に5回で降板だった場合、残り4イニングを中継ぎ陣に託すことになる。

「言い方は悪くなるかもしれないが、あの状況で6回を投げ残り3イニングならリリーフに送る投手はある程度の投手を出す必要があった。同一カード6連戦、かつ初戦ということを考えれば中継ぎを使いたくない。初登板となった板東に2イニング、ルーキーの津森で凌ぎ切ることができた。これは今後の戦いを考えても大きい」

カード初戦でソフトバンクは3投手、対するオリックスはアルバースが4回途中で降板し計5投手を起用することになった。千賀は降板後に「最低限のピッチングはできたと思う」と語っていたが、チームに与えた影響は大きかった。

「まだまだ、本人も納得していない部分は多々あると思うが、前回が初回29球で5イニング94球、今日が初回37球で6イニング115球と確実にステップアップしている。また、勝てる投手の条件である修正能力を前回より見ることが出来たし、それは捕手の甲斐にも同様のものを強く感じ頼もしい限りだった。いずれにせよ、前回より今回、そして次の登板に繋がる投球だったのは間違いない。登板を重ねステップアップしているだけに、次回登板はより期待は持てるといえるだろう」

ソフトバンクのリーグ制覇、そして日本シリーズ4連覇に向け千賀の完全復活は必要不可欠。遅れて来たエースは一歩ずつではあるが確実に本来の姿を取り戻しつつある。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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