詐欺に遭い消費者金融から115万の借金「妻にバレずに1年で返せますか?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30歳、会社員の男性。詐欺に遭い、消費者金融から借金をしてしまったとのこと。奥様にバレずに返済したいそうですが…。FPの秋山芳生氏がお答えします。

詐欺にあって消費者金融から借金してしまった。

115万円の返済を1年で払い終えたい(年利18%。詐欺にあって借金していることは誰にも言っていない)。3年後に借り入れして個人事業主として自営者予定(医療関係)。借り入れ前に借金を返済し、200〜300万円自己資金を用意したい。

現在週5勤務(正社員)。夜間に週2パートで勤務。

【相談者プロフィール】

男性、30歳、既婚(妻32歳)

職業:会社員

子どもの人数:1人(0歳)

同居家族について:妻は専業主婦。働いているのは私のみ。

住居の形態:賃貸

毎月の世帯の手取り金額:42万円

年間の世帯の手取りボーナス額:60万円

毎月の世帯の支出の目安:37.4万円

【支出の内訳】

住居費:12万円

食費:4万円

水道光熱費:3万円

教育費:1万円

保険料:2万円

通信費:1万円

車両費:1万円

お小遣い:0

その他:12.4万円(子育て用品3,生活費5,定期返済3[実質返済2]予備費1.4)

毎月の貯蓄額:5.6万円(iDeCo2.3 積立NISA[教育資金]3.3)

現在の貯蓄総額:10万円

現在の投資総額:50万円

現在の負債総額:115万円

ボーナスからの年間貯蓄額:10万円


秋山:: ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの秋山芳生です。詐欺にあって消費者金融からお金を借りてしまっているのですね。3年後にさらに事業資金を借り入れして個人事業を開業されるには、与信などの信用情報がきれいである必要がありますので、まず現在の借り入れを滞りなく返済する必要がありますね。

まずは返済プランを考える

1年で115万円の借金の返済を行い残り2年で250万円の貯蓄が作れたら、ご要望されている個人事業主の開業資金ができたという目安とさせていただき、これをどうやって実現していくかを一緒に考えていきましょう。

金利18%の借金115万円を1年で返済となると、毎月10万5431円の返済が必要になります。総額126万5172円の支払いということになり、115万円の借り入れなのに利子を1年で11万5千円も多く支払わなければいけなくなります。金利って怖いですね。

投資よりも返済を優先させる!

現在の相談者さまの支出をみていくと、まず気になるのが投資に充てている5.6万円です。iDeCoもつみたてNISA も税制優遇制度として資産形成には非常に有効ですし、私も利用をお薦めしています。しかし、借金がありその金利が18%となると話が違ってきます。投資で増やせる金額より借金の利息のほうが大きくなってしまうからです。iDeCoは所得控除が受けられるので、単年の計算では借金の利子18%よりも有利になることがありますが、借金の返済が滞り借金額が膨らんでしまうと、「複利(利子に利子がつくこと)」でかかってくるので、怖さが異なります。絶対額が2.3万円×12カ月の27.6万円の所得控除枠から返ってくる税金より断然多くなる危険性があります。

現在の借金返済額は毎月3万円とのことですが、3万円ずつ返していくと返済完了まで58カ月かかり、累計支払額は172万4153円という計算になります。115万円の借金に利子が57万円以上のってくることになりますので、一旦投資を積み立てるのをストップし、全力で借金の返済に充てたほうが良いでしょう。つみたてNISAは掛け金をストップし、iDeCoは掛け金を5000円まで下げることができるので最小限まで減らしましょう。

つみたてNISAは解約して支払いに充てる

また、運用資産が50万円とのことですが、このうちiDeCoは引き出せませんが、つみたてNISAで積み立てているものがあれば解約し借金の返済に当てたほうが良いと思います。
そうすると利子の支払いが上記よりも減らせることになります。

仮に現在の運用資産のうち30万円ほどがつみたてNISAとして、貯蓄が10万円あるとすると、40万円を返済に充てられます。その上で、残りの65万円の借金を12カ月で返済するには、5万9591円ずつ支払えば完済できます。

毎月の借金返済額3万円に加えて、つみたてNISAとiDeCoに投資している5.6万円の内、iDeCoの最低掛け金5000円を引いた5.1万円を返済に充てられれば、合計8.1万円の返済ができるので9カ月で返済が可能になりますし、利子の支払いも5万円ほどにできますね。

借金がバレないように節約しながら開業資金を貯めるには

借金返済後2年で250万円の貯蓄をするには、支出を減らして貯蓄体制を強化していく必要がありますが、奥様に借金の返済をしていることをバレないようにするという条件も加えると、露骨な節約ができないので、節約の体感値が高い変動費(食費、日用品、交際費)は変えずに、残りの固定費を節約することで賄っていきたいと思います。

保険料が現在2万円とのことですが、こちらも見直しができると思います。お子様がお生まれになられているのと奥様が専業主婦とのことですので、ご主人にもしものことがあった際の死亡保険は備えておいても良いと思いますが、医療保険は高額療養費制度があるので特に病歴があって不安ということもなければ解約してもよいでしょう。死亡保険も収入保障保険が効率的になると思います。必要十分な死亡保障をえても月に1万円も保険料はかからないと思いますので、保険全体を見直すことをおすすめします。

意外とかかっている謎の光熱費も見直しを

さらに、光熱費が3万円とのことですが3人暮らしでは一般的には高いと思います。コロナ禍において在宅での仕事になっていて電気代がかかるとか、お子さんが小さく何かしらの事情で多くかかっているのかもしれませんが、電気代・ガス代ともに自由化により安いところが多くでていますので、工夫ができるのではないでしょうか。お住まいの地域によっても最安が変わってくると思いますが、見直しされると良いと思います。すくなくとも月に5000円は削減できるのではと思います。

先程の借金の返済に充てていた8.1万円に加えて、保険と光熱費の節約で月に1.5万円ほど支出を減らし貯蓄にまわすことができれば、月の黒字が9.6万円となり年間115.2万円の貯蓄をつくることができます。

これにボーナスからの年間貯蓄10万円を加えると、125.2万円の貯蓄をつくることができるので、借金返済後、2年で250万円を貯められる計算になります。

副業、起業ブームの心理を突いた詐欺に注意

今回は詐欺にあわれて借金ができたとのことですが、詐欺にあったということは自分の中にある何らかの欲望が見透かされ、つけこまれてしまったのかもしれません。うまい話には裏があり、楽をして儲けることにはリスクがつきまといます。最近では副業や起業ブームから「ラクして毎月●●●万円の収入がえられるようになる」などを謳い文句に、高額な情報商材やセミナーが横行しているので、甘い話にまどわされず、起業についても慎重に且つ地に足がついた計画をなされると良いと思います。

以上、ご参考になれば幸いです。

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