「子どもが保育園の登園を断られた」「近所の人から無視された」。新型コロナウイルスの感染者が相次ぐ長崎市の長崎大学病院と長崎みなとメディカルセンターの職員や家族に、外部から厳しい視線が注がれている。大学病院は差別に関する職員アンケートを開始し、センターは職員向けのメール相談窓口を設置した。田上富久市長は市民に病院関係者や感染者への応援を訴えている。
「出勤停止になっていないか。そう(出勤停止)であればサービスの調整が必要」。9日昼、大学病院に勤務する50代女性看護師は、寝たきりの母が週1回通うデイケア施設からメールが届き、「どきっとした」と言う。
女性は感染者と接触がなく、母の通所にも影響はなかった。デイケア施設からの確認はリスク管理上、適切だったと振り返る。ただ「相手への言葉遣いを一歩間違えば風評被害になる」とも感じている。
大学病院は14日、職員約2500人に差別や風評被害を受けていないかアンケートを始めた。中尾一彦病院長は15日の記者会見で、回答は既に「数百例ある」と明かした。「妻が職員という理由で夫が職場で出勤停止になった」などの声が寄せられているという。7月末をめどに集約、公表し市民の理解を得たい考えだ。
クラスター(感染者集団)が発生した長崎みなとメディカルセンターには問い合わせやクレームの電話が殺到しているという。職員約1100人向けのメール相談窓口には「子どもが保育園で隔離されている」など20件超の声が届いている。担当者は「1人で抱えているケースもあり、潜在的にはもっと多い」とみる。
こうした状況を受け、田上市長は13日の記者会見で「病院は(感染対策に)全力で対応している。この危機を乗り越えるため、職員や家族を応援してほしい」と市民に呼び掛けた。