観客を迎えての初開催となったインディカー・ロードアメリカ戦は大盛況も今後は不透明

 新型コロナウィルス感染拡大の影響で3カ月遅れの6月に開幕戦を迎え、2レースを無観客で開催してきたインディカー・シリーズは、ロードアメリカでのダブルヘッダー開催となる第3、4戦で今年初めて観客をサーキットに入れて開催した。

 ウィスコンシン州の新型コロナウィルスのパンデミックは、感染者数ではアメリカ50州で20番手台にランクされている。

 ただし、感染者数はコンスタントに増え続けてきていて、7月初旬に3万人を越えた。日本の約40パーセントという広大な土地に600万人足らずしか住んでいない、密集と真逆の環境を考えると、そんなに呑気にはしていられないはずだが、州政府はインディカーレースのような多くの人を集めるイベントの開催にはずっと積極的だった。

 イベントのプロモーターとして、ロードアメリカは周到に準備を進め、いかに安全かの告知にも努めていた。

 チケットは購入者が自分でプリントし、サーキットではゲートに直行してよいことにされた。チケットブースの列に並んだり、チケットを受け取とることで人同士が接触する機会を減らし、感染のリスクがを小さくすることにしたのだ。

 サーキット入場者全員が、まずは検温され、平熱だったらマスクと消毒ジェルが配られ、場内ではソーシャルディスタンスを取るよう声がかけられた。ただし、マスク着用は推奨であって、義務付けではなかった。

 いつもなら特別なチケットなしでも入れていたパドックだが、今年は関係者だけ。それも、前もって承認された人に限られていた。

 それはメディアも同じで、レース中のピットもパドックさえも立ち入り禁止。レポーターはドライバーへのインタビューをインターネットを介して行い、カメラマンはごく限られた数のみに撮影が許されていた。今後も暫くは取材者数は増やされないとみられる。

 それでもロードアメリカは大盛況だった。サーキットは週末の入場者数を発表しなかったが、土曜日も日曜日も3万人以上が全長4マイルの高速ロードコースには集まっていたと見られる。

 サーキット内のキャンプ場のスペースもほぼ完売だった。うねった地形をうまく使ったコースサイドの斜面から、ファンは適度のソーシャルディスタンスを保ってレース観戦を楽しんでいた。

さまざまなかたちでレース観戦を楽しむ観客たち

 アメリカ中で3月からスポーツ観戦ができない状態になっていたから、大勢が押し寄せた。スケジュール変更で1レースがダブルヘッダーになったことも人気上昇を招いたようだ。

 昨年のインディ500ウイナー、チーム・ペンスキーのシモン・パジェノーは、「ファンのいないサーキットというのは、奇妙に感じるものだった。プライベートテストみたいでね。レースの週末にはファンの作り出す、このような高揚した雰囲気が必要なんだ」と話し、今週末のコースサイドに多くのファンが陣取っているのを喜んでいた。

 昨年、19歳のルーキーながら2勝して一気にアメリカでの人気を掴んだコルトン・ハータ(アンドレッティ・ハーディング・スタインブレナー・オートスポート)は、「今週はいよいよファンの前でレースができる。でもまだ本来の姿じゃない。ファンはパドックに入れてもらえず、僕らドライバーたちと間近で接することができていない」と言っていた。

 全米プロゴルフ選手権(PGA)はロードアメリカの翌週にオハイオ州コロンバスでビッグトーナメントを行うが、シーズン再開後初めてパトロンを入れるはずだったものを直前になって無観客に変えた。地元自治体の指示を受けてのことだ。

 アメリカのCOVID-19パンデミック下でいちばんアクティブなのがモータースポーツだ。

 NASCARは5月中旬にシーズンを再開させ、すでに10レース以上をこなしている。インディカーも、もう4レースを終えた。プロ野球MLBはまだシーズンをスタートさせておらず、3月にシーズンを中断したプロバスケットボールNBAとプロアイスホッケーNHLも、まだプレーオフ開催に漕ぎ着けることができていない。

 大きな期待を携えてサーキットへやってきたファンは、その目の前で繰り広げられたエキサイティングな2レースを楽しんだ。

 2レース目のエンディングは、未来のスタードライバーふたりによるドッグファイトと、ゴール前2周の大逆転劇となり、ロードアメリカは大歓声に包まれた。

 このようにシリーズの第3、4戦は観客を入れて大成功を納めたが、今後のレースが同じように開催されるとは限らない。それぞれの地域が置かれた状況は異なり、地元自治体の定める方針に従ってレースイベントは行なわれる。これからキャンセルされるレースが出てくる可能性さえある。

 インディカー・シリーズは7月17、18日にアイオワ・スピードウェイでダブルヘッダー戦を開催。このレースでも観客を迎え入れる予定だ。

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