100億光年先で起きた「ショートガンマ線バースト」残光の観測に成功

■星形成が活発だった頃の宇宙における中性子星どうしの合体を知る機会に

ジェミニ北望遠鏡によって撮影されたGRB181123Bの残光(丸で囲まれた部分)(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/K. Paterson & W. Fong (Northwestern University))

Kerry Paterson氏(ノースウエスタン大学)らの研究グループは、2018年11月23日に検出されたショートガンマ線バースト「GRB181123B」の残光を観測した結果、GRB181123Bがおよそ100億光年先(赤方偏移1.754)で発生したことが明らかになったとする研究結果を発表しました。発表によると、GRB181123Bは確認されたショートガンマ線バーストとしては2番目に遠く、光学的に残光が観測されたものとしては最も遠いとされています。

ショートガンマ線バーストにおけるガンマ線の放出は2秒未満という短時間で終わり、光学的に観測できる残光は数時間ほど続いた後にフェードアウトしてしまうといいます。バーストはいつどこで発生するかわからないため、残光を観測するにはバーストの検出後すみやかにその方向へ望遠鏡を向けなければなりません。

NASAのガンマ線観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」によってGRB181123Bが検出されたのは、アメリカでは祝日となる感謝祭の夜でした。研究に参加したWen-fai Fong氏(ノースウエスタン大学)は、感謝祭のディナーを終えて眠りかけたまさにそのときに、ガンマ線検出のアラートに起こされたといいます。

ただちにジェミニ天文台での観測準備を進めたFong氏が連絡を取った同僚のPaterson氏は、偶然にもW.M.ケック天文台で観測を行っているところでした。マウナケア山頂のジェミニ北望遠鏡とケック望遠鏡、それにアリゾナ州のマルチミラー望遠鏡(MMT)やチリのジェミニ南望遠鏡による迅速な追加観測の結果、前述のようにGRB181123Bがおよそ100億光年先で発生したことが判明しています。

ショートガンマ線バーストは、連星として誕生した恒星がどちらも中性子星へと進化し、やがて合体する際に発生するのではないかと考えられています。研究グループは、宇宙の年齢が今の3割ほどでしかなかった頃に発生したGRB181123Bの観測によって、比較的初期の宇宙における中性子星どうしの合体を調べる貴重な機会が得られたと捉えています。

Fong氏は「中性子星どうしの連星が合体するまでにどれくらいの時間がかかるのかは知られていませんでした。この時期の宇宙で観測されたショートガンマ線バーストは、宇宙で数多くの星が形成されていた頃には中性子星どうしの連星が速やかに合体へと至ったことを示しているのかもしれません」とコメント。Paterson氏は「私たちは遠方のショートガンマ線バーストという氷山の一角を明らかにしつつあると信じています」と語っています。

© 株式会社sorae