吹き抜けにリフォームするには?工事費用、メリット・デメリットを解説

吹き抜けとは、2階建て以上の建物で、2階や3階の相当部分に床を設置しない部屋のことです。天井が高くなるため、実際の床面積以上に広く感じます。レストランやホテルなどでは、エントランスやカフェテリアに吹き抜けを取り入れて空間を贅沢に使用している人気店もあります。

吹き抜けは、一部の建物に限られた建築様式ではありません。規模は変わりますが個人の住宅であっても、リビングやLDKといった一部の部屋を吹き抜けにしている家は少なくありません。またリフォームやリノベーションによって、個人の住宅に吹き抜けを後から取り入れることもできます。2階に部屋がある住宅でも、該当部分の部屋や天井、梁などを撤去してしまえば吹き抜けの完成です。

今回は吹き抜けにリフォームするために必要な費用や吹き抜けのメリット・デメリット、さらにデメリットの改善方法を紹介しています。

天井に吹き抜けを作る際の費用

新しく吹き抜けを造るためのリフォーム費用の相場は、約150万円です。ただしこの価格は目安で、部屋の大きさや構造、壁や窓に使う材質によっても変わります。特に費用がかさむのは、部屋の撤去が必要になるケースです。2階建ての住宅で1階に吹き抜けを造るためには、天井部分にあたる部屋を撤去しなければならないためです。

また部屋を撤去する時には、リフォーム費用が高くなるだけではなく、工期も長くなることが多いです。事前にどの部屋を吹き抜けにするのか、吹き抜け予定箇所の2階部分に部屋はあるのかなどを確認しておきましょう。

吹き抜けのメリット

吹き抜けのメリットには以下のようなものがあります。

・天井が高くなり縦方向に広くなるため、開放感が楽しめる
・天窓から採光できるため、周囲の環境から影響を受けにくい
・家族が集まりやすい雰囲気をつくることでコミュニケーションが円滑になる
・高級な家具などを置くことが可能になり、おしゃれな空間を演出できる

おすすめする吹き抜けの利用方法は、天窓のように高い位置に窓を設置することです。従来の住宅では屋根裏があるため、天窓を用意しても部屋まで太陽の光を届けることができません。しかし吹き抜けであれば、ふんだんに光を取り入れて、部屋全体を明るく照らすことが可能です。

また部屋が明るいと、そこにいるだけで気分も明るくなるという効果もあります。気分転換をしたい、リラックスしたい時などに吹き抜けの部屋を使うという活用方法もあります。

開放感が楽しめる

吹き抜けの特徴は、縦方向への視界が開けることです。何気なく上を見た時に天井ではなく壁が続いているという事実が、人に伸び伸びとした気持ちと安らぎを与えます。リビングやLDKを吹き抜けにするという活用法もありますが、開放感を楽しむという目的に限定するのであれば玄関を吹き抜けにするという方法もあります。本来玄関は、人が長時間たたずむ場所ではありません。そのためリビングやLDKと同等のスペースを、玄関でも確保している住宅は限定的です。靴入れや傘立てなどを配置することも多く、床面積以上に狭く感じることもあります。

しかし多くの場合で玄関は、住宅を訪問する人が真っ先に足を踏み入れる空間でもあります。玄関で開放感を感じることができれば、家全体が開放感に包まれているような第一印象を与えられるでしょう。住宅に住んでいる人たちだけではなく、住宅を訪問する友人や親戚といった来客にも良い感情を与えることが期待できます。

天窓から採光できる

吹き抜けではない従来の部屋では、壁にある窓や天井に取り付けられた照明などから採光しています。しかしこの方法では、部屋の隅に十分な光が届きません。暗い部分や影となっている部分がどうしても残るため、座る位置によって相手の顔が見えにくいなどということがあります。

これに対して天窓からの採光は、上から部屋全体を照らすことができます。テーブルやソファーを部屋に配置しても、光の通り道を邪魔されることが少ないです。座席で悩まされることも減るでしょう。

日当たりの良さも、天窓を設置することによって得られる効果です。窓を開けていなくとも、外にいるかのような開放感や安心感を味わうことができます。低い位置に設置された窓からの日当たりは、近くに高い建物ができてしまうなどの環境の変化で安定しているとは言えません。しかし天窓や高窓からの日当たりは、このような周囲の影響を受けにくいというのも特徴です。また吹き抜けを造ることで、壁の高い位置に窓を設置することもできます。天窓からの採光が不十分な時には、このような高窓から光を補うことも計算できます。

家族とのコミュニケーションが円滑に

住まいで重要な要素の中には、家族とのコミュニケーションがあります。一方的に話しかけるだけではコミュニケーションは成立しません。またコミュニケーションが成立している自分勝手な解釈をしてしまい、家族の間で溝が生まれていることもあります。住まいの間取りが、直接コミュニケーションを成立させるわけではありません。ですが間取りを工夫することで、コミュニケーションを取りやすい雰囲気をつくることは可能です。

開放的な空気を演出しやすい吹き抜けは、元々居心地がよく、人が集まりやすい場所です。ソファーや観葉植物といった安心できるアイテムを配置したり、子供と楽しめる遊具を用意したりすることで、家族の誰もが満足できる空間を考えてみましょう。

また吹き抜けの側面を利用して、1階と2階を繋ぐ階段を設置するという住宅も増えています。このような階段のお陰で人の顔が分かりやすくなりますし、コミュニケーションを図るきっかけともなります。

高級感が増し、おしゃれな空間に

縦に余裕のある吹き抜けでは、どのような間取りにするか、どのような家具を置くかで全体的な雰囲気が大きく変わります。特に照明の選び方は重要な意味があります。シャンデリアのような照明を飾れば、部屋全体がぜいたくさに包まれた雰囲気になります。シャンデリアには照明という役割もありますが、天窓から差し込んだ光を反射させるという使い方もあります。夜だけではなく昼間も、人の目を楽しませてくれるアイテムです。シャンデリアの中には、高級感を優先したものだけではなく、照明としての機能を優先したシックなデザインのものもあります。こういった照明は、落ち着いた雰囲気を演出する時に有効です。

デメリットと改善方法

様々なメリットを持つ吹き抜けですが、デメリットも存在します。主なデメリットとして以下のようなものがあります。

・部屋の体積が広がるため冷暖房の効率が下がる
・壁の材質や空気の通り道次第では防寒対策が必要な場合も
・音を吸収するものが減るため1階の音が上階に筒抜けになる
・床面積が減ったことにより耐震性が弱まる可能性も
・高い位置にある窓の掃除や天井に飾っている照明の交換が大変
・吹き抜けの側面を利用した階段から転落する危険性

このようなデメリットには、それぞれ有効な改善方法が存在します。防寒や耐震性などは事前にある程度計算して予想することもできますので、担当の建築士と打ち合わせておく必要があります。

冷暖房の効率が下がる

吹き抜けでは、屋根裏に相当する空間も住居スペースとして利用します。これは冷暖房で調整しなければならない空気の量が増加するという意味でもあり、冷暖房の効率低下に繋がります。こういった効率低下への対策としては以下のようなものがあります。

・エアコンの位置を工夫する
・シーリングファンを設置する
・サーキュレーターを使う

ポイントとなるのは、温度差によって誕生する空気の層です。空気は温められると体積が膨張し、逆に冷やされると体積が縮小します。空気自体の重さは変わりませんが体積が変化することによって、密度が変わってくるわけです。空気の量の多い吹き抜けでは、この層の境目が極端な位置になりがちです。

このような原因に対する改善方法は、空気を循環させることです。シーリングファンの設置やサーキュレーターで空気をかき混ぜ、人の高さまで適温の空気を運ばせるわけですエアコンの位置を変えることでも、狙った位置に快適な空気を送ることができます。ただしシーリングファンやサーキュレーターを使うことによって、光熱費が増えるという問題点も抱えています。

防寒対策が必要な場合も

吹き抜け環境での冷房と暖房では、暖房の方がより非効率です。冷やされた空気は密度が上がり、下から溜まっていきます。これに対し温められた空気は密度が下がり、上から溜まっていきます。縦に長い吹き抜けでは、暖気がなかなか降りてきません。防寒対策が必要な理由はここにあります。

住宅の年数によっては、外壁や床面を断熱性のある素材に交換するなどの断熱工事をすることで、大きな効果を得られる場合もあります。経年劣化により断熱効果が下がった、断熱効果の高い新素材が開発されたなどが理由です。

費用をあまりかけたくない場合は、カーテンを断熱効果のあるものに交換するだけでも、ある程度の効果を得られます。吹き抜けでは開放感を高める、あるいは採光の効率を高めるために、大きな窓を設置することがあります。しかし同時に窓は外気と内気の境界線でもあり、窓に触れた内気が冷やされて室温を下げてしまいます。断熱カーテンは窓に触れる空気を減らすことで、室温低下を抑制するわけです。また断熱カーテンは、夏場でも太陽の熱の侵入を防ぐという働きもあります。十分な効果を得られるように、窓ガラス全体を覆うことができるような大き目のものを選びましょう。

1階の音が上階に筒抜けになる

吹き抜けでは音を吸収するものが少ないため、1階の音が2階の廊下全体に筒抜けになります。プライバシーに関わるような話をする場合には、あまり適した環境とは言えません。またリビングにあるテレビの音やキッチンで食器を洗う水音が2階に響いて、勉強や仕事に集中できないということもあるでしょう。

加えて音が上に抜けやすくなりますため、テレビの音が聞こえにくくなることもあります。イヤホンやヘッドホンで視聴するか、スピーカーの購入を検討した方が良いでしょう。イヤホンやヘッドホンは、同時に防音対策でもあります。防音工事をするのであれば、壁に防音用の板を入れる、扉の隙間をテープで埋めるなどの同時に行うという方法もあります。ただし吹き抜けは熱対策も行わなければならないため、壁に対する選択肢は多くありません。状況によっては、2階の壁や扉に手を入れることを検討した方が効果的でしょう。

耐震性が弱まる可能性も

部屋の間取りを広く取っている住宅では、その分だけ壁が少なくなりがちです。壁は耐震の要であり、壁が少ないということは耐震性が低いということに繋がります。リビングやLDKを吹き抜けにしている住宅では、床面積を広く取っていることが多いです。加えて2階部分の部屋もないため、一層耐震性が下がります。

対策としては耐震工事を行うことです。耐震性は壁の長さや壁の材質、配置されている壁のバランスなどによって計算されています。床面積を広くとった吹き抜けは、家を支える壁の数も少なく、住宅全体のバランスを欠くことにもなりかねません。壁を増やす、耐震金物を取り付けるなどで対策することになります。

掃除・照明交換が大変

吹き抜けでは、天井や壁が人の手では簡単に届かないほどに高くなります。そのため掃除や照明交換用に、脚立を用意している住宅もあります。特に注意したいのは、天窓や高窓などの掃除です。吹き抜けでは採光のために、天窓や高窓を設置している住宅が多いです。しかしこれらの窓は高い位置にあるため、冬場結露しやすいというデメリットも抱えています。

このような対策としては、照明交換や掃除請け負ってくれる業者を探しておく、あるいは結露しにくい材質の窓を取り付けるという方法があります。リフォーム会社の中には清掃業も請け負っているというところもありますので、相談してみてください。顔見知りの清掃業者を紹介していただけることもあります。

階段から転落の危険性

吹き抜けに階段を併設している住居では、転落する危険性にも対応しておく必要があります。小さな子供やペットと一緒に暮らしている場合には、大人、子供、ペットの誰にでも対応できるような転落防止ネットなどを設置しておきましょう。手すりと階段の間を埋めるようにネットを張っておくと効果的です。

ネットの利点は、完全には視界を防がないところです。ネットを使うことで、吹き抜けのメリットである開放感や雰囲気を大きく損なうことなく、転落の危険性を緩和することができます。また転落防止ネットには、種類によって使われているネットの材質や網目の大きさが異なります。子供の年齢やペットの大きさに合わせて選びましょう。中にはらせん階段にも対応しているネットや、ネットも施工してくれるリフォーム会社も存在します。

吹き抜けを埋める費用と注意点

いろいろと改善方法を用意しておいても、リフォーム後にしか問題点が見つからないこともあります。夏の暑さ、冬の寒さ、防音性などは、しばらくの間実際に暮らしてみなければ判断できない部分でもあります。また子供が成長した後に子供部屋を増設したいなど、住宅に対する考え方が変わることもあります。将来的に吹き抜けを塞ぐ、全部ではなくとも一部を塞ぐことを選択肢として残しておくことも悪くありません。

予算は15万~300万円

吹き抜け部分を塞いで部屋を増設する活用法としては、以下のようなものがあります。

・ロフト・納戸にする
・リビング・ダイニングにリノベーションする

ロフトや納戸として活用するという方法は、吹き抜けの縦方向のスペースを生かしたやり方です。天井はそのまま残し、一部だけを物置として利用します。このリフォーム方法であれば、新しく部屋を増設することに比べて安く済むことが多いです。床面積によって価格は変動しますが、目安は約100万円です。

吹き抜けを完全に塞いでリビング・ダイニングとして使う場合は、150万~200万円を計算しておきましょう。床を増設するだけではなく、部屋を仕切る壁や扉を新設し、必要があれば天窓や高窓を撤去する必要があります。ただし部屋を新設する場合は、部屋の様式を和式にする、あるいは洋式にするなどの選択肢があります。子供部屋として使う場合も、子供が成長して独り立ちした後のことも考えておくとよいでしょう。

部屋にする場合には確認申請が必要な場合も

部屋にする時の問題は技術面だけではありません。法律面の問題もあります。吹き抜けを塞いで床を造ると、床面積が増えます。このため増築と見なされます。この増築という単語に建築基準法が関わってきます。

ただし吹き抜けをロフトにする場合には、建築基準法には抵触しません。ロフトは床面積に計算しないためです。その代わり天井の高さを1.4m以下にする、面積は設置する階の床面積の半分未満、用途を物置に限定するといった条件があります。

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