物流危機をどう乗り切るか?【日野自動車・下社長インタビュー】

物流業界が今危機に直面している―。ここ数年そのように言われ続けてきたが、実際のところ課題解決に向けた動きは緩やかに進んできた。

その状況が一変したのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。休業要請などの要因で顧客のニーズが特定の商品に集中し、物流センターに在庫はあるのに顧客の元に届けられない事態が起きた。

この事態を背景に、これまでも問題視されていた物流業界のドライバー不足やデジタル変革への遅れが改めて注目されるようになった。

今後、物流に関わる企業はどう変わっていくべきなのか?日野自動車 株式会社の代表取締役社長、下義生氏に伺った。

(インタビュアー: 井上 佳三、編集:和田 翔 / 取材日:6月18日)

[2020.07.17更新 トップ画像をインタビュー時の写真に更新]

――今、物流業界はドライバー不足などの大きな課題に直面しています。日野自動車のトップとして、現状をどのようにとらえていますか?

下 社長:

現在の物流現場では、これまでの価値提供だけでは解決できない課題が広範囲にわたって存在していると考えています。

これまで日野自動車はトラックやバスのメーカーとして、信頼性・耐久性に優れた商品をお客様に届けることと、プロのドライバーに向けたサービスを徹底的に行ってきました。

しかし、ドライバー不足を例にとると、運ぶ車両や荷物があっても運べないわけです。これは今現実に起きている課題ですし、これからますます深刻になると思っています。

――今まで通り良い製品を作るだけでは対応できないことですね。どのように対応していくのでしょう?

下 社長:

日野自動車では「もっと、はたらくトラック・バス」というスローガンを掲げ、このスローガンを実現するために、3つの方向性を打ち出しました。

一つ目は、安全・環境技術を追求した最適な商品を提供すること。

二つ目は、多様化するニーズに対して、ICT技術などを活用しながら最高にカスタマイズされたトータルサポートを提供すること。

そして三つ目は、車起点のサービスを提供するのではなく、お客様の困りごとに直接向き合えるような新たな領域へのチャレンジです。

自動車メーカーという枠を越え、お客様と一緒になって課題解決に取り組むことが必要ではないかと考えています。

■現場感を重視したチャレンジ

――日野自動車は2018年に物流課題の解決を目指して、NEXT Logistics Japanという会社を立ち上げましたね。これも新しいチャレンジの一環でしょうか?

下 社長:

NEXT Logistics Japanでは、荷主企業などさまざまなパートナーと一緒に、拠点間物流の改善に取り組んでいます。

一番の困りごとは何かと考えたとき、挙がったのはやはりドライバー不足でした。この課題を改善するために、一人のドライバーでもっと多くの荷物を一度に運べないかと考えました。

具体的な解決策でいうと積荷の混載があります。これまで重い荷物と軽い荷物、あるいは食品とその他の荷物、これらは混載してはいけないというルールがありました。しかし、荷主企業の方たちと一緒に「なぜいけないのか」を突き詰めていくと、解決策が生まれてくるわけです。

NEXT Logistics Japanのスキーム図
画像提供:日野自動車

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