「失業手当」受給中のアルバイトや扶養申請、何に注意すればよい?

転職や失業で次の仕事を探しているとき、貴重な収入源となるのが「失業手当」です。しかし、失業手当だけで必要な生活費をカバーできるとは限りません。アルバイトをして収入を増やしたい人や、家族の扶養に入って社会保険料の負担を減らしたい人もいるでしょう。

そこで、失業手当の受給とアルバイトや扶養申請を同時に行いたいときの注意点を解説します。


失業手当とは?失業手当だけで生活できる?

失業手当(正確には雇用保険の「基本手当」)は、離職前に雇用保険に加入していたなどの一定条件を満たすことで支給されます。生活費の心配をせずに求職活動をするためには、まずは自分が受け取れる失業手当の金額を確認することが大切です。

失業手当の支給額は、「基本手当日額」×「所定給付日数」で決まります。

・基本手当日額
1日分の支給額である基本手当日額は、「賃金日額(賞与を除いた離職前6カ月の合計給料÷180)×給付率(45%~80%)」です。給付率は賃金日額が低い人ほど高く設定されています(次の表参照)。

<1日分の給付額「基本手当日額」の例(令和2年3月1日~)>

※基本手当の日額は賃金水準の変動に応じて毎年8月1日に変更される。
※基本手当日額の下限額は2,000円。年齢区分ごとで上限額の設定もある。
資料;大阪府ハローワークのパンフレットをもとに執筆者作成

・所定給付日数
所定給付日数は、90日~330日となっています。退職理由や勤続年数などにより異なります。なお、新型コロナウイルス感染症に関する特例により、給付日数が通常より延長となるケースもあります。

自分の基本手当日額が分かれば、ひと月に支給される失業手当の金額の目安が分かります。たとえば、離職前の月給が20万円・30歳の人の基本手当日額は4,880円です。30日分では14万6,400円となります。

失業手当で生活資金が確保できていれば、安心して求職活動に専念できますね。反対に支給額が十分でない場合には、貯金を使ったり働いたりして捻出する必要があります。

失業手当申請後は働き方に注意しよう

失業手当の受給申請を行うと、アルバイトで働いた日数や時間、金額などによっては失業手当を受け取れなくなることがあります。時期ごとに気をつけるべき点を見てみましょう。

(1)待期期間
失業手当の受給申請を行うと、7日間の待期期間が発生します。この期間は失業状態であることを確認する期間なので、アルバイトをすることは認められていません。もし待期期間にアルバイトをすると、待期期間が延長となり、失業手当の支給時期が遅れてしまいます。
そのため、この期間はアルバイトを行わないのが賢明です。

(2)給付制限期間
離職理由が自己都合などの場合、待期期間が終わった後に、失業手当の支給開始までに3カ月間の「給付制限」が発生します。給付制限期間中のアルバイトは認められていますが、週20時間以上の継続的な仕事を行った場合、再就職したと判断されて失業手当が支給されなくなることがあります。これは失業手当の支給が始まった後に働くときにも当てはまります。

そのため、生活費のために一時的な仕事をするときは、週20時間未満に収まるように注意して選びましょう。

(3)受給期間
失業手当を受給している期間中もアルバイトは認められます。しかし、失業手当の支給額に影響しやすいので注意が必要です。

基本的には、1日の労働時間が4時間未満か4時間以上かで区別されます。4時間未満の場合は「内職・手伝い」となり、収入額によっては働いた日の失業手当が減額されます。4時間以上の場合は「就労・就職」となり、働いた日の失業手当は支給されません。

ただし、給付日数が1日先送りになるだけなので、受給できる失業手当の総額が減るとは限りません。再就職の活動が長引いたときに備えられるというメリットもあります。

受給期間中に働く場合は、長時間しっかり働く日と求職活動に専念する日を明確に分けるのがおすすめです。失業手当が支給される日とアルバイト代を稼ぐ日とをバランスよく作ることで、1カ月の収入金額を増やしやすくなります。

ハローワークへの申告は忘れずに!

失業手当の受給中に働くときは、ハローワークへの申告が必要なことも必ず押さえておきたいポイントです。アルバイトに限らず、日雇いや内職、研修などをした場合でも申告は必要です。

もしも申告忘れや間違いがあると、不正受給とみなされ、失業手当の支給停止や受け取った手当の全額返金などの罰則が科されることがあります。

扶養に入れると社会保険料の負担が減る

生計を共にしている家族が会社員の場合、失業中はその家族の扶養に入ることで社会保険料(健康保険料・年金保険料)の負担を減らせることがあります。

失業手当は社会保険上では収入とみなされるため、扶養に入るためには基本手当日額が3,611円以下(基本手当日額×360日=130万円以下)である必要があります。離職前の月給が平均13万~14万円以下であることが目安になります。

健康保険の扶養認定は、過去にさかのぼることは原則しません。扶養家族の要件を満たす場合には、退職後すぐに家族が所属している保険組合に相談して手続きを進めましょう。

「給付制限期間中」や「延長期間中」はチャンス

もしも基本手当日額が基準以上の場合でも、失業手当を受け取っていない月は扶養に入れることがあります。具体的には、自己都合による退職などで3カ月間の給付制限があるときや、妊娠や病気などにより失業手当の受給期間を延長しているときが挙げられます。

給付制限中や延長期間中に扶養に入れるかどうかは保険組合によっても異なります。直接保険組合に連絡して相談するのがスムーズでしょう。

ただし、失業手当の受給が始まったら、扶養から外れる必要があることを忘れないでください。もしも扶養に入ったまま失業手当を受給したと分かれば、さかのぼって国民年金や国民健康保険料を納めることになり、保険組合側にも手続きなどで迷惑がかかります。扶養に入ったら、失業手当を受け取る前に必ず連絡しましょう。

失業中の生活費が不足するときは、アルバイトや扶養制度が助けになります。分からないことがあるときはそのままにせず、適宜ハローワークや健康保険組合に問い合わせて進めてください。

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