ホンダF1田辺TD初日会見:決勝日も降雨の天候に変わりそう「金曜日・土曜日で十分にセットアップを詰めていく必要がある」

 オーストリアでの2連戦を終えて、ホンダはチームスタッフとともにクルマで国境を越え、開幕3連戦最後の舞台となるハンガリーに入国した。

 3週間という長丁場に加え、新型コロナウイルスへの感染リスクを常に意識しながらの転戦は、現場スタッフにとっては少なからぬストレスとなっているようだ。

──────────

──ハンガリーはかなり感染拡大防止対策が厳しいようですね。田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):オーストリアからは陸路でハンガリーに入りましたが、入国に際してはハンガリー政府からの招待状と新型コロナウイルスの陰性証明書を提示したところ、まったく問題ありませんでした。

 ただ、滞在中はEU圏外のパスポート保持者は14日間の自己隔離が義務づけられ、ホテルからの外出は厳禁です。なので外に出るのはホテルとサーキットのクルマでの往復、そして帰りに空港に向かうことですね。

2020年F1第2戦シュタイアーマルクGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

──前戦を振り返ってください。田辺TD:信頼性に関しては4台完走して大きな問題もなかった。ただ結果を見ると、マックス・フェルスタッペンが3位表彰台を獲得したとはいえ、なかなか難しい戦いでした。

 それを踏まえて今週末何ができるか。そこをチームも我々も考えています。マシンパッケージとしての性能を最大限活かす、というか絞り出す。そういう戦いをしたいと思っています。

 週末の天気予報は今日になって変わりまして、金曜日・土曜日に続いて日曜日も午後は雨がぱらつきそうです。決勝日は暑くなってコンディションが(前日までと)変わるかなと思っていたのですが、同じようなコンディションでのレースになりそうです。金曜日・土曜日で十分にセットアップを詰めていく必要があります。

──3連戦は2018年に一度経験していますが、今回は一度も欧州本拠地のイギリス、ミルトンキーンズに戻らない戦いとなります。何か準備の違いのようなものは生じましたか?田辺TD:2018年はフランス、オーストリアときて最後がイギリスGPの3連戦でした。ただ、あのときもレーススタッフ自体はミルトンキーンズには戻っていなかったので、そういう意味では特に違いはありません。

 ただ、今回は最初の2戦が同じサーキットで、3戦目となる今週末のサーキットまでもクルマで4時間の移動で済んでいる。その意味では3連戦の負荷としては、ロジスティック(機材移動)の大変さ、肉体的な疲れ方などは、軽減されていますね。

■メルセデスとのパワーユニットのパフォーマンス差はいまだ不明

──オーストリアは燃費に厳しいサーキットで、他チームもレース後半ではそのたぐいの無線がたくさん飛んでいました。ホンダにとっても難しい戦いでしたか?田辺TD:難しかったですね。燃費は当然セーブしないといけないのですが、そうすると今度はタイヤやブレーキの温度が上がりがちになる。その辺りは非常に複雑な作業になったはずです。車体側の変化がより大きく出るので、エンジニアがドライバーと話しながらオペレーションしていましたね。燃費セーブだけというより、車体全体のコントロールをしたということです。

──その点でチーム全体の反省点もあるのでしょうか?田辺TD:特にチームと話はしていません。分かったことはあるのでこの先活かしていこうとは思っています。

──前戦の日曜日は、初日に比べて路面温度が10℃前後下がりました。もし初日と同じように暑かったら、メルセデスとのパフォーマンス差はもっと縮まっていたのでしょうか?田辺TD:それは分からないですね。どちらのクルマのほうがタイヤに優しいのかなど、そういう要素も含めて少し分からないです。タイヤの摩耗や作動温度域などの詳しいデータは見れていないのでチームに聞いてもらうほうがいいかもしれません。

──今年のメルセデス製パワーユニットが冷却的に厳しいのかどうかというのも、現時点では分からない?田辺TD:それも分かりません。彼らがどれくらい(冷却用の穴を)開けてたのかをものすごい暑い環境で見たら、彼らのコメントも含めて分かると思うのですが、それ以前のレベルでは難しいです。

──開幕から3週間、ずっとチームバブルという、いわば密閉された環境で過ごしているわけですが、それによる肉体的精神的影響というのはどんなものですか。田辺TD:関係者全員が定期的にPCR検査を実施して、少なくともパドック内は全員陰性だというのは分かっている。それでも全員がマスクを着用し、頻繁に手や器具の消毒を繰り返している。

 そういう物理的環境のなかで誰かひとりでも感染したら終わりという危機感はずっと持っていますね。我々は今回F1開催にこぎ着け、最終戦まで開催し続けるという決意はあるわけで、非常に気をつけながら自己防衛をしています。

 その意味ではストレスはかなり高いです。幸い、オーストリアはホテルの環境もよく、緑も豊かで、気持ち的に解放されていました。しかしハンガリーはブダペストの街中でしかも一歩も外に出られない。

 とはいえ、水曜日以降サーキットに通い出してからは普段の生活に戻った感じもあります。一方でサーキットでは私はレッドブル側のバブルに入ってますので、アルファタウリ側の車体やパワーユニットなどの現物を直接見に行くことができません。確かめたいことや聞きたいことは電話で問い合わせたり、距離をとって話をしなければならないので、確かに不便な部分もありますね。

2020年F1第2戦シュタイアーマルクGP ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1第2戦シュタイアーマルクGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

© 株式会社三栄