A.B.C-Z・橋本良亮が新たな魅力を発揮。「日本文学の旅」で迫力のある深い声色を披露

A.B.C-Z・橋本良亮主演の音楽朗読劇「日本文学の旅」が東京・よみうり大手町ホールで上演中。本作は、あらゆる日本文学がそろう架空の図書館を舞台に、司書(橋本)と読書家(新納慎也)という2人の“旅人”が時空を超えた文学の旅をする姿を描く演劇作品だ。

開幕を前に、囲み取材とゲネプロが行われ、囲み取材では橋本、新納、上演台本・演出を手掛ける鈴木勝秀氏が登壇し、新型コロナウイルスによって止まらざるを得なくなっていた演劇界が動きだした喜びが、その言葉の端々から感じられた。

ジャニーズ事務所のタレントの先陣を切っての舞台出演となった橋本は「プレッシャーも感じるが、トップバッターとしてみんなを笑顔にしたいという気持ちが芽生えてきた」と頼もしく話し、舞台での活躍が多い新納も「ほっとするし、うれしい。舞台に立たせていただけるありがたみを感じる」と笑顔。稽古期間も短く、台本を「最初は読めなかった。難しい…!」と嘆く橋本と新納だが、鈴木氏は「昔の言葉ってリズムを大事にしていて、音楽のように聞こえるセリフがたくさんある。全体が音楽になっていると思ってみてほしい」と観客にメッセージを送った。

また、奇しくも初日がジャニー喜多川さんの一周忌であることについて、橋本は「ジャニーさんは後ろの方で間違いなく見ていてくれていると思う。(トップバッターが)橋本でよかったと言ってもらえるように頑張りたい。初日を終えてジャニーさんが笑ってくれていたらいいな」と思いを語り、最後は客席の後方を見据えながら「ジャニーさん、見てて!」と大声で呼びかけた。

ゲネプロでは、ボーカル・ギターの大嶋吾郎とボーカルの鈴木佐江子が、舞台奥で静かに奏でる音楽に乗せて始まった。読書家の要望に応えて、次々と作品を紹介していく司書。上代の「古事記」から始まり、中古、中世、近世、近代と日本文学史をたどりながら、その時代を代表する作品をピックアップし、選りすぐった名シーン、名セリフを2人で朗読していく。生演奏は時に効果音としても2人の朗読に彩りを添え、深みを持たせる。

橋本は、持ち味であるつやのある爽やかな声を存分に発揮し、知的で紳士的な司書として、生き生きと朗読。囲み取材で「滑舌が不安。声だけの勝負だから緊張する」と漏らしていたが、不安を感じさせない滑らかな語り口調だった。

2人のやりとりにおいてコミカルなパートも担当する新納は、声色のバリエーションも表現も豊富で安定感抜群。そんなベテランに呼応するように、橋本のテンションも上がっているのが伝わる。特に「曾根崎心中」や、坪内逍遥・訳の「ロミオとジュリエット」を掛け合いで読む場面では、これまで聞いたことのないような雄々しく、迫力のある深い声色に驚かされた。本作を経て、表現者としてまた一つステップアップするであろう橋本に、恩師はきっと笑ってくれたに違いない。

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