「負けました」

 野球は9回まで。サッカーやバスケットボールは決まった時間が過ぎればゲームセットだ。囲碁やオセロは盤の上に石を打つ空間がなくなったら終局。「将棋は、どっちかが『負けました』って言わないと終わらないゲーム」▲子どもたちにこう説くのは、東京の元私立小教諭で日本将棋連盟の学校教育アドバイザーを務める安次嶺隆幸さん。投了には“気持ちを折りたたむ”作業が必要で、それが自分の弱さや過ちと向き合う勇気を育てる-と羽生善治九段らとの共著に▲史上最年少タイトルの興奮から一夜。棋聖位を明け渡した渡辺明棋王・王将が17日、自らのブログを早速更新し、藤井聡太七段との激闘を振り返っている▲第1局は挑戦者の思い切った踏み込みを「それで寄ってるの」と考えているうちに負かされ、第2局はポイントの局面の後「(こちらは)手がありません、と」。決着局は「ぴたっと追走され、一手で抜き去られた」▲「負け方がどれも想像を超えてる」「もう、なんなんだろうね」「この指し方を真似するのは無理」…ユーモア交じりに語られるのは「藤井将棋」への最大級の称賛。敗れた無念はすっきり折りたたまれて▲新棋聖はあすが18歳の誕生日。快挙を成し遂げた瞬間、相手より深く頭を下げた姿の美しさも話題を呼んでいる。(智)


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