そうめん業界に“巣ごもり”特需 売上増も生産者困惑

「島原手延べそうめん」の乾燥作業=南島原市内(同市提供)

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり消費などで、長崎県南島原市特産の「島原手延べそうめん」の需要が増加している。相次ぐ災害に対する家庭内備蓄用としても注目される。一方でニーズが高まる夏本番を迎える中で増産は難しく、生産業者は頭を抱えている。
 全国乾麺協同組合連合会(東京)によると、2月以降の外出自粛の高まりを受け、肌寒い時期に適したうどん、そば、中華麺の需要が増加。春先以降は、そうめんの動きも活発化した。産地や業者によって異なるが、6月までに乾麺全体で前年比10~20%の売り上げ増で推移しているという。
 全国的に頻発する自然災害の影響も大きい。農林水産省は「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」でそうめんなど乾麺の備蓄を推奨。同連合会は「乾麺は賞味期限が1~3年の物が多く、安価で家庭で備蓄しやすい」と分析している。
 島原手延べそうめんを手掛ける麺商「ふるせ」(南島原市有家町)の古瀬智裕社長(44)は「全国チェーンのスーパーなど新規顧客の発注が増えた。個人客中心のネット注文も前年比で3、4割の伸び」と驚く。
 夏本番を迎え中元商戦も到来。そうめんの一層の需要増が期待されるが、業者は増産に慎重。例年秋までに翌年の生産量を決定、コシの強い麺ができる冬場を中心に生産しているためだ。
 小林甚製麺(同市西有家町)営業部の小林甚成さん(30)は「職人の手作業に頼る部分も多く、手間暇が掛かる。市場の変化に応じた増産が難しい」とした上で、「7、8月に切らさないよう慎重にならざるを得ない。大口顧客の注文をやむなくお断りしている」と苦しい胸の内を明かす。
 巣ごもりで買い込んだそうめんが自粛解除で「在庫」になっている可能性もある。「経済状況の悪化が続けば、買い控えで中元市場自体が縮小する可能性もある」と懸念する業者も。
 「売上額は結果的に平年並みになりそう」という古瀬社長だが、「そうめんの良さが見直されている今こそ商機。季節ごとの料理のアレンジが豊富なだけに通年商品として消費者に選択してもらえるようアピールしたい」と意欲を語った。

南島原市特産の「島原手延べそうめん」

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