感染者立ち寄り“場所” 長崎市の公表基準は? 「対応フェアじゃない」SNSで批判も 「みなとメディカル」クラスター発生1週間

新型コロナウイルスに関する長崎市の報道資料。会員制飲食店の名称は非公表で「飲食店A」と表記されている

 長崎市新地町の長崎みなとメディカルセンターで新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生して19日で1週間。感染者が立ち寄った施設・店舗名は公表、非公表で対応が割れ、ツイッターでは非公表の対応を批判し、特定しようとする投稿も相次ぐ。市は「市中感染を防ぐために感染者を追えるか否か」を公表基準としている。識者は市民の安心につながる情報提供が必要と指摘する。

 感染したセンターの職員と患者計8人のうち、1人の20代男性医療職は6月28日と7月4日に市内の会員制飲食店、5日に別の飲食店に立ち寄っていた。5日の飲食店は「割烹(かっぽう)ひぐち浦上店」。濃厚接触者はおらず、市保健所も公表を求めなかったが、店側は名称と一時休業をホームページで公表し、店内消毒後に再開した。「客の安全安心を最優先した」と担当者。コロナに関する客の問い合わせは落ち着いてきたという。

 一方、会員制飲食店の名称は非公表で、市保健所も公表を求めていない。ツイッターでは「店舗名を出しているところもあるのに行政の対応がフェアじゃない」「感染者は○○にも行ってたらしい」といった批判や臆測が飛び交う。
 市保健所は感染症法に基づき、コロナ感染者の立ち寄り先や接触者を割り出し、検査を進めている。法的な強制力はなく「相手の人権を尊重し、同意や協力を得て進めている」と説明する。
 名称の公表は「感染者を追えるか否か」が判断基準の根本。クラスターが発生したとみられる鹿児島市のショーパブ「NEWおだまLee男爵」のように不特定多数が訪れる店舗は公表を通じて利用者が名乗り出て、検査につながる。その点、長崎市の会員制飲食店は利用者が限られ「調査にも協力的」として、市保健所は来店者リストを基に客への連絡と検査を進めている。
 ツイッター上には「怖くて外出できない。もっと公表を」といった切実な声もある。市保健所の担当者は「市民の気持ちは分かる。ただ(施設・店舗への)バッシングも防がないといけない。公表はケース・バイ・ケース。悩ましい」と明かす。
 関西大の元吉忠寛教授(災害心理学)は「公表しても、インターネット上で批判や臆測を抑える効果は薄い」として非公表に一定理解を示す。行政機関に対しては、感染リスクに関する詳しい分析などを通して「市民の安心につながる情報発信が重要だ」と指摘している。

 


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