早くもV字回復、「コロナ後」中国の需要増で注目される国内銘柄は?

新型コロナ感染症の震源地ともいえる中国では、春先に需要の底打ちを確認した後、建設機械や自動車については順調に回復を続けています。更に、感染症が小康状態に入った現在では、政府による公的補助金や公共投資などの景気対策が一層の需要や生産を刺激しています。

このような状況をふまえ、日本国内でその恩恵を受けそうな企業を考えてみます。


需要回復が進む建設機械

チャートは国内重機メーカー最大手のコマツが発表した中国への油圧ショベルの需要台数です。油圧ショベルは、土木作業や建設現場で穴掘りや整地などを行う万能選手ですが、中国では月次の需要台数が2月に底を付けた後、6月まで回復しています。

1月下旬には感染防止を目的に、全土で公共工事を停止した中国ですが、病禍が一服した春先には、各地で工期の遅れを取り戻す集中工事を再開しています。

コロナ以後の景気対策に、総額30兆円弱もの特別債を発行して交通、エネルギー、各種物流網の整備の公共投資を行う模様ですが、こちらも建設機械の需要増加にはプラス材料です。

また、中国だけでなく米国でも建設機械の需要は増加しそうです。米国では20世紀に作られた道路や橋、上下水道や学校などが相当老朽化していますが、新しくするためには膨大な予算が必要で、これまで更新工事は先送りされて来ました。

ところが先月、トランプ大統領は「迅速な公共投資を求める大統領令に署名をした」ほか、1兆ドルの公共投資プランを行うとも報道されています。言わば新型コロナ感染症に対する景気刺激を考えた公共投資かもしれませんが、ともあれ、建設機械への需要は増加する見通しです。

<写真:ロイター/アフロ>

注目メーカー「ヤマシンフィルタ」

建設機械の需要増加では、機械本体に欠かせないろ過フィルタを開発するメーカーとして、ヤマシンフィルタ(6240)を紹介します。

建設機械の作業現場にはホコリやちりなどが付き物ですが、建設機械を動かす油圧オイルにも細かい汚れが混ざり込ます。これらは作業の邪魔ですし、建設機械の寿命を縮める原因にもなる厄介者です。

ヤマシンフィルタは腎臓や肝臓の様に、汚れを取り除くための特殊なフィルタを提供する世界最大手、国内シェアも7割を持つ大手メーカーです。このフィルタは建設機械に欠かせないものですから、顧客は国内外の大手建設機械メーカーや、中国でも顧客拡大を続けています。

特殊フィルタは消耗品なので、現在の様に建設機械の需要や生産が増加する状況や、作業をする時間が延びる状況は、製品の売上増加に結び付きます。

自動車生産にも復活の兆し

中国の自動車生産は2019年が米中問題の影響、2020年明けからは新型コロナ感染症と厳しい環境が続いていました。しかし3月にはコロナ問題も小康状態に入り、自動車の販売台数の底打ちがみられ、工場従業員も職場に復帰しています。

チャートは中国最大の自動車生産地である、広東省の月産台数です。2月は前年同月比で8割減、3月は約5割減でしたが、4月は1%増とV字回復しています。

この動きは広東省に止まらず、中国全土でも5月の生産台数は220万台(前年同月比で約2割の増産)となって、回復のシグナルが点っています。現地に進出した日本車メーカーも、「4月は部品調達が難しくて、一部の生産ラインを停止した」のですが「5月は通常の生産台数、大きな減速感はない」となった模様です。

加えて一部では、「中国は6月も上旬は主要11社の自動車生産台数が順調に増加、自動車市場は当分の間、好調が続く」とする強気な見通しも出ているようです。

注目メーカー「安川電機」

注目企業には安川電機(6506)を取り上げます。

安川電機は半導体製造装置が使う特殊モータなどを扱う事業と、主に自動車の塗装や溶接、車体組み立てなどに使われるロボットの2つが主力事業です。

現在、2020年2月期業績の会社計画は事業環境が不透明としていますが、半導体関連の事業が順調な状況が続く様ですし、一方のロボットでも、全世界の自動車生産で25%程度を占める中国での自動車生産が回復を示すなど、ロボット事業の収益拡大への期待が増加すると思われます。

<文:投資調査部 西川裕康>

© 株式会社マネーフォワード