敵基地攻撃能力の保有を議論する前に…必要なのは憲法との整合性

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。7月7日(火)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士ドットコムGMで弁護士の田上嘉一さんが、日本の“敵基地攻撃能力と憲法”について述べました。

◆イージス・アショアに代わる敵基地攻撃能力

弾道ミサイル防衛に関する自民党の検討チームは、政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を断念したのを受け、7月中に敵基地攻撃能力の保有などをテーマに提言をまとめる予定を明らかにしました。自民党は弾道ミサイル発射が相次いだ2017年、巡航ミサイルなどによって発射拠点を破壊する敵基地攻撃能力の保有を政府に提言し、その後も防衛計画に盛り込むよう要請していましたが、当時の岩屋防衛大臣が保有の明記を見送っていました。

イージス・アショアの配備撤回に関しては、「これは事実上の廃止」と言う田上さん。とはいえ、ミサイルの脅威がなくなったわけではなく、イージス・アショアに代わる案として自民党内で挙がっているのが、「敵基地攻撃能力」の保有。これはかねてから議論され、自民党からは具体的な提言があったものの、日本の防衛のあり方や具体的な整備目標などについての基本方針である「防衛大綱(防衛計画の大綱)」の前回分にも明記されませんでした。

その一方で、日本はF35B戦闘機を購入。事実上の空母である「いずも型多用途護衛艦」でそれを運用することで、東シナ海での活発な行動が可能になったり、空中給油機で行動距離を伸ばしたり、長距離攻撃が可能なスタンド・オフ兵器も装備し始めるなど、「(敵基地攻撃に関する)モノは揃いつつあるのが現状」と指摘します。

◆重要なのは憲法との整合性

これまで日本は、攻撃する兵器は持たない、攻撃を受けてはじめてその防衛力を行使し、その場合も必要最小限に限る"専守防衛”の方針を掲げてきました。MCの堀潤も「日本の方針は、まさに憲法の精神に則った専守防衛のあり方が維持されてきた」と言います。

となると、問題となるのは"敵基地攻撃能力”の整合性です。それは憲法違反なのかという議論は以前からあり、1956(昭和31)年の鳩山一郎首相の答弁(代読)では、「誘導爆弾などの攻撃を防御するのに他に手段がない場合は、その基地を叩くことは自衛権の範囲である」とし、敵基地攻撃能力は自衛権の範囲内という政府の見解について触れます。

ただ、日本は今まで敵基地攻撃能力を保有することなく、「そこはアメリカに任せてきた」と田上さん。しかし、北朝鮮の脅威が増している今、「何より自衛隊の人数、充足率が足りなくなってきていて、防御兵器を運用するほうが大変。(敵基地攻撃能力のほうが)コストが安く、これから少子高齢化が進むなか少ない人数でもできる」と田上さんは保有に関するメリットを説明します。

その一方で田上さんが問題視するのは、やはり「憲法」。憲法9条2項では、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるだけに、「敵の基地を攻撃できる能力となれば、やはり戦力にあたると考えるべき」と主張。そして、「持つなら持つで、国民と議論していけばいい」と言い、「憲法をこのままにして(敵基地攻撃能力を)持つことの乖離は直すべきところ。最近はおざなりになっているが、憲法改正議論はしっかりとやったほうがいい」と訴えていました。

堀も田上さんに追従し、「集団的自衛権は(憲法の)解釈変更でやってしまった。憲法9条は根幹だから、国民と政府が一体となった議論を進めていかないといけない」と話していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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