外国語と日本語、どちらか一方を話す人の間に入り、それぞれの言葉を訳(やく)すことで、その場にいる全員が理解(りかい)できるようにサポートするのが通訳者です。
相手と呼吸(こきゅう)や波長を合わせ、「まるで通訳者がいないかのように、スムーズにコミュニケーションがとれた」と言われるような現場(げんば)づくりを目指しています。
◆独学(どくがく)で習得
愛知県に生まれ、父の仕事の関係でカナダ・オンタリオ州で過(す)ごした小学5年~中学3年の間に英語を身に付けました。
通訳者を目指したわけではありませんでしたが、大学院生の時に簡単(かんたん)な通訳のアルバイトを始め、経験(けいけん)を積みながらほとんど独学(どくがく)で覚えました。私(わたし)は好奇心(こうきしん)が強く、感覚的に習得していきましたが、通訳の専門(せんもん)学校へ行った方が効率(こうりつ)よく学べると思います。
学生時代にバンド活動などをして芸能(げいのう)関係に興味(きょうみ)がありましたし、通訳を本業にするなら楽しくやろうと、大きな仕事がたくさんある東京で約10年働きました。2002年に開催(かいさい)されたサッカーの日韓(にっかん)ワールドカップで組み合わせ抽選(ちゅうせん)会の通訳も担当(たんとう)しました。11年に佐世保(させぼ)市に来てからも、東京を中心に出張(しゅっちょう)して仕事をしています。
◆絵のようなメモ
通訳者が活躍(かつやく)できる分野は企業(きぎょう)、役所などビジネス全般(ぜんぱん)のほか、研究者が集まる会議、海外スターやスポーツ選手のインタビューなど、さまざまです。
通訳の方法は、発言者と通訳者が交互(こうご)に話す「逐次(ちくじ)通訳」や、国際(こくさい)会議などでマイクを通して聞き手に伝える「同時通訳」などがあります。同時通訳の場合は専用のブースに入り、発言者の話を聞きながら同時に訳すので、高い技術(ぎじゅつ)と集中力が求められます。
発言内容(ないよう)を正確(せいかく)に訳すためには、メモの取り方が重要。素早(すばや)く書かないと追いつかないので、自分にしか分からない、絵のようなメモを書いています。
◆事前準備(じゅんび)が大切
「現地(げんち)に着いただけで8割(わり)の仕事が済(す)んだ」と言えるぐらい、事前の準備(じゅんび)が最も大切です。会議などの場合は、資料(しりょう)を読み込(こ)むだけでなく、専門用語を頭にたたき込んだり、関連する情報(じょうほう)を集めてまとめたりして本番を迎(むか)えます。
みんなが私の言葉を待っているというプレッシャーを感じてとても緊張(きんちょう)しますが、話しだせばどんどん言葉が出てくるタイプです。通訳者は発言者の言葉通り、忠実(ちゅうじつ)に訳して伝えなくてはなりませんが、相手や場所に応(おう)じ、どんな表現が求められているのかということを頭に置いて、説明を加えるなど工夫しています。1から10をイメージする力も必要だと思います。
◆英語力で恩返(おんがえ)し
近年で印象に残っているのは、東京電力福島第2原子力発電所がある福島県富岡(とみおか)町で開かれた原子炉(ろ)の廃止(はいし)に関するフォーラム。地元住民や原子力機関事務局(じむきょく)の人たちが対話をするお手伝いをしました。復興(ふっこう)に対する高校生のまっすぐな思いに心を打たれ、個人(こじん)的にライフワークとして今後も関わることができればと考えています。
また、佐世保市に住む外国人や英語が好きな日本人に、英語と日本語で情報を提供(ていきょう)する「させぼEチャンネル」というウェブサイトを運営(うんえい)しています。佐世保へ来て土地勘(とちかん)もなく、お店の情報も分からなかったときに、地図付きで分かりやすいサイトが私の世界を広げてくれました。その経験(けいけん)から、今度は英語力を生かして私が恩返(おんがえ)しをする番だと思っています。
◆触(ふ)れる機会を
英語を学ぶなら、とにかく英語に触(ふ)れるチャンスを増(ふ)やしてください。動画サイトを見ることやオンラインで参加できるお話し会は特におすすめです。
英語の映画(えいが)を見るときは、もともとの言い回しを聞きながらどのように字幕(じまく)で訳されているのか、表現の違(ちが)いが勉強になります。分からないことはすぐに調べる検索(けんさく)力と、言葉力を高める習慣(しゅうかん)を付けるといいと思います。