雲行きを気にしながら

 きのうの昼間に空を仰げば、暗い色をした雲に覆われていた。日に日に蒸し暑くなり、きょうは暦の上では年中で最も暑い「大暑」だが、梅雨が明けないままでは夏を感じようもない▲駆け足、生煮えのまま発進するキャンペーンに、多くの国民が首をひねり、不安を覚えている。列島全体、先行きに暗雲が垂れこめているのと同じだろう。「混乱の極み」とまで難じられながら「Go To トラベル」がきょう始まる▲東京発着は除くことにする。キャンセル料は補償しない、いや、やっぱり補償する-と、何かにつけて急ごしらえのキャンペーンは、旅をする人、宿泊先、両者をつなぐ旅行会社のどれもに、困惑と混乱を与えている▲「Go To」はことの外、観光地には一筋の光であり、県内でも起死回生の策と期待する向きがあったが、対応が迷走するばかりか、県内でもこのところ感染が広がっている▲中村法道知事は、観光の回復と感染拡大の予防と、そのバランスを重んじている。きのうの会見でも県民に、県外から来る人に、注意深く、慎重な行動を求めた▲本当ならば心弾み、心を癒やすはずの旅が、今しばらくは感染状況の“雲行き”を気にしながらの移動になる。「Go To トラベル」の文字に旅情が足りない気がして、どうにも寂しい。(徹)

 


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