日本社会でのLGBTQ――旅行・スポット・イベント・支援

日本でのLGBTQ事情

日本の社会は、LGBTQに対してどの程度ひらかれているのでしょうか。

日本は比較的、性自認や性的指向に関わりなく生活しやすい国に向けて進んでいると筆者は感じます。LGBTQ当事者やアライ(※1)が企画するイベント「プライドウィーク」や、東京の新宿二丁目エリアは、海外でも有名です。

近年では複数の自治体がパートナーシップ証明制度を定めるなど、さまざまな形でパートナー関係を結ぶ権利が認められつつある一方、まだ道半ばな部分も多くあります。この記事では、LGBTQに関する法律や社会状況をはじめ、娯楽やイベント、支援をしている施設を紹介します。

目次

LGBTQに関する法律

2020年7月現在、自身のセクシャリティに悩む人の権利を保障する法律は、まだ整備が十分ではない状態。同性婚は合法と判断されていません。そのため、日本で性的指向を公表するには、さまざまな困難をともなうと見なされています

気になる方は旅行前に、LGBTQフレンドリーな宿泊先やお店を、あらかじめ調べておいた方がよいでしょう。

法律では未だ難しい状況ですが、前述のとおり自治体によっては同性のパートナーシップが認められるなど、変化も起こっています。

2020年1月現在、渋谷区、世田谷区、豊島区や江戸川区を含め、全国で34の自治体(※)がパートナーシップ証明制度を導入しました。これは結婚とは異なりますが、2人の関係が婚姻と同等であるものを承認する制度です。

2020年には、5人のゲイが「自分を変えたい」という男性を変身させていく人気シリーズ『クィア・アイ』の東京版が、ネットフリックスで配信されました。これはセクシャルマイノリティの人々にも開かれた社会を目指していることを示唆しているでしょう。

世界的に知られるメイクアップアーティストで、僧侶の活動もする西村宏堂(にしむら こうどう)氏は、LGBTの一員としても活躍。ほか、国会議員の石川大我(いしかわ たいが)氏や尾辻かな子氏も同性愛者であることを公表し、政治家なら誰もが平等に、社会的マイノリティを受け入れることを訴えています。

LGBTQに対するサポートについては、記事の後半で紹介している支援施設の項目をご覧ください。

LGBTQフレンドリーなエリア

東京:新宿二丁目

東京の新宿二丁目は、日本でも指折りのLGBTQが活躍している場所。ここはバーやクラブ、レストランが立ち並ぶ夜の繁華街として有名で、夜遊び好きな方なら一度は訪れるべきエリアです。東京メトロの新宿三丁目駅が最寄り駅、JR新宿駅からも徒歩圏内です。

ゲイ・バーやレズビアン・バーなど選択肢も多いこのエリアは、パートナーや友人たちと繰り出すのに最適です。Arty FartyDragon Menといった有名なゲイのクラブでは、ダンスで盛り上がれます。

もう少し落ち着いて過ごしたい方は、レズビアン・バーのBar Gold Finger艶櫻 - adezakuraへどうぞ。曜日や時間で入店規則を設ける場合もあるので、事前に調べておきましょう。

大阪市:堂山町

大阪市の繁華街、堂山町(どうやまちょう)もLGBTQを受け入れるエリアです。大阪駅や梅田駅の徒歩圏内にあり、バーやクラブ、居酒屋やカラオケ店が建ち並ぶ賑やかな地域。新宿二丁目に似ています。イベントも定期的に開催され、友人たちと楽しく過ごせるでしょう。

オススメはFrenZ FrenZY Rainbow Haven。レディーガガやアダム・ランバートといった海外の著名人も訪れる人気のゲイ・バーです。

古くからあるゲイ・バー、VILLAGEでショーを楽しむこともお忘れなく。遅い時間にお酒を楽しみたい方は、海外のお客さんにもフレンドリーなG Physique Osakaがオススメです。

新宿二丁目と同様に、この地区のバーやクラブにも入店規則があるのでご注意ください。店舗によっては時間や曜日に合わせて特定のグループしか入店できない場合もあります。詳しい友人がいる方は、同行してもらう方がよいかもしれません。

利用しやすいホテルやカフェ、観光地

新宿二丁目や大阪市の堂山町のほかにも、LGBTQフレンドリースポットはあります。

東京:ホテル

国籍や性別に関係なく、宿泊客を迎え入れる新宿区のホテルCEN DIVERSITY HOTEL & CAFÉ。選び抜かれたアメニティやオールジェンダーの化粧室、そしてスタッフ全員がLGBT研修を受けているこの施設では、誰もが自分らしく過ごせるでしょう。

また同じく新宿区にある京王プラザホテルもLGBTQ受け入れにオープンで、宿泊客向けに新宿二丁目ツアーを開催したこともあります。

東京:カフェ

東京には、居心地よく過ごせるLGBTQフレンドリーのレストランやカフェもいくつかあります。新宿御苑の近くにある新宿ダイアログ(上記写真)もそのひとつ。ヴィーガンの食事が楽しめて、ドリンクの注文でSDGs支援の募金も可能です。夜はバーとして営業しています。

浅草を訪れる機会があれば、PQ'sカフェでピンクやブルーといった彩り豊かなヴィーガン・カレーを試してみてください。シェフやオーナーはとてもフレンドリーで、開放的な雰囲気です。

大阪:性善寺

大阪市の北西方面、守口市にある性善寺は、LGBTQを受け入れる仏教寺院。性再適合手術を受けられた方が住職をしています。性別はもちろん、宗教にも関係なく開かれた場所です。

日本のLGBTQイベント

NGO団体が運営するLGBTQ支援のイベントも、一年を通して開催されています。東京で行われるパレードは1994年に初めて開催、その後各地で開かれるようになりました。

その中でもっとも有名なものが東京レインボープライドウィーク。例年、渋谷や原宿でのパレード、代々木公園でのお祭りやライブが開催されます。4月下旬から5月上旬にかけて開催され、2019年には20万人もの参加者が集まりました(2020年はオンライン開催)。

東京レインボープライドウィークは、LGBTQに関わらず、参加者全員が一人ひとりの幸せを尊重しあうイベントです。開催期間に東京を訪れた方は、ぜひのぞいてみてください。多くの参加者もつエネルギーで笑顔になれるでしょう。

大阪で毎年開かれるレインボーフェスタ!には、西日本在住のさまざまな人々が集まります。

2019年には約1万人がパレードなどのイベントに参加し、活気あふれる集会となりました。2020年には10月10日と11日に開催が予定されています(変更の可能性もあるのでご注意ください)。

LGBTQに対する支援

東京ではコミュニティセンターaktaがLGBTQの人々が集う情報センターの役割を果たしています。ここにはHIV/AIDSや性感染症にまつわる情報、LGBTQの受け入れがされている事業に関する情報が豊富。啓発の一環として、新宿二丁目のバーにコンドームを届けることもしている団体です。

スタッフは気さくな方ばかり。フリースペースも用意されているので、情報を集めながらくつろぐこともできます。ただし英語対応は万全ではないのでご注意ください。

ほかの地域ではStonewall Japan(英語リンク)が全国各地で海外からの訪問者に対する支援を行なっています。この団体はフェイスブックでも複数のグループを立ち上げ定期的にイベントを開催したり、有益な情報を提供しています。

LGBTQと日本

この記事で紹介した情報は、日本がより開かれた社会へと変わる可能性のあるもの。LGBTQ関連の法律、支援する団体や施設の一部です。少しずつ、日本の社会状況は変わりつつあると感じています。

旅をする際は、日本の社会状況も感じながら、居心地のよい場所を見つけてください。

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