佐世保 地滑り発生から2週間 いまだ避難生活続く 復旧「数年かかる」

豪雨で大規模な地滑りが発生した現場=佐世保市小川内町(大栄開発提供)

 今月初旬、長崎県内を襲った記録的豪雨により大規模な地滑りが発生した佐世保市小川内町。発生から2週間が過ぎた今も、市は周辺を警戒区域に設定し、13世帯42人が避難生活を続けている。復旧には「数年かかる」との見方もあり、住民は生活再建を見通せない状況が続いている。
 16日の午後3時。地滑りが起きた場所から数百メートルの所に息子家族と2世帯で住む男性(75)は、自宅を整理し衣類などを運び出した。住民の警戒区域内への立ち入りは午後2時~5時に限られており、男性は慌ただしく作業しながら取材に応じてくれた。「ばたばた避難したから貴重品も置いてきちゃってね」
 男性と妻は市内の娘宅に、息子家族は職場の事務所に仮住まいをしている。市は9日に住民説明会を開いたが、自宅に戻れるめどについて言及はなかった。男性は「仮住まいが長期にわたるなら別の転居先を探さないといけないが、復旧工事の流れが分からない以上、まだ判断はできない」と漏らす。
 地滑りは8日から10日にかけて発生。豪雨に伴い地下水の水位が上昇したことにより、幅約180メートルの斜面地が約380メートルにわたって崩れ、市道の一部も崩落した。周辺民家に被害はなかったが、市は10日、周辺を警戒区域に設定し立ち入りを禁止した。
 県によると、これだけ大規模な地滑りは近年例がなかった。県は13日、「切迫した危険が想定される」として土砂災害防止法に基づく初の緊急調査に着手。現在、現場で土砂の動きを観測する機器の設置を進めている。専門的見解を得るため、国立研究開発法人土木研究所(つくば市)に現場の調査を依頼。17日に研究員3人が現場を調査した。
 同研究所の杉本宏之上席研究員によると、一帯は、地質の関係からもともと「北松型地すべり」と呼ばれる地滑りの多発地帯として知られている。現時点で土砂の流動化はないが、周辺部に亀裂があり今後の大雨によって土砂が再び動く恐れも。復旧のめどについて杉本上席研究員は「一般論で言えば、年単位はかかる可能性がある」と述べた。
 生活再建の見通しが立たない中、住民の苦悩は深い。冒頭の男性は家財道具を運び出すべきかどうかも決めかねている。「家具や家電、家屋自体も長く放置しておけば老朽化する。他の住民と心身のケアをし合いながら行方を見守るしかない」

 


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