五島勉さん死去

 人類が滅亡するその時、自分は何歳になっているのだろう、と「1999」から生まれた年を引き算してみる…昭和の少年少女の多くに共通する「あるある」体験だろう。〈1999年の7の月、空から恐怖の大王が降ってくる〉▲昨日の社会面、故人の顔写真の代わりに、あの大ベストセラーの表紙が訃報に添えられている。「ノストラダムスの大予言」の著者、五島勉さんが亡くなった▲〈なんでみんな信じちゃったのか〉と題した2年前の週刊誌の座談会の記事を見つけた。「時代の大きな流れを読み解き、ネガティブな可能性を言い当ててみせた」「当時の日本を生きる人々の不安の百科全書」と評するのは政治学者で音楽批評家の片山杜秀氏▲奇天烈な中身の書かれた書籍を指す「トンデモ本」という言葉がある。その先駆的存在として知られる「-大予言」だが「時代を証言し、現代に警鐘を鳴らす名著」と片山氏。読み方を誤るとただの“迷著”ですけど-と付け加えつつ▲五島さんのインタビュー(2018年)が「文春オンライン」で公開されている。〈「終末を思う」というのは、自分の家族とか一番大事な人をどうやって守るかということなんです〉▲意外なほどシンプルな一言。妙に心に迫るのは、コロナの不安と暮らす“今”だから-か。(智)


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