レッドブル・ホンダのリヤウイング翼端板にひび割れ発見。メカニックが奔走【F1記憶に残る逆転劇(2)】

 2019年もスタート前にアクシデントが発生し、スタートが危ぶまれる事態に陥ったケースがあった。2019年のカナダGPとイギリスGPだ。彼らはどのようにして、危機から脱出したのか。

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▼2019年 第7戦カナダGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
 予選後、ハミルトンのマシンにオイルリークが発生していることがデータで確認されたが、予選3時間半後にマシンはパルクフェルメ管理下に置かれるため、チームはトラブルの修復を、パルクフェルメ管理が解かれる日曜日の朝8時30分以降に行うことにした。もしも、土曜日の夕方6時30分以降に作業すると、パルクフェルメ・ルールを破ることになり、ピットレーンスタートとなるからだ。

 日曜日の朝8時30分から修復作業を開始したメルセデスは、トラブルがスロットルアクチュエータに起因していることを突き止め、FIAにスロットルアクチュエータとそれに関連する油圧システムの一部を交換することを申請する。

 しかし、レコノサンスラップを開始するためにピットレーンがオープンなる午後1時半までにその作業を完了させることができなかったメルセデスは、とりあえずハミルトンのマシンをピットレーンが閉鎖される前に出して、グリッド上で作業を継続することを決断する(午後1時36分)。

 すぐさまメカニックはチーフデザイナーのポール・モナハンに事情を報告。モナハンはもう1台のマシンであるピエール・ガスリーのリヤウイングの確認を命じると、ガスリー車にも同じ問題が発生していたことが発覚した。

ガスリー車のリヤウイングにもクラックが発見された

 そこでモナハンはFIAのテクニカルデリゲートであるジョー・バウアーを呼び、2台のマシンのリヤウイングを安全上の理由から同スペックのスペアの翼端板に交換するための申請を経て、メカニックに交換を指示する。

FIAのテクニカルデリゲートであるジョー・バウアーを呼び、翼端板の交換を申請。メカニックが作業を行う

 ガレージからメカニックがスペアの翼端板を持って走る。リヤウイングがグリッドに到着したのは午後1時58分だった。昨年のイギリスGPのフォーメーションラップのスタートは午後2時10分。昨年のスタート前手順は、フォーメーションラップのスタートの3分前までにタイヤの装着を完了し、1分前までにエンジン始動させ、15秒前までにチームスタッフは全員グリッドから退去完了しなければならない。レッドブルのメカニックに残された時間は11分45秒だった。

メカニックがガレージからスペアの翼端板を持ってくる
翼端板がグリッドに到着

 レッドブルのメカニックが最終的に作業を完了させたのは、規定時間のわずか60秒前だった。

規定時間の60秒前に、翼端板の交換作業を終了させた
ガレージを出るルイス・ハミルトン(メルセデス)
ハミルトンのマシンがグリッドに到着し、メカニックがタイヤとノーズを外して修復作業を再開
フロントバルクヘッド上部のカバーを外し、スロットルアクチュエータに管を接続
メカニックがシートに座り、スロットルアクチュエータ・システムが正常に機能しているかを確認
メルセデスのメカニックが修復作業を完了

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