7月は最も危険?歩行者や自転車を狙った当たり屋行為を防ぐ方法とは

全国各地で当たり屋行為の摘発が続いています。新型コロナウイルスによる不況のなか、少しでも金をだまし取ろうというのでしょう。電話での詐欺とは違い、当たり屋は実際に身体をぶつけてきて事故を演出するので、騙されてしまいがちです。

その手口は時流に乗って変化しています。いまや車だけでなく、自転車、歩行者までもが狙われています。


時代と共に変化した当たり屋

昔は、コンビニに前向き駐車をした車を狙い、道に出ようとバックしてきたところに飛びこみ、ぶつかったフリをして金をとる手口が多くありました。運転者の死角をついた犯行です。

その時、当たり屋はすでに壊れた額縁に入った絵画を持参しており、弁償代として数万円を要求します。しかし今は、壊れた絵画を持っての当たり屋は見かけません。手口が進化してきているのです。

4月、コンビニの駐車場でバックしようとした80代の高齢男性の車に、体をぶつけて金をだまし取った30代の男が逮捕されました。男は壊れた携帯電話を相手に見せながら、「ぶつかった衝撃で壊れた」などと嘘をつき、保険会社から10万円をせしめたのです。この事件のように、高齢者が狙われるケースが多発しています。

歩行者や自転車を狙う手口も

さらに、今は、車に当たるという手口だけはありません。

恐喝の容疑で逮捕された30代の男は、自転車を引いていた90代の高齢男性にすれ違いざまにぶつかり、スマートフォンを落として「画面が割れた」などと言いがかりをつけ、数十万円以上の弁償代を騙し取りました。

ところが、歩行者を狙う当たり屋は、高齢者だけでなく中年世代もターゲットにします。以前、ある編集者が酔っぱらって路上を歩いていた時、ぶつかってきた男が「iPadが壊れたじゃないか」と因縁をつけ、数万円を払ってしまったそうです。このように、歩行者を狙い、画面が壊れているモバイルを見せ、金を騙し取る手口も横行しています。

近年、自転車の事故に関するニュースを多く耳にします。子供が自転車で事故を起こし、親に数千万円もの賠償請求の判決が下った例もあります。騙す側はこうした時流にも乗ってきます。

福岡で6月、30代の男が当たり屋行為をしたとして逮捕されました。ターゲットは自転車に乗る女子高生らでした。男は自らも自転車に乗り、女子高校生に衝突したそうです。当然、高校生はお金を持っていませんので、男は高校生の母親に修理代ととして6万8400円を要求しました。ほかにも女子学生を狙った同様の当たり屋行為を複数行っていたといいます。

7月には最も注意が必要

特に7月は、当たり屋に注意が必要かもしれません。

というのも、消費者庁の発表で、平成29年6月から令和2年5月末までの3年間で、自転車事故の発生件数は7月に最も多く発生しているからです。それは、梅雨が終わって夏休みが近づき、気が緩むことが原因かもしれません。今年は特に、新型コロナウイルスの影響で自転車などの交通事故も増えていると聞きます。この時期は事故だけでなく、それに便乗するような当たり屋行為にもより警戒の必要があるでしょう。

このように、歩いていても、自転車に乗っていても、当たり屋に遭う可能性のある時代です。被害に遭わないためには、どうすればよいのでしょうか。

事故が起きたら、まずすべきことは

事故が起きたら、まず警察を呼ぶことは言うまでもありません。車での事故はもちろんのこと、自転車の事故でも、警察をへの届出を出すことは道路交通法上、必要です。ではなぜ、わざわざ警察を呼んだ方がよいのでしょうか。

それは、その道のプロに事故の真偽を見てもらうためです。騙す側は、私たちがこの手の事故に慣れていないことにつけ入り、一方的に自分の主張を展開し、慌てさせてお金を取ろうとします。そこに警察というワンクッションを入れることで、どちらに過失があるのか、相手の言い分に嘘はないのか、第三者の目で事故の真偽を確かめてもらえるという利点があります。

警察は日々の職務質問をしており、嘘を見抜く目はそれなりに持っています。事故が詐欺であった場合、見抜いてくれる可能性は非常に高いといえます。

何より、その詐欺発覚のリスクは、当たり屋行為をする輩が一番よく分かっています。「110番します」が、撃退には有効であることはいうまでもありません。

70~80回成功した当たり屋の手口

しかしながら、実際には警察を呼ばず、だます連中の罠にはまってしまう人が多くいます。

群馬県警に逮捕された67歳の男は、高齢女性の車にわざと腕を接触させ、「サングラスが壊れた」などと嘘を言って現金をだまし取る行為を繰り返していました。この男の手口は巧妙で、ぶつかったときにサングラスのレンズを外れやすくしており、要求する金額も3000円ほどと少額でした。

逮捕された男の供述では、当たり屋を100回ほど行って、70~80回は成功したそうです。どれだけの人が、警察を呼ばず、事故を穏便に済ませようとしたかが分かります。ちなみに、成功率7割以上の当たり屋の男がなぜ逮捕されたのでしょうか。

男はいつものように60代女性の運転する車へぶつかり、サングラスの修理代を要求しました。しかし、この女性への当たり行為が、なんと二度目で、嘘がバレてしまったのです。当たり屋が同じ人に二度当たる。この偶然がなければ、逮捕されず犯行はまだ続いていたわけで、常習者の当たり屋の手口がいかに巧妙化かがわかります。

いつ遭遇するかわからない当たり屋の被害。要求された金額が少額であっても、自分に非があるかもしれないと感じても、常に警察を呼ぶ姿勢を持たないといけません。

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