ウェブ総文の可能性

 文化芸術への造詣が深かった元長崎大学長の故土山秀夫さんは自著でこう語っている。「芸術一般というものは、人々に鑑賞してもらって初めてその真価を発揮することになります」▲今年の全国高校総合文化祭は31日から、「ウェブ総文」と題して初めてインターネット上で開催される。新型コロナ感染防止のためだ▲本県は15部門に最大約320人が参加予定。生徒の活躍の場が何とか保障され、ホッとしている▲通常は全国から開催県に代表の生徒らが集まり、各部門で文化芸術の質の高さを審査してもらったり、囲碁将棋などで順位を競ったりする。同じ分野で青春をかける者同士、競い合うことは刺激的だし、直接の交流は貴重な財産ともなる。ネット上では確かに限界があり、複雑な思いをしている生徒もいることだろう▲一方、一般生徒や市民にとってはこれまで、開催県にはるばる出向かなければ県内外の生徒の芸術表現や作品を鑑賞、体験することが難しかった。今回は映像などで鑑賞可能。その点は楽しみだ▲ネットで社会に開かれた形となる高総文祭は、新たな感動を広げ真価を発揮するに違いない。小中学生への教育的効果も期待できる。ウェブ活用は来年以降も通常開催と並行して進めてもらいたい。文化芸術の裾野を広げることにもなるはずだ。(貴)

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