EPO「DOWN TOWN」から始まってアイズレー・ブラザーズへと続く音楽旅路 1980年 3月21日 EPOのシングル「DOWN TOWN」がリリースされた日

夏の定番? アイズレー・ブラザーズ「イフ・ユー・ワー・ゼア」

アイズレー・ブラザーズの「イフ・ユー・ワー・ゼア」は、夏になると聴きたくなる曲のひとつだ。1973年8月7日にリリースされたアルバム『3+3』に収められている。ただ、シングルカットされたわけではないし、「ザット・レイディ」や「サマー・ブリーズ」といった他の人気ナンバーに比べると、アルバムの中の佳曲といった風情だ。

今回のコラムは、そんな愛すべき「イフ・ユー・ワー・ゼア」とそれにまつわる話を、時間軸を行き来しつつ書き進めてみたい。ただ、先に言っておくと、結論は他愛ないのであしからず。

シュガー・ベイブ「DOWN TOWN」の元ネタ?

日本でこの曲の知名度を上げたのは、山下達郎や大貫妙子が在籍していたシュガー・ベイブの名曲「DOWN TOWN」だろう。というのも、「DOWN TOWN」は「イフ・ユー・ワー・ゼア」にインスパイアされたものだと言われているからだ。

実際のところは定かではないのだが、確かに類似性は感じられる。また、山下達郎がかつてのインタビューでアイズレー・ブラザーズのファンであることを公言していたのと、「DOWN TOWN」およびアルバム『SONGS』のリリースは1975年4月25日であり、「イフ・ユー・ワー・ゼア」が世に出てから1年半以上が経っていることから、おそらく聴いたことはあったと思われる。だから、意識的にせよ潜在的にせよ、影響を受けているとは言えそうだ。

ただ、その当時「イフ・ユー・ワー・ゼア」はそれほど知られた曲ではなかっただろうし、シュガー・ベイブの方もあまりセールスが伸びなかったことから、おそらくこの件が話題にのぼることも少なかったのではないだろうか。

EPOの「DOWN TOWN」とワム!の「イフ・ユー・ワー・ゼア」

それから時は流れて、1980年3月21日。EPOが「DOWN TOWN」のカヴァーでデビューし、『オレたちひょうきん族』のエンディングに使われたことで、この曲は一気にお茶の間レベルで浸透していくことになる。

僕が初めて聴いた「DOWN TOWN」もEPOのヴァージョンで、当時はお笑い番組でかかる歌といった程度の認識だった。

さらに時は流れて、1984年10月23日。ワム!がアルバム『メイク・イット・ビッグ』をリリース。「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ(Wake Me Up Before You Go-Go)」、「フリーダム」、「ケアレス・ウィスパー」など彼らの代表曲が多数収録された大ヒット作だが、この中にひっそりと「イフ・ユー・ワー・ゼア」のカヴァーが収められていたのだ。

そして、僕が初めて聴いた「イフ・ユー・ワー・ゼア」はワム!のヴァージョンだった。一聴してすぐに気に入ったが、だからといってEPOの「DOWN TOWN」を思い出すことはなかった。今聴いても類似性はさほど感じられない。

再発されたシュガー・ベイブのアルバム「SONGS」

それから時はもっと流れて、1994年4月10日。シュガー・ベイブのアルバム『SONGS』が再発され、ここでようやく僕はオリジナル「DOWN TOWN」を耳にすることとなった。そして、思った。「EPOじゃん」と。

しかし、サウンドはまったく別物だった。60年代のアメリカのビートグループのような佇まいと、洗練されたリズムパターンに胸が躍った。他の収録曲もどれも魅力的で、この年僕は本当によくこのアルバムを聴いたものだった。

そんなある日、『SONGS』が特集された音楽雑誌を読んでいると、「DOWN TOWN」には元曲があって、それはアイズレー・ブラザーズの「イフ・ユー・ワー・ゼア」だという記述を目にした。「アイズレーか…」、ちょうどソウルミュージックに入れ込み始めていた頃で、タイミングもばっちりだった。

EPOから始まった音楽の旅路、辿り着いた結論は…?

『オレたちひょうきん族』でEPOヴァージョンの「DOWN TOWN」を知った小学6年生も、気がつけば24歳の社会人になっていた。約14年をかけて、とうとう僕は「イフ・ユー・ワー・ゼア」のオリジナルヴァージョンに辿り着いたのだ。そして、思った。「ワム!じゃん」と。

こうして、EPOから始まった僕の長い音楽の旅は終わりを迎えたのだった。紆余曲折はあったけど、振り返ればなんとやらである。そして今改めて思う。アイズレー・ブラザーズとシュガー・ベイブには、確かに通じるものがある。しかし、それぞれをカヴァーしたEPOとワム!の間に目ぼしい繋がりは感じられない。

なるほど。そういうことか。面白いもんだなぁ。

…というのが、このコラムにおける僕の結論である。他愛ないけどあしからず。いい夏を。

カタリベ: 宮井章裕

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