どんなに相性がいいと思えたカップルでも、同棲をきっかけに関係が変わってしまうことはよくあります。同棲をすると、好きな人と毎日一緒にいられて幸せなはずなのに、そこはかとない「不公平感」が漂ってしまいがちだからです。不公平感をつくりだす最たる要因は、「家事の分担」が女性側に偏ってしまっていることです。
男女の家事分担問題。夫婦の場合はどうなっている?
同棲カップルの場合、「彼氏が家事をしてくれない」という話はよく耳にします。実際、男女の家事分担はどのようになっているのでしょうか?
同棲カップルの家事分担比率の調査は見当たらなかったため、ここでは、共働き夫婦の家事分担率についてみていきたいとおもいます。
市場調査メディア・ホノテの調査によると、2018年の共働き夫婦の家事分担は下記のような割合になっています。(※1)
共働き夫婦の家事分担 2018年
・フルタイムの共働き家庭で、家事を妻がメインでしている家庭は64%。妻と夫で平等に分担している割合は31%にしか満たない
・家事分担の理想の比率は妻50%夫50%だが、現実は妻90%夫10%
・妻がほぼ家事を担う家庭は、40代で35%、30代で24%、20代で17%。若い世代ほど分担が進んでおり、20代は40代の半分ほどになっている
以上のデータから分かることは、「女性側がフルタイムで働いていても、男女間の家事は平等には分担されておらず、女性が男性より家事分担を多く受け持つことが多い」という現実です。
分担が公平になされておらず、多くの家庭で妻が9割の家事を担っているという現状はかなりショッキングなものです。
ただし、若い世代ほど家事分担は進んでおり、今後この傾向が変わっていくことが期待されます。
しんどい…なぜ多くの男性は家事をしないのか
ところで、なぜ男性は家事をしないのでしょうか? そこには様々な理由が考えられます。
男性が家事をしない理由1 そういう家に育ったから
前述したように、年齢が上の世代ほど、家事分担は進んでいません。
つまり、母親が働きながらほとんどの家事を担っているような家庭に育った人は、現状とても多いということです。
自分の家庭が標準的な家庭だと認識している場合、女性は外で働いていても家事をして当然だと無意識に思い込んでいる可能性があります。
男性が家事をしない理由2 自分の方が稼いでいるから
自分の方が高収入で、家計により多く貢献しているのだから、家事はしてもらいたいと考える男性もいます。
ただし、男性の方が高収入であるということと、その男性が同居している女性より能力が上だとか仕事を頑張っているという証明にはなりません。
なぜなら、日本はジェンダーギャプ指数110位(2018年時点)であり、就業や昇進の機会、賃金といった面で女性にかなり不利な国だからです。
そういった社会的な構造を無視して、「収入が少ないのだから、(女性がフルタイムで働いていたとしても)家事は女性に任せて当然」と考える男性もいます。
男性が家事をしない理由3 仕事が忙しすぎるから
日本は、労働時間が長い国です。時間あたりの労働生産性は、OECD加盟国の中でも下の方なので、労働時間を短くして生産性をあげる努力をすべき。
ですが、働き改革が叫ばれる今も、まだまだ「長時間働くのがエライ」といった風土をもった日本企業は少なくありません。
長時間労働・残業・休日出勤などが続き、家事をする気力がない、という男性もいて、その気持ちは理解できるものです。
あまりにも過酷な労働環境にいる場合は、家事分担を考える前に、転職できないか、キャリアチェンジできないか、などを考える必要があるでしょう。
男性が家事をしない理由4 男らしさを誇示したいから
信じたくはありませんが、なかには女性より収入が少なくても家事をほとんどしない男性もいます。
男性学の研究者・田中俊之氏は、「男は仕事、女は家庭という性別役割分業にとらわれた男性が、稼ぎによって男らしさを表現することができない場合、あえて家事をしないことで男性役割を維持しようとすることがある」と指摘しています。(※2)
イライラ!同棲中の家事分担問題を解決するためにしてはいけないことは?
男性は様々な理由から家事をしないので、女性側は「なんで私だけが家事をしないといけないのか」というイライラを抱きがちです。そこで、あの手この手で男性を家事に「参加させよう」とします。
ですが、ここに根本的な間違いがあります。参加させようとすることで、自ら「家事をしきる役割(家事をメインでする人)」になってしまっているのです。
ここでは、家事分担問題を解決するためにしてはいけないことを解説していきます。
同棲中の家事分担問題を解決するためにしてはいけないこと1 男性をたてる・褒める
「男性は褒めて家事をさせると良い」というのを聞いたことありませんか?
しかし、下手に出て、男性をおだてたり褒めたりしながら、家事に対する成長を見守ることは、もっともしてはいけないことです。
なぜそれをしてはいけないのかというと、彼氏はあなたの子どもではないからです。「男性のプライドをたてて、褒めながら家事をしてもらおう」と画策すると、いつのまにかあなたは彼の母親的ポジションになってしまうでしょう。
そもそも、男性をたてたり褒めたりして家事をしてもらいましょう、という言説は、誰が言い出したのでしょうか?
そんな面倒なことを女性が進んでやりたがるとは思えません。おそらくガミガミ言われるのが嫌な中年男性が、「男性をたてたらすべてうまくいくってことにしていた方が、都合がいい」と考えて発信したのではないでしょうか?
そういった考えを内面化してしまい割りを食っている女性も多いですが、男性がいなければ生きていけない時代でもないのですから、自ら志願して男性のお世話がかりになりにいく必要は皆無でしょう。
同棲中の家事分担問題を解決するためにしてはいけないこと2 「家事参加」を促す・指導する
家事をしてくれない男性にイライラして、どうにか家事に参加させようと頑張ってしまう気持ちは理解できます。
ですが、「彼を家事に参加させよう」と取り組み始めた時点で、家事のメインはあなたということになってしまいます。家事参加を促したり、家事を細かく指導したりはやめましょう。
同棲中の家事分担問題を解決するためにしてはいけないこと3 感情だけで訴える
家事分担問題にイライラしてしまい、感情的になる気持ちは理解できますが、感情だけをぶつけても、自体は解決しません。家事分担問題について怒っているだけでは、問題は解決しないと肝に命じておきましょう。
同棲中に、家事の「家庭内男女平等」を達成する方法とは?
次に、同棲カップルの家事分担問題を改善するためのヒントをご紹介します。
ここで紹介する方法は、これまで聞いてきた家事分担問題の解決法とはちょっと違うかもしれません。
「これまで、家事の分担をしてもらおうと思って頑張ってきたけど効果がない」という方に試していただければと思います。
同棲カップルの家事分担問題を改善するためのヒント1 家事の主導権を徹底的に放棄する
まずは、家事の主導権を放棄しましょう。自分が家事を仕切っているという意識を捨てるのです。
家事は分担するのが当たり前だという意識を持ち、「自分の方が割を食っている」と思ったら、家事をするのをやめましょう。
彼氏が家事をしてくれないのは、あなたが率先してやりすぎているからかもしれません。しない、という勇気も必要です。
また、彼氏が担当している家事が自分の気に入らないクオリティだったとしても、反応しないようにしましょう。その家事は彼氏の担当であり、あなたの管轄外のものです。
同棲カップルの家事分担問題を改善するためのヒント2 彼氏に、家事量の可視化をさせる
よく言われているように、家事の量を可視化するということも家事分担には有効です。ですが、できれば家事量の可視化は、彼氏にしてもらうようにしましょう。
「家事量を可視化しよう」と考えるのは、家事を多くしすぎている方です。家事で楽をしている方は、可視化したいなんて思いません。
家事の分担で損をしていると思ったら、最小限の家事をして、彼氏から、「こっちが損をしている。家事の分担を表にしてみよう」と言われるのを待ちましょう。
彼氏が家事を自分の仕事だと認識し始めたら、時短家電の導入や外注化などについても考え始めるでしょう。
誰しも「自分の仕事」という認識がなければ、いつまでたっても、現状を変えようとは思わないのです。
同棲カップルの家事分担問題を改善するためのヒント3 将来の不安を打ち明ける
家事の主導権を手放し、家事をしないでいることで、家の中がぐちゃぐちゃになり、それでも彼氏は家事について自分ごとという認識を持たなかった、という場合はどうしたらいいのでしょうか?
そういった場合は、将来が不安だと彼氏に打ち明けてみましょう。同棲カップルの多くは、将来結婚することを見据えているでしょう。同棲中に家事をまったくしてくれないということは、結婚後もしないということです。
「こういう状態では将来のことも考えられない」と打ち明けてみましょう。あなたを失う可能性を認識した男性は、(あなたを愛していた場合)、態度を改めざるを得ないでしょう。
家事は、労働。「愛情の搾取」は、愛を失わせる
ドラマにもなり大ヒットしたマンガ『逃げるは恥だが役に立つ』(海野つなみ作・講談社)では、主人公みくりが、結婚後、無料で家事をさせようとする恋人に対して、「それは、好きの搾取です」と言い切ります。
家事は、賃金が支払われない労働です。好きだから、恋人だからという理由で、無償労働を一方が嫌々担うことになれば、いつのまにか愛情さえも薄れてしまうことになりかねません。同棲中の今だからこそ、家事分担問題にしっかり向き合い、愛情を守っていく必要があると思います。
この記事を書いた人:
今来今
編集者を経て複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。