【住宅ローンの完済後に行う手続き】必要書類や手続きの仕方を解説

人生で最も大きな買い物といっても過言ではないのが「住宅」です。数千万円単位の買い物となりますので、慎重に支払い計画を立てなければなりません。また、住宅ローンで費用を支払う場合、「住宅ローン完済後」の必要書類や手続きの仕方について把握しておく必要があります。

うっかり必要な手続きを忘れてしまうと、住宅ローン完済後でも自由にその不動産を売ったりできなくなるのです。ローン完済後の手続きを先延ばしにするのはNGです。この記事では、住宅ローン完済後の必要書類や、手続きの仕方をご紹介します。

住宅ローンの完済後に必ず行う手続きは「抵当権の抹消」

住宅ローンを完済後、必ず行う手続きは「抵当権の抹消」です。とはいえ、そもそも「抵当権」とは何なのか分からない方も多いと思います。まずは、抵当権の概要や、万が一抵当権の抹消手続きを行わなかった場合、住宅はどうなってしまうのか見てみましょう。

抵当権とは

抵当権とは、購入者が万が一住宅ローンを支払えなくなってしまったときに備えた、金融機関側の損害を防ぐための権利です。住宅を購入したものの、住宅ローンが支払えなくなってしまったという事例は珍しくありません。住宅ローンの支払いが途絶えてしまうと、お金を貸していた金融機関は損害を被ることとなってしまいます。

しかし、住宅ローンを借りた人が購入した不動産に抵当権を設定しておくと、金融機関がその不動産を担保として取り扱えるようになります。つまり、万が一住宅ローン利用者が支払いできなくなったとき、金融機関はその住宅を競売にかけるなどして費用を回収できます。

抵当権抹消手続き前に確認すること・必要書類

住宅ローン完済後に抵当権の抹消手続きを行うにあたり、事前に確認しておくべきことがあります。まず、抵当権抹消手続きのための「必要書類」を揃えることです。住宅ローンを完済すると、金融機関から以下の書類が送られてきます。

・抵当権設定契約証書
・代表者事項証明書(もしくは登記事項証明書)
・抵当権解除証書(登記原因証明情報)
・抵当権抹消についての委任状

抵当権抹消の手続きを行う際には、上記4つの書類が必要です。これらの書類が届いたら、内容に不備がないかをしっかりとチェックし、気になるところがあれば住宅ローンを借りた金融機関に問い合わせてください。

また、抵当権抹消手続きには、上記4つの書類の他、住宅購入時に受け取る「登記識別情報(権利証)」と、法務局で入手できる「抵当権抹消登記申請書」が必要です。住宅ローン完済後の抵当権抹消の手続きには、合計6種類の書類が必要であることを覚えておきましょう。

抵当権抹消手続きの仕方と費用

住宅ローン完済後の抵当権抹消手続きの方法は「自分で手続きを行う」と、「司法書士に委任する」の2通りあります。それぞれの詳しい手続き方法は以下をご覧ください。

自分で抵当権抹消手続きを行う場合

自分で抵当権抹消手続きを行う方法は、以下の通りです。

1.抵当権抹消登記申請書を準備する
2.法務局へ申請方法を確認する
3.必要書類を全て揃える
4.法務局へ「抵当権抹消」の申請をする
5.申請後数日~10日で登記完了

抵当権抹消登記申請書は、法務局に直接取りにいくか、法務局のホームページからダウンロードしたものを使用します。また、抵当権抹消手続きは、管轄の法務局によって、取り扱いが異なる場合があります。書類の準備や作成を進める前に、管轄の法務局に申請方法などを確認しておきましょう。

法務局で申請方法を確認したら、必要書類を全て揃えて、法務局に抵当権抹消の申請をしてください。ただし、抵当権抹消の登記は、申請当日に完了するわけではありません。抵当権抹消の登記までに、申請当日から数日~10日の時間を要します。なお、提出した書類に不備があり指摘されたときは、法務局の担当者の指示に従いながら修正してください。

ちなみに、自分で抵当権抹消手続きを行う場合の費用は次の通りです。

・登録免許税:不動産1筆あたり1000円(収入印紙で支払い)
・事前調査費用:窓口の場合は不動産1筆あたり600円、オンラインの場合は1筆あたり500円
・謄本取得費用:窓口の場合は不動産1筆あたり600円、オンラインの場合は1筆あたり500円

登録免許税は、抵当権抹消登記のためのお金であり、不動産1筆あたり1000円です。ただし、土地をいくつかの筆(土地の単位)に分けて登記してある場合は、1つの住宅であっても対象となる筆数分の登録免許税を支払わなければなりません。

事前調査費用は、現在の不動産の情報を確認する「登記事項証明書」を取得する費用です。窓口もしくはオンラインから取得でき、それぞれ費用が異なります。

謄本取得費用は、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得するための費用です。窓口もしくはオンラインから登記事項証明書を取得できますが、事前調査費用同様にそれぞれ費用が異なります。

司法書士に抵当権抹消手続きを委任する場合

司法書士に抵当権抹消手続きを委任することもできます。抵当権抹消手続きを全て代理してもらえますので、忙しい方や、手続きに自信がない場合におすすめです。ただし、司法書士に依頼すると、前項でお話しした登録免許税、事前調査費用、謄本取得費用に加え「司法書士へ支払う報酬(依頼料)」が発生しますので注意してください。なお、司法書士に支払う報酬は、1万5000~2万5000円が相場です。

火災保険が質権設定されている場合

火災保険が質権設定されている場合は、「質権消滅手続き」を行わなければなりません。火災保険の質権設定は、住宅が火災で焼失してしまった場合に備える金融機関側の権利です。不動産が火災で消失してしまった場合、金融機関はその不動産(建物)を競売にかけるなど、回収の動きができません。しかし、火災保険を質権設定することにより、住宅ローン利用者よりも優先的に金融機関が保険金を受け取れるようになるのです。

火災保険の質権消滅手続きの方法

住宅ローンを完済すると、金融機関から「火災保険の保険証書」「質権消滅承認請求書」が届きます。この2つの書類を受け取ったら、それぞれに不備がないかを確認したうえで、これらの書類を火災保険の保険会社に郵送してください。

手続きを後回しにしたり、忘れたりすると面倒なことになります。契約内容を変更するときに質権者(住宅ローンを利用している金融機関)に確認をとらなければならず、手間が増えてしまうのです。住宅ローンを完済したら、火災保険の質権消滅手続きを忘れないようにしましょう。

なお、火災保険の質権消滅手続きを行っても、火災保険には加入し続けられます。また、追加の保険料など、別途費用が発生することもありません。とはいえ、火災保険の質権設定は必須ではありません。購入した不動産が質権設定されているか分からない人は、住宅ローンで利用していた金融機関に問い合わせて確認してください。

住宅ローンは何歳で完済している人が多い?

住宅ローンに関し、「他の人は何歳で完済している人が多いのか気になる…」という方も多いでしょう。しかし、住宅ローンの返済計画は人により大きく異なります。そもそも、購入金額が異なりますし、住宅ローンを組んだ年齢もバラバラです。さらに、不動産購入者の経済状況や、家族構成なども住宅ローンの返済計画に影響しますので一概には言えません。

住宅ローン利用者の返済期間の傾向

住宅ローンを完済したときの年齢は、人それぞれ異なります。しかし、住宅ローンの返済計画を見てみると、30年前後で住宅ローンを組んでいる人が8割を超えている一方、そのうちの半分以上の割合は実際の返済期間が15年以下です。

つまり、住宅ローンの返済期間は約30年で計画しているものの、積極的に繰り上げ返済をしている人が多いのです。住宅ローン利用期間中の利息や、老後の経済状況をふまえ、早めに返済したいという意思を持つ人が多いことが分かります。

とはいえ、返済期間が15年以下や30年前後などといった情報は、あくまでも「傾向」です。例えば、比較的安価な不動産を購入したことで、住宅ローンの返済期間が10年以下となる場合もあります。逆に経済的な事情から、定年まで住宅ローンを返済し続けるケースもあるでしょう。

住宅ローンに「〇年以内に完済すべき」といった考え方は存在しません。もちろん、短期間で返済できたほうが、支払う利息が少なくて済みます。しかし、ローンの返済を最優先にした結果、日常生活に支障が生じてしまった……という状況は避けたいところです。

せっかく、念願のマイホームを手に入れても、「生活費を切り詰めすぎて生活が楽しくない」となってしまっては、家族がギクシャクしてしまう可能性もあります。また、無理に繰り上げ返済をしたことで、手元にまとまった現金がなくなってしまうこともハイリスクです。怪我や病気での入院や子供の進学、冠婚葬祭などで臨時出費が生じたとき、手元に現金がないと慌ててしまうでしょう。住宅ローンは、むやみに繰り上げ返済をする必要はありません。仮に、返済期間が長いとしても、金融機関と交わした契約内容に沿って返済ができれば問題はないのです。

全額繰り上げで一括返済で完済する場合

住宅ローンを繰り上げ返済で完済する人は珍しくありません。しかし、繰り上げで返済する場合、手数料が発生することがあります。さらに、金融機関が設ける手数料には「定額制」「定率制」の2タイプがありますので注意してください。それぞれの詳細は以下で説明します。

【定額制】
定額制は、借り入れ額に関わらず一定の手数料が請求されます。借入額が「5000万円」、「3000万円」と違いがあっても、手数料の額は同じです。

【定率制】
定率制は、借り入れ額に対して〇%の手数料、といったように手数料が発生します。例えば、「繰り上げ返済額10万円に対し手数料は5%」「繰り上げ返済額100万円に対し手数料は5%」などです。

繰り上げ返済時の手数料について把握しておかないと、住宅ローンの返済の負担を軽減するために繰り上げ返済するはずが、かえって経済的な負担が増えるかもしれません。また、手数料における「定額制」「定率制」の2種類を正しく把握しておかないと、想定していたよりも高額な手数料を請求されて、慌ててしまう可能性があります。なお、「フラット35」や、一部のネット銀行は、住宅ローンの繰り上げ返済手数料が無料です。

繰り上げ返済で完済するメリットとデメリット

住宅ローンを繰り上げ返済で完済する場合、メリットとデメリットがあります。現在、住宅ローンを繰り上げ返済で完済しようと考えている人は、以下の内容を参考にしてみてください。

【メリット】
・返済期間が短くなる分、利息分の費用が不要
・完済できれば住宅ローン分の出費がなくなり、家計の負担が軽くなる

【デメリット】
・繰り上げ返済手数料が発生することがある
・無理に繰り上げ返済すると手元に残る現金が少なくなることも

住宅ローンを繰り上げ返済で完済するとき、節約効果はローン残高や金利によって異なります。例えば、3000万円を金利1.74%、借入期間20年で借りたとシミュレーションしてみましょう。月々コツコツと返済したとき、合計額は約3554万円です。

一方、借り入れから10年経った時点の残債、約1630万円を繰り上げで一括返済した場合の合計は約3407万円です。繰り上げ返済なしとありとでは、約147万円もの差があるのです。

参考:

ちなみに繰り上げ返済で完済する場合は、住宅ローンを利用している金融機関の窓口で相談するか、電話で問い合わせてください。直接金融機関の窓口にいく場合は、住宅ローンの返済で使用している銀行の印鑑、通帳(もしくはキャッシュカード)、返済予定表を持参してください。

一括で返済したいことを伝えれば、金融機関から手続きの説明があります。後日、住宅ローンを利用している金融機関から必要書類が届きますので、不備がないか確認しましょう。

ちなみに、金融機関によっては、窓口にいっても対面での受付ではなく、専用の電話ブースの利用を促されることがあります。担当者の指示に従いながら、手続きを進めていきましょう。

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