床の間とは?有効活用できるリフォーム方法や和風モダンなリノベを紹介

中古物件を購入してリノベーションする時、「床の間」に悩む家は多いものです。「床の間はあるけれど、まったく活用していない」「今の暮らしに合わせてリフォームして、有効活用したい」と思っている方も多いのではないでしょうか。この記事では家に「床の間」がある方に向けて、床の間が作られた理由や種類、有効活用するアイデアについてご紹介します。

《目次》- そもそも「床の間」とは?

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そもそも「床の間」とは?

日本特有の「床の間」には歴史があり、古くから神聖な場所とされてきました。掛け軸や壺が飾ってあるイメージが強い床の間ですが、実は種類があり、それぞれの部位にルールもあるのです。まずは床の間の種類と、床の間を構成する各部位から見ていきましょう。

「床の間」の種類5選

床の間と一言にいっても、その種類はいくつかあります。ここでは、代表的な5種類の床の間についてご紹介します。

本床(ほんどこ)

床の間には格式の高い順から「真・行・草」があります。本床とはその中でも一番格式が高い真の床の間であり、床の間の原型ともいわれています。本床は、畳面から一段上がった床との間部分に「床框(とこがまち=化粧板)」を設置するのが一番の特徴です。また、飾り棚や付書院と呼ばれる明かり窓など、床の間に必要な部分がすべてそろっています。本来なら本床で揃えている部分を総合して「床の間」といいますが、次に紹介する簡素化された床の間も多く存在します。

壁床(かべどこ)=織部床(おりべどこ)

本床のように奥行きのある床の間ではなく、天井と壁の境目にある「廻縁(まわりぶち=後に詳しく説明します)」の下にある柱と柱の間に、およそ20cmの「雲板」を取り付けるのが特徴です。床の間では最も簡素な「草」に分類されるもので、あえて高価な素材は使わず壁や軸釘のみで簡素に作っています。壁床は、「侘び寂び」を追求する茶室でよく使われた床の間の形式で、安土桃山時代の武将「古田織部」が好んだ床の間の様式であることにちなみ、「織部床」とも呼ばれています。

蹴込床(けこみどこ)

蹴込床は、本床と同じく畳面から一段高い床の間を設けますが、本床と違うところは「床框」を省略しているところです。床框の代わりに「蹴込板」と呼ばれる板をはめ込むために蹴込床といわれ、素材は竹や丸太といった素材が使われることもあります。

置き床(おきどこ)

「床を置く」と書く置き床は、移動式の床板を置くことで正式な床の間に代用する方法をいいます。置き床に使われる床はおよそ横幅1m程度が一般的ですが、形式に決まりはありません。床の間が不要な時は片づけたり移動したりできるので、「気軽に床の間を楽しみたい」という方に特におすすめの形式です。

踏込み床(ふみこみどこ)

本床と同じく奥まった床の間のスペースを作りますが、床框などで段差は作らず地板だけを設置するのが踏込み床で、座敷と同じ高さにするのが特徴です。蹴込床より簡単に作られた床の間で、格式の中では最も低い「草」の形式ですが、地板の木目の美しさを強調できるというメリットがあります。

床の間の各部位の名称

床の間の種類や格式が分かったところで、次は床の間の各部位について見ていきましょう。

床柱(とこばしら)

角柱や丸柱をはじめ、木の種類や加工方法でも格式が変わる床柱は、床の間に欠かせない部位で、床の間ととなりの壁とをつなぐ化粧柱のことです。格式が最も高い「真」の床の間ではマツやヒノキといった角柱、「行」ではスギ、「草」では丸太などが使われます。

床板・床畳(とこいた・とこだたみ)

床の間に設置する地板のことで、最も格式の高い「真」の床の間では「床畳」と呼ばれる畳が用いられます。しかし最近ではケヤキなどの集積材(床板)が使われることが多くなっています。

床框(とこがまち)

床の間の段差部分に設置する化粧木材で、無垢や集積材など使われる材質は多くあります。最も格式の高い本床で使われる部位で、本床を簡略化した蹴込床では使われません。本来床框のある部分がへこんでいたら、蹴込床と見分けられます。

小壁(こかべ)

床の間の上部の壁のことをいいます。小壁の縦の長さを大きくすると、床の間の懐が深い印象になり、昔の家では広めに取ることが一般的でした。しかし最近の小壁はどんどん狭くなる傾向にあります。

落し掛け(おとしがけ)

奥行きのある床の間を作る際、上部の垂れ壁のようになっている「小壁」部分を受け止めるように取り付けられる木材をいいます。

前板(まえいた)

床の間の一段下りた部分に設置される板をいいます。前板は床の間の下にあり座敷と同じ高さですが、「神聖な場」とされる床の間の一部です。前板に気軽に物を置くことはタブーとされています。

廻縁(まわりぶち)

天井と壁が接する部分に取り付けられた見切り部材のことで、境目を抑える役割があります。見切り部材とは、仕上げ材の替わりとして使われるものです。天井と壁の境は一直線にすることが難しく、廻縁は主に見た目を整える目的で使用されます。

床の間は何のために作られた?本来の使い方は?

床の間が生まれた理由は、その部屋が「お客様をおもてなしする場所」として作られたからだ、といわれています。和室や床の間が減った今でも、和室の上座といえば最も奥の位置です。昔は和室の奥に床の間があり、その前に座るとその人が「映える」ために上座になっていると言われています。床の間の発祥は諸説ありますが、床の間を設置する風習は室町時代辺りからと考えられています。武家社会が発達して身分へのこだわりが強かった室町時代では、「上座・下座」として座る場所も身分の高さで変えられていました。

また、「茶道」も床の間の変化に大きく影響しています。冒頭でご紹介したようにあえて簡素に作るものもありますが、これは「侘び寂び」を重んじる茶の湯の考え方が大きく影響しているのです。茶の湯では、もてなす人と客人が床の間で共に精神世界を作り上げるという考えがあり、茶席ごとにテーマがあります。茶道ではその日テーマを「掛け軸」で伝え、さらにそれに沿った置物や花を床の間に飾ったといわれています。床の間はそもそも神聖な場所ですが、武家住宅の様式として「書院造」という実用的なものも生まれました。書院造は床の間だけではなく、「違い棚(高さの違う棚)」や座敷飾りの1つである「帳台構(納戸構ともいう)」、書き物をする「付書院(文机)」で構成され、実際に読み書きにも使われていました。

骨董や和風のインテリア、掛け軸を飾る

掛け軸と並べて照明などのインテリアを置くと、和室をモダンにアレンジすることも

床の間といえば、時代劇や旅館で見るような、壺などの骨董品や掛け軸が飾ってあるイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。そのイメージ通りで、床の間は本来さまざまな装飾品を並べて、お客様をもてなすための部屋として使われていました。また、江戸時代の商いは「店舗併用住宅」といってお店と家が一緒になっている形式がメインでした。床の間に小物や古着を飾った「床店(とこみせ)」という簡単な店舗で商いをしているお店もありました。

仏壇を床の間に置いてもOK?

「格式の高い床の間だから、仏壇を置くのはタブーではないか」と心配される方も多いようです。しかし、仏壇は床の間に置いてもまったく問題ありません。むしろ、床の間が最適な場所ともいえるのです。床の間は家の中で最も大事な場所であり、ご先祖様を大切にする気持ちを表現できます。和室の奥に位置している床の間なら、日差しも強く入らないので、仏壇やお供えしたお花の劣化防止にもなります。室町時代の僧侶の家では、床の間に仏壇や仏画、仏像などをあつらえて宗教の精神世界を表現したといわれています。その考え方からしても、床の間に仏壇を置くことは何ら問題はありません。仏壇を床の間に設置する場合、宗派によって最適な「向き」は異なります。しかし一般的には「北向き」は避けて設置するので、床の間の向く方角との兼ね合いが問題ないか、まずはチェックしてみましょう。北向きは避けたほうが良いですが、どの宗派でも一般的に東向きや南向きは良いとされています。

床の間をリフォームすれば、デッドスペースを有効活用できる

床の間の基本・種類を押さえたところで、床の間のリフォーム方法を見ていきましょう。「床の間は使う機会がないから、もっと有効活用したい」という場合は、やはり床の間のリフォームがおすすめです。目的もなく床の間を放置していると、ほとんどの場合有効活用はできません。床の間に洋風のテイストを取り入れたり、飾りスペースを作ってディスプレイを楽しんだりと、床の間をリフォームすれば部屋の活用範囲も大きく広がるでしょう。リフォームには、以下の3つの方法がおすすめです。

収納スペース|本棚やクローゼットに

本床など奥まったつくりになっている床の間の場合、その部分をそのまま収納スペースにリフォームすれば有効活用できます。たとえば床の間のスペースを全部書棚に作り変えれば、こまごまとした本や書類を多く収納できます。本棚にリフォームする場合は、棚板を可動式にしておけばさらに自由度が高まりますね。また、床の間スペースをクローゼットに作り変えるリフォームも人気です。床の間がある部屋にすでに衣装ケースやシーズンオフの服が溜まっている場合は、クローゼットにリフォームすると一気に片付くでしょう。床の間をクローゼットにリフォームして折れ戸の扉を付ければ、たっぷり収納できる有効なスペースへと生まれ変わります。

作業スペース|書斎、仕事場として活用

リモートワークの機会が増えてきた人は、床の間にカウンターを設置して「テレワークスペース」へとリフォームするのもいいでしょう。「自分の部屋がなく、作業スペースが欲しい」と考えている人には特におすすめです。適度に奥まった場所なら集中しやすく、仕事に向いています。カウンターを造り付けなくても、床の間に机を置けば立派な作業スペースになりますし、カーテンを付ければ人が通っても気になりません。

和風モダンな印象にリノベーションしたい場合は?

和のテイストを残しつつ欧米のモダンスタイルと融合させる「和風モダン」は、特に和室や古民家のリフォームで人気のテイストです。しかしポイントを押さえずにリノベーションすると、「全然和風モダンにならなかった」ということもあります。和モダンにリノベーションする時ときに押さえておきたいのは、「色と素材」です。和のテイストを残すために、ベースカラーはベージュや白など落ち着いた色を選びます。しかしモダンな雰囲気にするためにはアクセントとなる色も必要なので、藍色やえんじといった和風の色をバランスよく取り入れるようにしましょう。

和室全体をリノベーションする場合は、漆喰や和紙などの和風の素材を取り入れることもおすすめします。配色はプロと相談しながらシミュレーションして、イメージ通りか確認しながら進めていきます。余裕があれば、ペンダントライトや間接照明といった明かりに変えるとさらにオシャレな和風モダンの空間にリノベーションできますよ。

床の間リフォームの費用相場と注意点

床の間リフォームの場合、床の間だけをリフォームする部分的なリフォームと、和室全体をリフォームするフルリフォームに分かれます。天袋や押し入れもリフォームする場合は、壁材の補強や断熱材の追加が必要になるケースもあり、その場合費用は高くなります。

カウンター設置程度なら5万程度~、こだわりテイストなら100万円以上も

当然ながら、範囲が狭い部分的なリフォームなら安い費用で行えます。たとえばテレワーク用の机や飾り棚程度のカウンターを設置するといった範囲なら、5万円もあればできるでしょう。そのほか、畳をフローリングに変えたり建具を取り換えたりする程度なら、10万円以下でできるケースも少なくありません。しかし、床の間をはじめ和室全体をフルリフォームする場合は100万円を超えることもあります。テイストにこだわりがあり、機能性もデザイン性も重視する場合はしっかり費用を準備しておかなくてはいけません。また、建物そのものの強度が不足の場合、補強工事も必要になるかもしれませんので、専門家にしっかり相談しましょう。

床の間リフォームをする際に注意したいポイント

マンションの場合は規約を要確認。バリアフリー仕様は補助金が出る可能性も。プロに相談を

リフォームでの注意ポイントは、主に以下の3つです。

・マンションの場合、管理規約をチェックする
・段差をなくしてバリアフリー仕様にする
・複数の会社から見積もりを取り、内容を見くらべる

まずマンションの場合は、管理規約に違反していないかチェックしましょう。床の間は専有部分ですが、マンションの規約によっては制限がかかっていることもあります。また、集合住宅であるため防音対策にも配慮する必要があり、床材の防音レベルが指定されていることもあるのです。後からトラブルになると大変なので、必ずリフォームする前に管理者に確認し、許可を取っておきましょう。

床の間のある和室は段差が多いのが特徴です。リフォーム後も和室として使い続けるなら、隣接するリビングなどと段差をなくす「バリアフリー仕様」を取り入れるとさらに暮らしやすくなります。バリアフリーリフォームの場合、補助金が出ることも。見積もりを取る時は、まず2~3社程度の会社から相見積もりを取って内容をくらべましょう。費用を抑えたい場合はフルリフォームを避け、上手く和洋折衷を取り入れた「和風モダン」テイストへのリフォームを検討する方法もおすすめです。色味やデザイン、リフォームする部分はプロにしっかり相談に乗ってもらいます。

床の間スペースは可能性の宝庫

中古住宅や古民家に多い床の間は、活用方法に悩むものです。しかし今回ご紹介したように、自分や家族のライフスタイルに合わせて作業スペースや収納スペースへリフォームすれば、より便利な場所として活用できるでしょう。家族の暮らしやすさに直結するリフォームの方法は、正解も不正解もありません。それぞれのライフスタイルや目的に合わせ、快適な住空間へとリフォームしてみましょう。部分的な改修ならDIYやリメイクなど自分で施工することもできますが、本格的なリフォームならやはりプロに依頼するほうが安心です。悩みや目的をプロに相談すれば、素敵なアイデアを出してくれるはず。

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