住宅ローンの火災保険は必須? 補償内容と契約のポイント

住宅ローンを組む時には、火災保険への加入が必須です。しかし、火災保険への加入にあたって次のような疑問を抱く方は多いでしょう。

・なぜ火災保険への加入が必須なのか?
・火災保険の補償内容にはどのようなものがあるのか?
・火災保険の契約時には何をチェックすればいいのか?

この記事では、火災保険への加入が必須である理由と、火災保険の補償内容・契約のポイントについて解説していきます。火災保険加入に納得できない方、火災保険の補償内容について理解を深めたい方、火災保険の保険料を少しでも安く抑えるコツを知りたい方は、ぜひご確認ください。

住宅ローンを組む際は、火災保険加入が必須条件

住宅ローンを組む際に、火災保険への加入も必須とされるのは何故でしょうか。その理由や火災保険の補償内容について解説していきます。

火災保険の補償内容と、加入必須の理由

火災保険に入っていると、災害などで住宅が被害を受けた場合に修復費用を補償してもらえるので、もしもの時に備えて火災保険への加入が必須とされています。しかし、修復費用を自分で出せるだけの貯蓄がある場合には、保険料を払ってまで火災保険に入らなくてもいいのでは?と思う方もいるでしょう。

実は、火災保険への加入が必須とされる理由は他にもあるのです。その理由とは、「ローンを返済できないリスクに備えるため」です。もし火災保険に入っていない状態で火災が発生すると、次の状況に陥る可能性があります。

・住宅の修復費用、新たな住宅の費用など大きな出費が必要になる
・住宅ローンの返済も続けていかなければならない
・火災による被害の結果、生活が困窮し、住宅ローン返済ができなくなる
・住宅ローン返済が滞ることで、利子により返済額が増えてしまう

しかし火災保険に加入していれば、保険金がおりるため金銭的に余裕ができ、住宅ローンの返済を滞らせずにすむのです。気になる火災保険の保険料は、補償内容の割に安価です。補償内容や補償金額、契約期間によって保険料は安くなったり高くなったりするため、ある程度自分で保険料を調節することも可能です。

たとえば火災保険の補償は2020年2月時点で最長10年間となっており、契約期間は長いほど保険料が安くなります。新規加入の時はもちろん、保険の更新時にも、改めて補償内容・保険料を見直してみましょう。

火災保険で補償されること

火災保険では、補償対象を「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財両方」の3種類から選べます。建物を補償対象とした場合には、以下の損害に対する補償が行われます。

・火災による損害:過失によって火事を起こす失火、もらい火、落雷・電化製品の破損、ガス漏れによる破裂・爆発で生じる損害など
・風災による損害:台風や竜巻などによる屋根の破産など
・雹災:雹(ひょう)による屋根の損傷など
・雪災:豪雪による建物の損壊など
・水災:洪水による床上浸水など
・盗難:盗難に入られたことによるガラスの破損など
・水漏れ:排水管の詰まりによるものなど

上記の他にも、不測かつ突発的な事故による汚損・破損も補償対象です。具体的には模様替え中にうっかり壁に穴を開けてしまった、小さな子供が床に落書きをしてしまったなどの例が挙げられます。家財を補償対象とした場合には、家具や電化製品、衣類に生じた損害に対する補償も受けられます。たとえば、次のような損害も補償対象に含められるのです。

・食器を落下させて割ってしまった
・子供がおもちゃを投げたことでテレビの画面が割れてしまった

火災保険に加入する際は建物・家財どちらかだけを補償対象とするのか、建物と家財両方を補償対象とするのか、ご検討くださいね。

ここまで見てきたように、火災保険の補償対象は火災による損害だけではなく、非常に幅広いものです。そのため「すまいの総合保険」とも呼ばれているのですが、地震による損害については対応していません。地震に備えるためには任意加入である「地震保険」に入る必要があります。

火災保険で地震の被害は補償されない

地震でも火災が発生することはありますが、これは火災保険の補償対象外です。地震によって発生した火災の被害は、地震保険で補償されますので、ぜひ地震保険にも入りましょう。地震保険では、次の補償が受けられます。

・地震や噴火、津波による火災で生じた損害
・地震や噴火、津波による損壊で生じた損害
・地震や噴火、津波による埋没、流出などによる損害

地震保険の補償対象となるのは、地震や噴火、津波を原因として建物・家財に生じた損害です。地震保険は火災保険とは違い任意加入なので、加入するべきか迷う方は多いでしょう。しかし、いつどこで大きな地震が起きてもおかしくない地震大国・日本に住む以上、地震保険にも入っておいた方が安心です。

多くの場合地震保険は単体では加入できず、火災保険とセットで加入します。火災保険と地震保険両方に加入する場合は、ハザードマップや住宅の特徴を確認しながら、それぞれの補償内容を効果的に組み合わせましょう。たとえばマンションの高層部に住む際は浸水のリスクが低いため、火災保険の水災補償を外し、その代わりに地震保険を加えた方が良いでしょう。

ただ、地震によって契約者自身やペットがけがをしても、地震保険がその治療費をカバーすることはありません。また地震による自動車の修理代や買い替えにも対応していません。地震保険はあくまで建物・家財に生じた損害のみが対象ですので、注意してください。

火災保険の加入時には「質権設定」の手続きも行う

火災保険に加入する際は、「質権設定」の手続きも必要です。しかし「質権設定」は聞き慣れない用語なので、難しそうだと敬遠する方もいるでしょう。そこでここからは、火災保険における「質権」とは何なのか、質権設定するメリットや手続きの流れについて、解説していきます。

火災保険の「質権」とは?

「質権」とは、ローンを組む際に債権者(お金を貸す側)に認められる権利のひとつです。質権を持つ債権者は、債務者(お金を借りる側)もしくは第三者から担保として物品や権利書、不動産などを受け取り、返済が終わるまで保管・占有します。もし債務者がローンの返済をできなくなったら、債権者は弁済を受けるために担保を売却できます。

火災保険の場合は、債権者は金融機関、債務者は住宅ローンの借入人、担保は火災保険金を受け取る権利に当たります。これをもとに、火災保険の質権についてもう少し簡単にまとめます。

・住宅ローンを組む際、借入人の「火災保険金を受け取る権利」は、担保として金融機関に渡る
・「火災保険金を受け取る権利」は、借入人がローンを完済するまで金融機関が持つ
・借入人がローンを返済できなくなった場合には、金融機関は借入人の「火災保険金を受け取る権利」を行使し、弁済を受けられる

つまり、もし借入人が住宅ローンの返済をできなくなったら、質権を持つ金融機関は貸付金を回収するために、借入人の火災保険から保険金を受け取ることができるのです

火災保険で質権設定することによるメリットとは?

火災保険で質権設定するメリットは、次の2点です。

・災害により住宅ローンの返済が遅れることで利子が増えることを防げる
・住宅ローンの返済が滞ることで住宅を競売にかけられることを防げる

住宅ローンの返済期間中に火災で家が全焼するなどの被害を受けると、家の修繕費やけがの治療費などが必要になり、ローン返済にあてられるお金がなくなる可能性があります。ローンの返済が遅れると、その分金利がかかるため返済額も多くなってしまい、悪循環に陥ります。

しかし火災保険で質権設定をしておけば、保険金は自動的に金融機関に渡ります。その結果、ローン返済が滞らず、利子が増えることを防げるのです。もし質権設定をしていない状態で住宅ローンの返済が滞ると、金融機関は貸付金を回収するために「抵当権」や「物上代位権」を行使し、住宅を競売にかけてしまう場合があります。質権設定によりローン返済が滞ることを防ぐと、万が一の時にも住宅を手放さずにすむのです。

「火災保険の質権設定」手続きの流れ

火災保険の質権設定をするためには、火災保険への加入手続きとは別の手続きが必要です。手続きの流れは、次の通りです。

・「保険金請求権質権設定承認請求書」または「保険金請求権・返還保険料請求権・質権設定承認請求書」に被保険者と質権者が記名・捺印する
・上記の書類を火災保険の保険会社に提出する

被保険者とは火災保険の契約者、質権者とは金融機関のことを指します。質権は住宅ローンを完済すれば消滅します。ただし、自動的に消滅するのではなく、質権抹消の手続きをとる必要があります。手続きの流れは以下の通りです。

・金融機関から保険証券と「質権消滅承認請求書」が被保険者側に送られてくる
・被保険者側は「質権消滅承認請求書」に必要事項を記入し、火災保険の保険会社に送る

上記の手続きをとることで、火災保険の保険金を受け取る権利が被保険者側に戻ってきますので、住宅ローン完済時には忘れずに質権消滅の手続きをしてください。

【補足】火災保険と火災共済どう違う?

火災保険と似たものに、「火災共済」があります。名前はよく似ていますが、運営母体や契約の形態、契約の対象者は異なりますので、違いを確認しておきましょう。

【運営母体】
火災保険の運営母体は保険会社です。それに対して火災共済の運営母体は、生協や労働組合、JA共済、JF共済といった非営利団体です。保険会社は利益を出すことで経営していく組織であり、競合他社との競争に勝つ必要があります。そのため保険会社を運営母体とする火災保険は、補償内容やサービスが豊富な傾向にあります。

一方で非営利団体は利益を出すことを目的とはしていません。普段から皆が出資者としてお金を出し合い災害に備え、いざという時にそのお金で損害を補償する形を取っています。そのため、非営利団体を運営母体とする火災共済は、火災保険ほど補償内容やサービスは充実していません。しかし、火災保険に比べて月々の掛け金は安くなっています。

【契約の形態】
火災保険の場合は、保険会社と契約者との契約です。そのため、契約者のライフプランやおかれた環境に応じて、補償内容やサービスを柔軟にカスタマイズできます。一方火災共済は、加入者皆で同じ契約を共有し、運営母体である非営利団体がそれを取りまとめる形を取っています。そのため、火災保険ほど個々の加入者が柔軟に契約内容をカスタマイズすることはできません。

【契約の対象者】
火災保険は不特定多数の人を対象としており、条件が合えば誰でも加入できます。
それに対して火災共済は、運営母体である非営利団体ごとに対象者を絞っています。ただし現在は、手続きを行えば誰でも組合員になれる非営利団体も多くなっています。

火災保険に加入するタイミングと、保険会社の選び方

火災保険はいつ加入すればいいのでしょうか。また、どの保険会社の火災保険に加入すればいいのでしょうか。ここからは、火災保険に加入するタイミングと保険会社選びのポイントについて解説していきます。

火災保険はいつまでに加入すれば良い?

火災保険は、始期日が住宅の引き渡し日と同日になるよう逆算して加入しましょう。多くの金融機関では住宅ローン契約と火災保険加入をセットにしているため、この時に火災保険に入っておけば良いでしょう。住宅ローンの申し込みは、不動産の売買契約時に行います。つまり、住宅の購入を決める時にはすでに、加入する保険会社の目星をつけておかなければなりません。

住宅ローン契約とは別のタイミングで火災保険に加入する場合には、住宅引き渡し日から1ヶ月半〜2ヶ月前を目安に保険会社選びなどの準備を始めてください。新築戸建てを購入する場合、竣工までの間は施工者が建築工事保険や火災保険に加入します。そのため、もし住宅の引渡しを受ける前に火災などで損害が発生しても、施工者側が対応します。

住宅ローン契約時の火災保険会社選びのポイント

火災保険料は、補償内容や保険料など様々な要素によって決まります。自分が望む補償内容に対してどれくらいの保険料がかかるのかは、火災保険会社を選ぶ上で重要です。

「住宅ローンの保険料」設定要素とは?

住宅ローンの保険料は、建物の燃えやすさや自然災害による被害の受けやすさによって左右されます。これは、建物構造や建物所在地から判断されます。他にも、保険料の決定には占有面積、補償内容、特約の有無、契約期間、保険金の支払い限度額などが関わってきます。

火災保険の加入選びのポイント

どの火災保険に加入するか決める時には、保険料がいくらなのかを確認することがポイントです。火災保険の保険料相場は10年一括契約の場合、2万円台〜20万円以上と差があります。月々の住宅ローン返済額も考慮し、保険料支払いが家計を圧迫しないよう気をつけましょう。

保険料の具体的な価格については、複数の保険会社から見積もりを取り寄せ、比較検討することをおすすめします。同じ火災保険会社でも、補償の内容やセットでつける特約によって、保険料は変わるため、何パターンかシミュレーションしてみましょう。ではここからは、どのような点で保険料に差が出てくるのか、具体的にご紹介していきます。

火災保険料は建物構造や周囲の環境によって違う

火災保険料は、建物構造や周囲の環境によって異なります。建物構造とは、建物の燃えにくさや壊れにくさなどを示したもので、火災保険の場合、次の3つの「構造級別」に分類されます。

・M構造:鉄筋コンクリート造やコンクリート造、れんが造、石造のマンション・アバートで耐火構造になっているもの。
・T構造:鉄骨造、コンクリート造などの耐火構造になっている一戸建て。
・H構造:M構造にもT構造にも該当しないもの。木造の一戸建てなど。

火災保険料は、災害リスクの高さを考慮し、M構造、T構造、H構造の順に分類され、M構造が安くH構造が比較的高く設定されています。周囲の環境とは災害リスクの大きさのことを指します。たとえば建物が延焼などにより火災の被害を受けやすい場所、自然災害が発生しやすい場所にある場合には、その分保険料も高くなります。

しかしたとえ延焼リスクの高い住宅密集地でも、消火施設が充実していれば保険料はあまり高くはなりません。

住宅ローンの火災保険は補償内容や期間で保険料に差が出てくる

火災保険料は、補償内容や期間によっても差が出てきます。火災保険では、すでにご紹介した基本の補償内容に加え、次のような特約・オプションを追加できます。

・家財明記物件特約:保険申込書に明記された、特定の家財に対する損害を補償する特約
・個人賠償責任補償特約:契約者が事故などで他人や他人の物に対して生じさせた損害の補償をする特約。日常生活責任補償特約と呼ぶ場合もある
・弁護士費用特約:弁護士費用を保険会社に負担してもらえる特約

付帯する特約・オプションの種類や数によって保険料に違いが生じるため、補償内容だけではなく保険料も合わせて検討しましょう。具体的にどれくらいの保険料が追加されるのかは保険会社により異なります。詳しくは代理店にお問い合わせください。

火災保険をできるだけ安くするコツ

火災保険料をできるだけ安くするコツには、次の4つがあります。

【契約期間を長くする】
火災保険は、契約期間を2年以上とすると割引を受けられます。最長契約期間である10年で契約をすると、もっともお得です。火災保険料の見積もりは、ネットにて無料で利用できます。火災保険料を確認する際には、1年契約だけでなく、2年以上の契約の金額も確認することがおすすめです。

【補償内容を厳選する】
上でもご紹介したように、火災保険ではオプションや特約をつけることで補償内容を広げていくことができます。補償内容が広がればその分安心感も増しますが、保険料は上がってしまいます。火災保険料を安く抑えたいのなら、本当に必要な補償内容は何なのか、しっかりと厳選しましょう。

【保険料をまとめて支払う】
火災保険の保険料は、まとめて払うことで安くなります。月払いより1年払い、1年払いより2年払い……というように、契約期間を長くし、まとめて払うと安くできます。途中で火災保険を解約する場合でも、払いすぎた保険料が戻ってきますのでご安心ください。

【自己負担額を設定する】
自己負担額とは、損害額のうち契約者が自己負担する金額のことです。つまり、火災などにより損害が生じた場合に、火災保険の保険料を満額受け取るのではなく、一部は自分自身のお金で補償するということです。

自己負担額を設定すると、もしもの時には自分自身も出費することにはなりますが、保険料は安くなります。

火災保険を銀行から勧められたら?

どの火災保険に加入するかは基本的に契約者自身で決められますが、住宅ローンを組む際に銀行から特定の火災保険への加入を勧められることがあります。たとえ銀行から特定の火災保険への加入を勧められたとしても、その勧誘に強制力はありません。勧誘を受けるメリットとデメリットを踏まえた上で、どうするか決めましょう。銀行から勧められた火災保険に加入するメリットには、以下のものがあります。

・団体割引を受けられる
・火災保険加入の手続きが楽

銀行が勧める火災保険に入る場合、その銀行から団体で保険に加入する形を取ります。そのため、団体割引が適用されて火災保険料が安くすむのです。また、銀行で住宅ローンを組む時に、同時に火災保険への加入手続きも進められるので、手間がかかりません。一方、銀行から勧められた火災保険に加入すると、次のようなデメリットが生じるかもしれません。

・選択肢が少ない
・専門的なアドバイスを受けられない

自分で火災保険会社を選ぶ際には、多くの保険会社からどれを選ぶか決められます。しかし銀行の勧める火災保険会社は2社〜3社程度であることが多いため、狭い選択肢の中から選ぶことになってしまいます。また、特定の火災保険への加入を勧める銀行担当者は、火災保険の専門家ではありません。

そのため、火災保険の補償内容や保険料について詳しく正確なアドバイスを受けられません。その結果、本当に必要な特約をつけ損ねてしまう危険性もあります。

住宅ローンの火災保険を解約するには?

一度火災保険に加入しても、保険の見直しや引越しなどに伴い途中で解約することもあります。こうした場合、どのような手続きをとればいいのか、払いすぎた保険料は返ってくるのかについて解説していきます。

火災保険の解約にはまず「質権」消滅の手続きを

火災保険を解約する時には、まず質権消滅の手続きをしましょう。質権消滅の手続きには、すでにご説明した通り「質権消滅承認請求書」が必要です。この書類に必要事項を記入したら、火災保険の保険会社に送付してください。詳しい手続きについては、一度損害保険会社の代理店に問い合わせることをおすすめします。

火災保険の契約期間中に解約しても、保険料は返金される?

特に長期で火災保険の契約をしていて、途中解約をすることになった場合、すでに払った保険料は戻ってくるのか気になりますよね。ご安心ください。火災保険の契約期間中に解約した場合、保険料は返金されます。この返還保険料は、未経過保険料とも呼ばれます。未経過保険料の金額は、次のように計算されます。

返還保険料(未経過保険料)=一括払い保険料×未経過料率係数

未経過料率係数は、火災保険会社によって異なるため、代理店にお問い合わせください。

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