【増築リフォーム】工事内容ごとの費用相場は? 建築確認申請は必要?

増築リフォームを検討する際、もっとも気になるのが費用面。さまざまな住宅リフォームの中でも増改築はとくに工事規模が大きく、費用も割高です。今回は、増築リフォームの費用相場を工事内容ごとにお話しするとともに、建築確認申請の必要性や注意点についてご紹介します。

増築と改築の違いとは何か?

増築とは、敷地内における住宅の延床面積を増やす工事のことです。既存住宅を2階建てにしたり、敷地内に「離れ」を建築したりする場合、増築にあたります。

増築工事はリフォームの一種で、建て替えに比べてコストが安く、工期も短い傾向にあります。ただ、住宅の状態によっては、既存箇所の修繕や補強が必要となるため、建て替えよりも割高になるケースは少なくありません。既存部分と増築部分で耐久性が異なる点にも注意が必要です。

一方の改築は、床面積は増減させずに、間取りのみ変更する工事を指します。例えば、リビングの柱を取りのぞいたり、和室を洋室に変更したりと、住宅の構造部分に手を加えるのが特徴です。いずれも増改築は、延床面積を増減させるか否かに違いがあります。

増築リフォームをする際に確認したいポイント|敷地面積と間取り

増築リフォームを検討する際は、あらかじめ敷地面積と間取りを確認しておきましょう。敷地面積は「土地面積」とも呼ばれ、土地を真上から水平に投影し、測定する面積のことです。なお、傾斜地・崖地にある土地の場合、実際よりも敷地面積が小さくなる傾向にあります。

一戸建てにおける間取りや敷地面積は、新築時に施工業者からもらう「建築確認申請書」で確認できます。また、敷地面積は「地積測量図」でも確認できますが、土地の売買や分筆時に初めて作成する図面のため、そもそも書類自体がないケースも考えられます。その場合、土地家屋鑑定士に地積測量図の作成依頼を行いましょう。

建築確認申請の方法とその意味

住宅の増改築は、建築基準法や地域条例による法令制限を受けることがあります。そのため、建築確認機関や自治体などに「確認申請」を行い、希望のリフォーム内容が法律・条例に抵触しないかチェックを受けなければなりません。ここでは、増改築における建築確認申請の方法や申請手数料についてお話します。

地域によっては建築確認申請が必須の場合も

対象住宅が以下に当てはまる場合、原則として建築確認申請が必要です。

・床面積が10㎡を超える増改築

・防火地域・準防火地域にある住宅

総床面積が10㎡を超える増改築は、行政への建築確認申請が必要です。防火地域・準防火地域など、都市計画法にもとづく「無指定地域」以外の住宅においても、確認申請が求められます。一方、無指定地域に所在し、床面積が10㎡を下回る増改築においては、建築確認申請が不要です。

また、建築基準法には、「建ぺい率」と「容積率」に制限が設けられています。この2つが上限を超えた際、増改築が認められません。建ぺい率とは、敷地面積に対する「建築面積の割合」のことで、「(敷地面積÷建設面積)×100」の計算式で算出します。例えば、敷地面積が100㎡かつ建設面積が50㎡の場合、「(100㎡÷50㎡)×100=50%」が建ぺい率となります。

一方の容積率は、敷地面積に対する「延面積の割合」を指します。容積率は「(敷地面積÷延面積)×100」で算出でき、その土地に「何階建ての住宅を建てられるのか?」を把握する目安となります。それぞれが自治体指定の上限に達しないよう、増改築の際は、工事範囲を調整する必要がでてきます。

また、地域によって建築確認申請が求められる理由は、エリア内の住宅を耐火建築物・準耐火建築物に制限することで、火災発生時の延焼拡大を防ぐためです。規制内容は自治体によるものの、例えば3階建て以上(地階含む)かつ総床面積が100㎡を超える場合は「耐火建築物のみ建築可能」、などのルールがあります。なお、防火地域・準防火地域の範囲は、各自治体の建築指導課や都市計画課で確認できます。

建築確認申請の方法と手数料

建築確認申請は、増改築を請け負うリフォーム会社や建築士に任せるのが一般的です。個人での申請も可能ですが、専門知識が必要だったり、手続きが煩雑だったりします。慣れない方では難しいため、専門家に任せるのが無難です。

個人で申請する場合は、以下の条件を満たすかチェックしてみましょう。

・自宅の検査済証がある

・構造計算ができる

・木造かつ延べ面積が100㎡以下

この中で、特に難しいのが構造計算です。構造計算は、エクセルなどの表計算ソフトを用いるのが一般的ですが、自治体に提出する構造計算書の記載項目は数十点にもおよびます。いずれも正確な数値が求められるため、作成に自信のない方はプロに任せましょう。

申請手数料については、中間検査申請費用や完了検査申請費用などを含めて1万~2万円が相場です。一方で、リフォーム会社に依頼する場合は、15万~25万円ほどの費用がかかります。基本的に申請のみを請け負う業者は少なく、リフォームと同時に「申請代行費」を支払い、対応してもらうのが一般的です。

増築リフォームの工事内容と費用・工期の目安

住宅の増築リフォームを検討する際、もっとも気になるのが費用面という方も多いのではないでしょうか。増築費用は住宅の構造や工事内容、増築する部屋の種類に合わせて変動します。おおよその費用相場は、以下の通りです。

・木造住宅:約35万円程度/1畳

・鉄骨住宅:約50万円程度/1畳

・2階部分の増築:約60万円程度/1畳

例えば、鉄骨住宅の1階に6畳の部屋を増築した場合は、約300万円程度かかります。ただ、部屋の種類によっては、配管工事費や設備費などがかかるため注意しましょう。ここでは、増築リフォームにおける工事内容と費用・工期をケース別でご紹介します。

キッチン、トイレなどの水回りを増築リフォームする場合

キッチン・トイレ・浴室・洗面所などの水回りを増築する場合、費用相場は約400万円程度です。この費用には、設備の新設費用や内装工費費、上下水道の配管工事費、電気工事費、本体費(システムキッチンやトイレなど)などが含まれます。ただ、あくまでも水回りの増設費用であるため、追加で壁・天井の修繕や間取り変更を行った場合は、別途費用が発生します。

主な工事内容として、ユニットバスの増設工事を例に挙げてシミュレーションしてみましょう。まず、浴室全体を解体し、基礎のみを残した状態にします。職人は既存の基礎を確認し、状態が悪ければ基礎を組み直したり、地盤の補強工事を行ったりします。

基礎工事が終わったら、配管工事と電気工事に移ります。新しく設置するユニットバスの規格サイズを考慮し、配管や電線の位置を調整します。その後、ユニットバスを搬入して組み立て、問題がなければ増設工事は完了です。

ユニットバスの増設工事の費用相場は、解体費を含めて約150万円程度です。ユニットバス本体のグレードや拡張する床面積によっては、約200万~300万円程度かかるケースも少なくありません。工期は5日~1週間が目安で、現場の状況により変動します。

部屋を増築する場合

1階部分や離れに部屋を増築する場合、木造住宅は1畳あたり約35万円程度、鉄骨住宅は約50万円程度の費用がかかるといわれています。ただ、施工面積が狭いほど単価が割高となるため注意しましょう。具体的な費用相場は、次の通りです。

上記は一般的な和室・洋室の増築費用です。水回りの増設とは違い、配管工事が不要な分だけ費用を抑えられます。ただ、増築するリビングにキッチンを設置するといったように、水回りの設備を追加する場合は高額になりやすいため注意しましょう。さらに壁・天井・床のグレードにこだわったり、収納を追加したりする際も工事費・材料費が上乗せされます。

次に、工事内容についてです。部屋の増築工事では、既存住宅の一部分を解体し、増築部分とつなぎ合わせる形をとります。新築工事と同じく基礎から建てるほか、接合部分に違和感が生じないよう、外壁や窓のリフォームも同時に行うのが一般的です。なお、工事範囲によりますが、1.5~2カ月が工期の目安となります。

増築方法はいくつかあるものの、もっともスタンダードなのが「差しかけ増築」です。差しかけ増築とは、既存の建物に対し、壁に寄せる(差しかける)形で増築する方法をいいます。部屋数を増やす際に有効で、解体部分が少なく、低コストで施工できるのが特徴です。このほか、より部屋を広くしたいなら「取り壊し増築」、平屋に2階部分を増築する場合は「おかぐら増築」なども採用します。

平屋を2階建てにするリフォーム

平屋を2階建てにするリフォームでは、先述した“おかぐら増築”という方法をとります。既存の屋根部分を撤去し、その上に2階部分を増築する形です。ただ、平屋の構造によっては、2階建てにするのが難しいケースもあります。

一般的な平屋は、1階分の重量に耐えうる設計となっています。“おかぐら増築”で2階部分を増やした場合、住宅全体の重量が増加し、それを支える1階部分の耐荷重が不足します。したがって、2階の増築工事とは別に、柱や基礎の補強工事が必要です。

費用相場は、補強工事の費用を含めて約800万~1000万円程度です。ただ、平屋の中には、2階の増築を前提に設計した家もあります。その場合、1階の補強工事が必要ないため、費用相場も約400万~500万円程度に抑えられます。工期は3ヶ月~半年が目安となるでしょう。

バルコニーを増築する場合

バルコニーを増築・後付けする場合、さまざまなパターンによって費用相場が異なります。以下の表をご覧ください。

過去の施工事例では、1階部分の増築を行い、その2階部分をバルコニー仕様にするケースが多くみられます。単に洗濯スペースが欲しい場合、簡易的なバルコニーの後付けが有効でしょう。

ただ、ある程度デザイン性を重視するなら、既存住宅と一体型のバルコニーを増設したり、1階部分の屋根をバルコニーに変更したりするのがおすすめです。なお、屋根が不要なこと、施工面積も比較的小さいことから、10日~15日間前後で工事が完了します。

増築リフォームと補助金、減税制度

増築リフォーム時、一定の要件を満たすと補助金がもらえたり、優遇制度を利用できたりします。補助金にはそれぞれ上限が設定されており、リフォーム費用の一部は国が補助してくれます。ただ、増築時に利用可能な補助金はそれほど多くありません。

リフォーム関連の補助金は、「耐震」「断熱・省エネ」「バリアフリー」の3種類に大別され、単に床面積を広げる増築では、適用されないこともあります。そのため、増築リフォームでは減税制度をメインに活用します。

例えば、申請から10年間(最長13年間)、ローン残債の1%を所得税から控除する「住宅ローン減税」があります。工事費用が100万円を超える増改築や省エネリフォーム、バリアフリーリフォームなどに適用される制度です。

上限こそあるものの、リフォーム費用が高額なほど有利になります。なお、所得税から控除できない差額は、住民税の一部から差し引かれます。住宅ローン減税に加え、工事費用相当額(上限250万円)の10%(最大25万円)を所得税から控除する「投資型減税」、翌年分の固定資産税を1/3に減税する軽減措置など、さまざまな優遇制度があります。検討中の増築リフォームでどの制度を利用できるか、リフォーム会社や金融機関に相談してみましょう。

増築リフォームをする際の注意点

増築リフォームには、建ぺい率や税金に関する注意点があります。まず、増築によって建物が大きくなると、都市計画法における「指定建ぺい率」を超える可能性があります。例えば、居住地域の指定建ぺい率が60%で、敷地面積が100㎡の場合、1階部分の床面積が60㎡の住宅しか建てられません。増築により指定建ぺい率を超えると、増築部分の撤去を命じられることがあります。

税金面においては、翌年分の固定資産税が高くなる可能性があります。これは増築にともない、住宅の延べ面積が大きくなるためです。増築リフォームでは、法律上のさまざまな制限・規制を受けるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。

固定資産税と登記について

住宅リフォームには、「固定資産税に影響するリフォーム」と「影響しないリフォーム」の2種類があります。おおまかな基準は、建築確認申請が必要かどうかです。一般的に建築確認申請が必要な大規模なリフォームになると、固定資産税が高くなるといわれています。

その反面、建築確認申請をしないリフォームは、「住宅の劣化にともなう改修」と判断され、固定資産税に影響しないと考えられます。なお、増改築によって住宅の床面積が変わった場合、登記の変更手続きが必要です。建物の種類・構造・床面積を変更した際は、リフォームから1カ月以内に手続きを済ませましょう。

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