コロナ禍で「わさびチューブ」が世界進出?油脂・調味料業界で成長が見込まれる2社

当経済研究所では、高付加価値化と多様化で成長が見込まれる油脂・調味料業界に注目しています。女性の社会進出など社会構造の変化に加え、新型コロナウイルスによる“巣ごもり需要”で、忙しくてもできる「時短」調理や、外食のメニューを家庭でも手軽に楽しむ「簡便」調理のニーズが高まり、市場成長をけん引すると考えています。

この分野で注目すべき企業について考えてみます。


食卓は“多国籍化”

例えば調味料は、従来の「しょうゆ」や「味噌」などの基礎調味料から、「つゆ」や「たれ」など加工度が高い商品への需要シフトが見込まれます。また、「麻婆豆腐」や「青椒肉絲」など「中華偏重」だった家庭内調理メニューは、タイ料理の「ガパオ」やスペイン料理の「アヒージョ」など「多国籍型」への移行が進展するとみています。

また、油脂に関しては、大手メーカーによる宣伝効果とともに健康志向の高まりで、従来のキャノーラ油・サラダ油などの汎用油からオリーブオイル・アマニ油などの高付加価値品へのシフトがさらに進むと思われます。

日本独自の調味料が世界へ

今後の変化としては、新型コロナウイルス感染症流行が、消費者の行動を新しい生活様式「ニューノーマル」にシフトさせることがあげられます。すなわち、外食から内食(家庭内調理)へのシフトが進展し、家庭用油脂・調味料需要を増加させ、定着することが見込まれます。

家庭用の油脂・調味料市場の成長率は元々、景気下降局面では生活防衛意識の高まりとともに伸びる傾向にあります。2020年は、新型コロナウイルス感染症流行の影響でプラス5%と予想しております。2021年以降も安定的に推移するとみています。

また、これまで外食への依存度が日本以上に高かったとみられる海外においても、内食へのシフトが鮮明になっています。料理の多様化とともに、日本式「カレールー」「練りわさび」「焼き肉のたれ」など日本独自の家庭用調味料の採用につながりそうです。

こうした動きは、海外展開に出遅れていた家庭用調味料メーカーにはチャンスとなるでしょう。

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投資妙味があるのはこの2社

こうしたなかで、当経済研究所では、スーパーマーケットなど小売市場への売上高構成比が比較的高い、昭和産業(2004)とヱスビー食品(2805)の2社に注目しています。売上高構成比は、昭和産業が約70%、ヱスビー食品が約80%と推定しています。

この2社は新製品による市場創出と、複数の製品の組み合わせによる提案力での差別化で成功が期待されます。

昭和産業に関しては、小麦粉、植物油、糖質の3つを有することによるソリューション提案力を武器に、これらを混ぜ合わせたプレミックスのシェア拡大が見込まれます。また、米油大手ボーソー油脂、ブドウ糖大手サンエイ糖化との生産効率改善などシナジー効果による収益改善が期待されます。

ヱスビー食品に関しては、不採算の岩手工場譲渡による調理済み食品子会社の収益改善、調理メニューの多様化による香辛調味料とスパイス&ハーブの販売拡大が収益に寄与すると考えています。

<文:企業調査部 吉田正夫>

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