厚生労働省、感染症指定医療機関の体制改善を勧告されるも行わず

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。7月13日(月)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、社会学者の西田亮介さんが“感染症対策の備えと実状”について述べました。

◆厚生労働省、医療機関の実態把握を怠る

厚生労働省が感染症指定医療機関の体制改善を2017年に総務省から勧告され、全国調査を行ったにも関わらず、結果をまとめていないことが発覚。総務省は、2016年に海外でのエボラ出血熱やMERSの感染拡大を受け、指定医療機関を調査。その結果、約23%が病床数通りの患者受け入れが困難と回答したことを踏まえ、2017年に厚労省に指定医療機関の実態把握を勧告、問題改善を求めていました。新型コロナウイルス感染が拡大する前に実態把握が十分にできなかったことが対応遅れの一因になったのではないかと指摘されています。

この件は少し前にメディアで小さく報道されていたそうですが、「すごく重要なニュースだと思う」と西田さん。さらに、「厚労省はなぜ、どのように対応できなかったのかを検証し、我々に公開していただかないと困る」と主張。

現在、新型コロナ感染者は都市部で多く見られ、実態把握できていなかったことが地方医療を圧迫してはいませんが、「今後、第2波、第3波が来るのであれば、蓋然性は高めていくことが大事。(感染症に)完全対応することはできないまでも、穴を埋めていく、できることをやっておくことが必要」と西田さん。

◆ムダの削減もいいけれど…冗長性も必要

本件の背景について、西田さんは「政策のアクセルとブレーキを同時に変な形で踏んでいるところがある」と言います。というのも、日本は感染症が蔓延することがなかっただけに、ここ数年は病床数と医療費の削減が医療政策のトレンドであり、既定路線だったとか。しかし、今は新たな局面を迎えており、「新型感染症が国内でも蔓延し、全国で国民生活が制約される経験をしているので、(政府には)これまでの在り方を改めて考えてもらいたい」と提起。

ただ、これは医療に限らず「この40年ぐらいは行政の予算削減、ムダ取りが日本の大きな政策の流れだった」と西田さんは指摘し、そこで明らかになったのは「冗長性を考えなければいけないこと」。「冗長性」とは、ある種マージンのようなもので「平時においては必要ないかもしれないが、有事に必要になるようなものに対し、既存の機能などを組み替えて適用できるようにしておくことが大事」と言います。

なお、厚労省の不備に関し、西田さんは「人手不足の問題もある」と推測。日本は先進国のなかでも人口あたりの公務員が少ないだけに、「そのあたりの対処も必要かもしれない」と危惧していました。

弁護士の横山智実さんは、「有事は定期的にやってくるもの」と言い、「コロナの件をきっかけに次に備える、次が絶対に来ることを政府が認識しておく必要がある」と訴えます。

一方、MCの堀潤は、最近、加藤厚労大臣の影が薄いのが気になるようでしたが、西田さんは「感染症対策の構造が内閣府の担当大臣が直接指揮をとる構造になっている」と不安はない様子。過去に新型インフルエンザが蔓延した際、官邸と当時の厚労大臣が対立し、対応のバラつきをもたらしたと指摘された経緯もあり、「むしろ内閣官房で一元化する方がわかりやすいかもしれない」と話していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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