熱戦続く

 九回表に押し出しで勝ち越し点を挙げて最後の守り。さあ、あとアウト三つ-。昨日の夕方、仕事そっちのけで中継の画面に見入ってしまった。熱戦が続く県高校野球大会▲懐かしいわが母校、勝てば39年ぶりのベスト4だ。野球部のみんなが帰宅部の筆者を甲子園に連れて行ってくれた「あの夏」以来の快進撃らしい。あ、年齢がバレる▲それはさておき九回裏。波佐見高の先頭打者が試みたセーフティーバントは当たり損ねの小フライになった。ふわふわと力なく上がった打球は、しかし、野手の届かない所にぽとんと落ちる。これがドラマの始まりだった▲この走者が二塁に進み、適時打でまず同点。さらにピンチは続き、決勝打がキンと金属音を残して外野の間を抜けていった。あっ。思わず声が出た▲今年の高校野球、県大会を勝ち進んだ先に甲子園への切符はない。それでも、さっきまでのナイスゲームが、負けた瞬間に「最後の試合」になる重さはいつもの夏と同じだ。勝利の女神の気まぐれや魔物のいたずらも健在▲ところでこのゲーム、実は印象に残ったのは、強い雨で水浸しになったダイヤモンドをせっせとスポンジで乾かす試合前の運営補助の生徒の姿だ。ほら、野球できるよ-そんな声が聞こえる気がした。予報の通りなら梅雨明けも近い。(智)

 


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