十勝の底力 次の10年へ 食から広がる産業・人材 けいナビ

今回は、2週連続で放送している「十勝の底力」の後編。北海道・十勝が誇る「食」から広がる産業や研究、担い手に注目する。

「とかち夢パン工房」。ここはベーカリーではなく、帯広畜産大学に設けられた製パン研究施設だ。製パン大手・敷島製パンから社会人入学している北原さんは、「日本の大学でこれほど製パン設備が整っている大学は数が少ない」と話す。地域の強みである農業を中心に、世界に価値を発信するための取り組み「フードバレーとかち」の一環で、帯広畜産大学は、2012年に敷島製パンと包括連携協定を締結。北海道産のパン用小麦「ゆめちから」を活用した新しいパン開発などの共同研究を続け、12件の特許も出願している。

研究成果の一つが「乳酸菌」

研究成果の一つが、乳酸菌。乳酸菌を加えて作ると、しっとりと柔らかく、ボリューム感のあるパンになるという。敷島製パンは、北海道産小麦の活用に積極的で、以前から「超塾」シリーズの原料の一部に「ゆめちから」を使っている。共同研究を統括する高田教授は、大学の研究成果を社会に還元していくために、民間企業との連携は重要だと話す。

番組のために作ってくれた試作品。乳酸菌入りのパンの方が膨らんでいるのが分かる

続いて、鹿追町。この町の住民はかつて、ある悪臭に悩まされていた。それが、家畜のふん尿。その対策として2007年から始めたのが、ふん尿を使ったバイオガスプラント。現在2基のプラントで、1日に約4,000頭分を処理している。

鹿追町のプラントの特長は、発電によって生じる「余剰熱」をさまざまな形で産業に生かしている点だ。その一つがチョウザメの養殖。地下水を18度ほどに加温した水槽で、約6,000匹を育てている。残念ながら、キャビアはまだ生産できていないが、年間約100匹が主に町内の飲食店に出荷され、町の特産品になっている。 

養殖のチョウザメ

次は、帯広市を拠点に45年続く珈琲専科ヨシダ。市内と音更町に合わせて6店舗を展開する、従業員20数人の会社だ。本業のコーヒー販売ではなく、ある事業が今、この会社の柱に育っている。

それが、野菜の加工。焙煎機で黒豆やダイコン、ニンジンなど10種類以上の野菜を焼いているという。大手お茶メーカーや農家などから、毎月数件の依頼を受けて野菜を焙煎。飲料やお菓子の原材料に使われているという。今では会社の売り上げの2割を占めている。

きっかけは、「フードバレーとかち」の人材育成事業に参加したことだった。三野宮副社長は「人口が減ればコーヒーの需要も減る。世の中が6次化ブームでやりたいと思っていたところ、事業に後押しされた」と話す。野菜の焙煎は、7年前に開発したお茶「飲む野菜シリーズ」が始まり。しかし商品は思うようには売れず、2,000万円以上かけた一連の設備投資分を回収しようと、新たに「十勝糖彩」も開発。評価は高かったものの、売り上げにはつながらなかった。

野菜を焙煎した商品「十勝糖彩」

ただ、その焙煎技術に注目が集まり依頼が来るようになった。この道40年以上の珈琲焙煎士、高橋専務が野菜も担当。乾燥させた野菜は水分の量が毎回異なり、焼き加減の調整は難しい。三野宮副社長は「本当に伸び始めたのはここ1年~2年。やっと軌道に乗ってよかった」と話す。

三野宮厚子副社長

一方で、当時社長だった三野宮さんは後継ぎの不在に悩んでいた。東京の会社へのM&Aを考えていたが、地元の建設会社のオーナーで観光施設「とかちむら」なども経営する曽根社長が「地域の企業は地域で守ろう」と声をかけた。三野宮さんは去年、全株式を売り渡し、曽根社長に経営権を譲った。三野宮さんが現場として残る一方、曽根社長は財務面を支え経営に徹するという。

最後は帯広市から北へ、車で30分ほどにある士幌町の道の駅「ピア21しほろ」。3年前にリニューアルオープン。以降年々利用者が増え、昨年度は40万人が訪れた。人気の秘密は観光施設でありながら、地元の住民を主なターゲットにした店づくりだ。

この道の駅の運営トップ、堀田社長。夫婦で農家を営みながら、3年前にこの駅を運営したいと会社を立ち上げた。しかし、最初から人気があったわけではないという。徹底して士幌を中心に十勝にこだわった商品を増やした。食材やパッケージデザインなど十勝で生み出せるものは十勝に。オープン以来、約50商品を手掛けた。

この日堀田さんのもとに集まったのは、地元士幌高校を卒業した入社3年目の山部さん。取引先で同じく士幌高卒の前多さん。地域おこし協力隊の古茂田さん。ことし8月下旬に発売予定の新商品の打ち合わせだ。

新商品に使うのはカボチャ。町内の農家が動物の食害で大量に捨てざるを得ないと悩んでいたのを聞きつけ、買い取った。 堀田さんによると、買い取った1.2トンのうち、製品になったのが800キロだという。この商品開発は、このメンバーだけではなく士幌高の生徒も加わってもらっている。すでに堀田さんを中心に数回授業を実施。堀田さんは山部さんや前多さんのように、将来的に地元に残る選択肢を少しでも広げたいという。

十勝の「食」を中心に広がる、産業と人材。まだまだ成長の可能性を秘めている。

(2020年8月1日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より) 過去の放送はYouTube公式チャンネルでご覧になれます。
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