退職のベストタイミングは65歳ではなく64歳11ヵ月?意外に知らない雇用保険のこと

60歳で定年になって、その後は給料が半分になったけど、再雇用で頑張ってきた。それももうすぐ65歳だから終わり。まだまだ働けるのになぁ〜、再就職先探そうかな? と思っているあなた。

「65歳で退職すると損をします!」

えっ、と驚くかも知れませんが、本当です。

65歳の1ヵ月前に退職をすると、数十万円の得になるかも知れません。得になるのは、65歳以降も新しい仕事を探しながら働きたいという人です。

65歳は、まだまだ元気です。まだまだ働ける年齢ですし、逆に働かないと老後資金が心配な人も多いのが実情ではありませんか? 2021年より「高年齢者雇用安定法」が改正になり70歳までの雇用を確保することが努力義務化されます。まだまだ働けると思います。今回は、65歳で賢い退職の方法を含めて雇用保険についてお話しをしましょう。


65歳を境に失業給付の制度が変わる?

一般的には、失業給付とか、失業手当などと言っていますが、雇用保険においての正式な呼び名は「基本手当」です。失業給付(基本手当)は、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探して1日も早く再就職をしてもらうための給付金です。

この制度は65歳未満と65歳以上では、大きく違ってくるのです。65歳未満に退職した場合は、「基本手当」が支給されます。65歳以降に退職をすると「高年齢求職者給付」に変わります。

ちなみに雇用保険の基本手当と65歳前の特別報酬の老齢厚生年金の両方を受け取ることはできません。「基本手当」と「高年齢求職者給付」の違いを見てみましょう。

65歳未満の基本手当は最大150日

基本手当の給付額は、賞与を除く退職前6か月の合計を180日で割った金額のおよそ50〜80%(60歳〜64歳については45〜80%)です。給付日数は、離職理由と勤続年数で変わってきます。定年退職や契約期間満了、自己都合での退職の場合は、下記の通りです。

・雇用保険の被保険者だった期間:10年未満=90日
・雇用保険の被保険者だった期間:10年以上20年未満=120日
・雇用保険の被保険者だった期間:20年以上=150日

例を出して説明をすると、基本手当日額が5000円で、20年以上勤務していたとしたら、総額75万円の給付を受け取ることができます(日額5000円×150日=75万円)。

65歳以降は最大50日に変わる!

ところが65歳で退職をすると「基本手当」ではなく、「高年齢求職者給付」に変わります。「高年齢求職者給付」とは、65歳を過ぎた人のための失業保険です。給付日数は、下記の様に変わります。

すると雇用保険の被保険者だった期間:1年未満=30日分雇用保険の被保険者だった期間:1年以上=50日分

前項の例と同じ基本手当日額が5000円だとして、1年以上の勤務していたとしたら、総額25万円となります(日額5000円×50日=25万円)。つまり同じ日額5000円の場合なのに、65歳の前と後では50万円の差が出ることになるのです。

64歳11ヵ月で退職をするのがベスト

では、どうするのが一番いいのかというと、65歳の1ヵ月前に退職するのがベストです。つまり64歳11ヵ月での退職です。早すぎた場合、65歳までは基本手当と年金を併用で受け取ることができません。

それに、できるだけ働いた方が厚生年金も増えるので、65歳の年金の受給額も増えます。この場合、退職理由は自己都合になります。そのため基本手当を受け取るのは3ヵ月の給付制限があるので、65歳になってからの支給開始になります。

そのかわり、年金と基本手当の満額の両方を受け取ることができます。

65歳以降も働くメリットとは

雇用保険のメリットは、失業保険だけではありません。他にもさまざまなお得な制度があります。たとえば、教育訓練給付金は、再就職に役立つ資格を取るための資金を補助してくれます。教育資金給付には、一般教育訓練と専門実践教育訓練、特定一般教育訓練の3種類あります。

一般教育訓練は、支払った授業料の20%(支給上限10万円)、専門実践教育訓練は、支払った授業料の50%(支給上限年40万円)。特定一般教育訓練は、支払った授業料の40%(支給上限20万円)が給付されます。

対象となる講座もとても幅広く、介護、税理士、プログラミング、簿記、英語検定など約1万4000講座くらいあります。長く働くためにも複数の資格を取ることで、パラレルキャリアを持つことができます。ぜひ挑戦してみてください。

また、雇用保険には、就職促進手当、高年齢雇用継続給付、介護休業給付などがあります。2025年から段階的な廃止が決まっている「高年齢雇用継続給付」は、60歳までの賃金に比べて、60歳から65歳までの賃金が75%未満に低下した人にでる給付金です。

介護休業給付は、一定の条件を満たすことで、家族の介護をするために、仕事を休んだ場合には、「介護休業給付金」を受け取ることができます。支給額は賃金の67%で最大93日分を受け取ることができます。

長寿社会なので、60代になって再雇用で働いているときに、親は80代・90代というケースもあるのではありませんか? そんな時にこの介護休業給付というのは、とても役に立ちます。

雇用保険には、ここで紹介できなかったさまざまな制度があります。定年を迎えて、雇用保険に加入できる期間も限られてきています。一度使える制度はないかと、調べてみてはいかがでしょうか。自分に役立つお得な制度が見つかるかも知れません。

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