思春期症候群とは?思春期に起こりやすい悩みや心の病

思春期の子供の元気がなかったり、イライラしていたり、言うことを聞いてくれなくなると、親としては悩むものです。思春期の子供の心と向きあうためにも、思春期にはどのような心の変化が起こったり、悩みを抱えるかを知っておくと良いでしょう。思春期症候群や、思春期に起こりやすい悩み、心の病についてもご紹介します。

思春期に起こりやすい心の変化

思春期とは、小学校高学年ごろ~18歳くらいまでのことをいいます。まずは思春期の子供に起こりやすい心の変化を見てみましょう。

不安を感じやすい

思春期の子供たちは、何かと不安を感じやすくなっています。身体だけでも大きな変化を迎え、不安になります。自分が大人へと成長していくことを実感する上での不安もあるでしょう。

自我が確立されてくる思春期は、親から離れたいという意識も芽生えます。一方で親から離れることに、不安も感じています。親から離れる不安を抱える中、友人と一緒に過ごすことで安心感を得るため、友人との関わりが増えてくるでしょう。

友人と過ごす時間が増え、友人の影響を受けやすくなるのが思春期の特徴ですが、友人関係のトラブルが起こる場合もあります。友達関係の悩みや、友達とのケンカ、いじめといった可能性もあります。

友人関係が深くなる一方で、それまで育った家庭とは違った新しい価値観に出会うこともあります。自分の家で当たり前だったことが、他人の家庭では当たり前ではないことに、不安を感じる子もいるでしょう。

乱暴な言葉遣いになる

それまで何でも話してくれて、温厚だったわが子が、急に反抗的な態度をとったり、乱暴な言葉遣いをしたり、無視をしたり、服装が乱れるのも思春期の特徴です。

いい子でいた子供は、自己を確立する過程において、反抗的な態度をとりやすくなることもあります。また、自意識の高まりによって、「自分をよく見せたい」という気持ちも高くなります。オシャレをしたり、髪型に凝ったりというような変化もみられるでしょう。

実は外見を気にし始めることは、アイデンティティの形成のためには重要であり、自然なことともいえます。校則に反したり、度が過ぎたものでなければ、過度に反応し過ぎることはないでしょう。

参考

思春期のこころの発達と問題行動の理解|厚生労働省 e-ヘルスネット

思春期のこころを育むためのガイド|京都市こころの健康増進センター

自分探しを始める

「第二の誕生」ともいわれる思春期。「自分はどんな人間か」「自分は何をして生きていくのか」といった自分探しを始める時期でもあります。

自分について考えるとき、やりたいことが見つかったり、好き嫌いが分かる一方で、客観的に見た自分の評価を見る時期でもあります。「思ったよりも勉強がうまくできない」「あの子のように友達と上手に話せない」「努力しているのに背が伸びない」など、周囲と比べて落ち込むこともあるでしょう。

思春期は子供に何が起こっている?

思春期には、男の子も女の子も体や心に変化が訪れます。男の子なら声変わりをしたり、ひげやわき毛、性毛が生えたり、精通が起こります。女の子もわき毛や性毛が生えたり、胸がふくらんだり、月経が始まります。

身体にこれだけ大きな変化が起こるのですから、心身ともに変化が起こっています。

ホルモンバランスが崩れやすい

思春期は「第二次性徴期」といわれるように、体の中の性ホルモンが活発に動くことで変化がみられます。性ホルモンが急激に分泌されるため、ホルモンバランスも崩れやすくなります。

セロトニン神経もうまく働かなくなるため、不安になりやすくなります。ホルモンの面から見ても、不安になったり、怒りっぽくなるのは仕方ないことを知っておきましょう。

参考

平成27年度思春期のここが肝心!~思春期の理解と関わり方~|石川県教育委員会

自己を確立し始める

自分らしさを模索し、自我が確立されてくる思春期は、親から離れたいという意識も芽生えます。それまで親の言いなりでいた子供が、自分の考えを持ち、行動したいという気持ちを持ち始める時期です。親から見るとそれが反抗的な態度に見えてしまうこともあるでしょう。

思春期特有の心の病とは?

思春期には心に悩みを感じる一方で、心の病を抱えることもあります。思春期特有の心の病を見てみましょう。

摂食障害

女の子に起こりやすいのが、摂食障害です。思春期には自分の体型やスタイルを気にする女の子が増えます。体型にこだわるあまり、食事を摂ることを拒否したり、逆に食べ過ぎるなどの症状が起こります。

「拒食症」の場合、心が食事を拒否してしまうので、病気などがあるわけではないのに異常なやせ状態が何か月も続きます。しかし自分のやせ状態を異常だと認識せず、むしろ女性らしいふっくらした体形でなくなることに対して嬉しく感じてしまうのです。

「過食症」は拒食の最中に見られることが多く、無茶食いを繰り返す症状が出てしまいます。食べた後はしばしば気分が落ち込み、絶望感や葛藤を感じます。

思春期妄想症

思春期妄想症とは、「自分の目つきが怖いから相手が不快な思いをしている」といった自己視線恐怖、「みんなが自分を臭いと思ってる」といった自己臭症、「自分の鼻の低さが気になって一日に何度も見てしまう」といった醜形恐怖により対人関係を避けたり、引きこもるものです。

統合失調症

100人に1人弱の割合でみられる、思春期後期~成人期に多い病気です。幻覚や、「盗聴器が仕掛けられている」といった妄想、「自分の考えが相手に漏れている」といった自我障害、話にまとまりがない思考障害などの症状があります。

思春期うつ病

思春期うつ病は、「やる気がなくなる」「悲しくなる」といった気分の落ち込みが出たり、不眠、食欲低下、イライラ、集中力の低下といった症状が起こります。ほかにも体の不調を訴えたり、アルコールやドラッグ、自殺企図などがみられる場合もあります。あまり知られていませんが、実は思春期の2~8%の子供にみられるといわれています。

そのほかの症状や病は?

そのほかにも思春期にみられる病気や症状を見てみましょう。

うつ病のほかにも、躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害(躁うつ病)があります。躁状態がひどくなると、買い物をしまくったり、友人に電話をかけて誇大妄想的な話をするなどの症状が出ます。

10人に1人の思春期の子が強い不安に悩んでいるといわれています。その中でも日常生活に支障をきたす場合、「不安障害」のケースがあります。

不安障害にはいくつか種類があります。少人数のグループでいるときに、自分の発言や行動がその場にふさわしくなく、嫌われているのではないかと思って避けるのが「社交不安障害」です。日本では以前対人恐怖といわれてきました。

突然動悸がして息苦しくなり、死ぬのではないかと不安にかられ、やがて治まりますが、この発作を繰り返すのが「パニック障害」です。なかなか寝付けなかったり、夜中に何度も起きたり、早朝に目が覚めてしまう「不眠症」もあります。

このように、思春期にはさまざまな症状や心の病がみられることがあります。

参考

思春期のこころの病“悩み”と“病”の見分け方|NHK厚生文化事業団

親ができること

思春期で心が揺れ動く子供に対して、親は何ができるでしょうか。

話を聞いてあげる

今までは子供に指示を出して言うことを聞いてもらっていたという人もいるでしょう。大人に向けて成長していく思春期で大切なのは、子供の話を聞くことになります。

子供が自分の考えを話してきたら、まずは聞いてあげましょう。いつまでも子供扱いをするのではなく、一人の人間として子供の話に耳を傾けましょう。

考えが幼いと感じることや、あぶなっかしいと思うこともあると思います。それでも最初からすべて否定したり、頭ごなしに叱ったりしてしまうと、子供は自信をなくしてしまいますし、反発心も強くなります。子供が大人になっていくお手伝いをするという視点で、まずはいったん話を聞いてから親も話をしましょう。

休むことが大切

ただでさえ心が不安定な思春期ですから、子供自身も安心感を心の中では求めています。子供が弱気になったり、悲しんだり苦しんでいるときには、寄り添ってあげるといいでしょう。家庭が子供にとって安心できる場所であることも大切です。

子供が悩んでいたら、自分の体験談や失敗したこと、悩んで乗り越えたことなどを話してもいいでしょう。「悩んでいるのは自分だけではない」と思えると、子供も勇気が出てきます。

心配なら受診も選択肢

ただでさえ心に揺れの多い思春期ですから、子供の悩みが人生の悩みなのか、心の病なのかを見分けるのは親でも難しいところがあります。親としては判断に迷ってしまうものですが、両方の可能性を考えながら、子供の様子をよく観察してみましょう。

受診の目安というのははっきり言えるものではありませんが、心の病は本人も苦しむので、受診した方が良いでしょう。NHK厚生文化事業団の「思春期のこころの病“悩み”と“病”の見分け方」では、受診の目安として次のような状態を紹介しています。

本人が感じている苦痛がとても強い。学校生活や家庭生活に、著しく支障をきたしている。社会とのかかわりがほとんどない。

(引用元:思春期のこころの病“悩み”と“病”の見分け方|NHK厚生文化事業団)

授業に出られなかったり、お風呂に入らない、痩せてきて体力がないなど、学校や家庭生活に支障をきたしている場合は考えても良いでしょう。また、本人がとても苦痛を感じていたり、部屋から出ないでずっと自分の部屋にいる場合も受診を考えてもいいでしょう。一方で、親しい友人がいたり、好きなことに没頭するなど意欲的な場合は、見守ってよいこともあります。

まとめ

関わり方や、判断が難しい思春期の子供の心。親としては接し方に悩んでしまうこともあるでしょう。親自身も休みを取りながら、揺れ動く心を持つ思春期の子供と一緒に過ごしていきましょう。

参考

思春期のこころの病“悩み”と“病”の見分け方|NHK厚生文化事業団

思春期妄想症|メンタルクリニックいたばし

思春期のこころの発達と問題行動の理解|厚生労働省 e-ヘルスネット

平成27年度思春期のここが肝心!~思春期の理解と関わり方~|石川県教育委員会

思春期のこころを育むためのガイド|京都市こころの健康増進センター

思春期症候群とは|井之上整骨院

思春期に多い心の病気|ひよしの丘クリニック

拒食症・過食症・摂食障害・食行動異常の心理学|心理学総合案内こころの散歩道

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