39歳とは思えぬ和田毅の快投 奪三振ショーを生んだ思想「練習を落とす考えない」

西武戦に先発し、7回途中まで2失点と好投したソフトバンク・和田毅【写真:福谷佑介】

和田を支える情熱「今の自分を少しでも日々超えていけたらな、と」

■ソフトバンク 4-2 西武(29日・PayPayドーム)

ソフトバンクは29日、本拠地PayPayドームで西武と戦い、4-2で快勝して3連勝とした。この日の勝利の立役者は、先発した和田毅投手。序盤から三振の山を築き、7回途中まで2失点と好投して今季3勝目をマークした。

初回に2点、2回に1点と序盤で3点のリードをもらった39歳左腕は序盤から飛ばした。「今日は真っ直ぐがすごく良かった」と調子は上々。初回に2つの三振を奪うなど、奪三振ショーを展開した。5回に木村にソロを浴びたものの、6回まで毎回の9奪三振。その全てをストレートで奪った。7回に2点目を失ったところで降板となり、自身4年ぶりとなる2桁奪三振こそ逃したが、圧巻のピッチングだった。

この日の最速は146キロをマーク。普段は140キロ台前後がほとんどだが、この日は「今日の感じだったら145くらいは出るかなと思いましたね。146はビックリしましたけど」と言うほどに調子が良かった。現在39歳。同級生たち“松坂世代”は今年40歳になる。そんな中で衰え知らずの投球を披露して見せた。

この投球に目を細めたのが工藤公康監督だ。自身も47歳まで現役を続けた指揮官は「彼の日頃からの練習、取り組み、やっていることがしっかりとボールに現れているのかなと思います。ただ考えれば落ちないのではなくて、きついトレーニングを積み重ねない限り、スピードは落ちていく。自分に厳しくやってきたからこそ、今日のようなピッチングができる」と語る。

確かに和田の練習量は凄まじい。1月に行われる自主トレでも、若い選手たちがその練習についていけないほど。ひと回り以上、歳が離れた選手たちが悲鳴をあげる中で、ベテラン左腕は何食わぬ顔で練習をする。ランニングメニューを行っても、若い選手たちにヒケを取らないどころか、若手以上に走るのだ。

衰え知らずの向上心「もっと変化球の使い方は勉強しないと」

和田はこの日の試合後、さらりとこう言った。

「トレーニングを落とそう、年相応のトレーニングをしようという考えは僕にはないので。年齢に逆らうわけじゃないですけど、僕の場合は追い込んでいかないといけない。維持しようと思うと衰えていくのは当たり前なので。上を目指すというか、今の自分自身に負けたくない、今の自分を少しでも日々超えていけたらな、と。それでも維持か落ちていると思うので、常にそういう気持ちは持っています」

とにかく自分を徹底的に追い込む。それが和田の若かりし頃からのスタイルである。年齢を重ねたからといって、そのスタイルは変えない。いや、むしろ年齢を重ねたからこそ、そのスタイルは変えられない。厳しいトレーニングを重ねることだけが、パフォーマンスを高める、維持するために必要なことだと信じている。

「本当、あんなピッチングがまだできるんだな、とビックリしました。できるということは、まだ可能性はあると思う。こういうピッチングができているうちに、もっと変化球の使い方は勉強しないと。変化球を簡単にホームランにされたのは反省しないといけない。今日の感覚を毎回出せればいいですけど、こうは上手くいかないと思うので」

こう語るだけの向上心が39歳の胸にはある。まだ進化を諦めない和田毅。これほどまでに頼もしいベテランがいることが、ソフトバンクにとって大きなことだろう。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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