猟奇殺人事件を刑事と霊媒師が追う! オカルティックなロシア産ミステリー『殺人狂騒曲 第9の生贄』

『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

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『殺人狂騒曲 第9の生贄』は、過去にトラウマがある刑事と霊媒能力を持った不思議な女性が、猟奇連続殺人事件を追うロシア産のスリラーです。タイトルからしてベートーベンの「第9」とかけているのかなと思ったのですが、音楽的要素は皆無。ただし、冒頭は「え、これインディ・ジョーンズ?」的な流れでちょっとびっくりします(笑)。そう、オカルト色が強くアクション・シーンも多いのです。

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『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

19世紀のロシアを舞台に、謎の殺人鬼がある儀式のために殺人をくりかえす。被害者はいずれも女性で、遺体からは心臓や舌が抜かれていたり、手足が切り取られていたりと残虐そのもの。刑事は遺体の中に五芒星(点5つを結ぶと星になる)のシンボルがあり、また被害者の遺体の置かれていた場所を地図上で結ぶと五芒星になることから、霊媒師の女性に助言を求めます。

『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

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彼女は、五芒星にちなんで5人殺した後は、水・土・空気・火の4つのエレメントにちなんだ殺人が起こり、つまり9人の犠牲者が出るまで殺人は続くと予知します。そして、この事件には恐るべき真実が……。

『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

その殺人の儀式が、古代からの開けてはならない“魔書”に基づいて行われるので、ちょっと『死霊のはらわた』(1981年)風。また、起こる殺人が魔書に描かれた絵の通りに再現されるので、このへんは『ミッドサマー』(2019年)。なにか儀式的に連続殺人事件が発生するのは『セブン』(1995年)。かつてイタリアのホラー映画の巨匠、ダリオ・アルジェントが得意としていたホラーとミステリーの中間のような映画です。

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『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

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こう書くと、すごくスプラッタ(血しぶき)映画のように思われるかもしれませんが、バイオレンスなシーンは控えめ。儀式的な加工をされた遺体は登場しますが、被害者が殺されるところを延々と映すようなシーンはあまりない(一か所だけメインストーリーとはあまり関係ない殺人シーンがありますが、そこが一番怖い)。気楽に楽しめる“猟奇ミステリー”という感じです。

『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

あえて“ホラー”と書かなかったのは、そんなに怖い映画ではないからです。ビジュアル的に恐ろしいシーンは少ないのと、主人公の2人が半ば死を恐れていない刑事と、絶えず生と死を行き来している霊媒師なので、彼らが根本的にこの殺人事件を“怖がっていない”んです。“殺人鬼に狙われる普通の娘”視点で描けばもっとホラーになったでしょうが、2時間ドラマのサスペンス風に謎解きを楽しんでいけばOK。もし片平なぎささんがサイキックだったら? みたいな感じ(笑)。

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ただロシア映画だけあって、アメリカ映画とは明らかに違う独特な空気感があります。主人公の刑事がほとんど笑わず、一緒に行動を共にする霊媒師女性に対しツンデレ的な行動をとるので、なかなかこのキャラの本性がわからないのですが、そこが“19世紀のロシアの刑事”っぽいかも? 本編のもう一人の主役、女霊媒師オリヴィアはとても美人ですが目が印象的で、本当に妖力がありそう。この2人のキャスティングが絶妙でした。

『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

クライマックスの、殺人鬼がオリヴィアに牙をむくあたりから俄然盛り上がってきます。この刑事と霊媒師のコンビで続編があってもいいな、と思いました。

『殺人狂騒曲 第9の生贄』©Central Partnership

文:杉山すぴ豊

『殺人狂騒曲 第9の生贄』は2020年7月31日(金)よりシネマカリテにて公開

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