40歳社会人大学院生「目指す仕事に転職したいが学費と転職後給料ダウンで老後が心配」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、40歳会社員の男性。心理系の職業への転職を目指し、現在大学院で勉強中とのことですが、学費と転職後の給料ダウンで老後が心配だそうです。FPの横山光昭氏がお答えします。

40歳、独身男性です。会社員をしながら、通信制の大学院で心理学の勉強をしています。将来的には転職し、新しい仕事で成功したいと思っています。

大学院は2年で卒業で、学費は年間100万円ほどかかります。昨年分も、今年の分も、貯金から一括で支払いました。そのため、現在の貯金は230万円ほどに減っています。仕方がないと思うのですが、先日、40歳の誕生日を迎えたことを同僚と話していると、「初老に入ったな」といわれました。その時から急に、老後資金が足りるのかと不安になりました。学費で使ったとはいえ、貯金があまりに少ないと思うのです。

あと半年ほどで卒業なので、今後学費はかかりません。ですが、転職するとなると初めての職種になるので給料は安くなるでしょうし、今以上に減ってしまう可能性があると思っています。その一方で、新しい職種で成功したい気持ちも強く、転職をあきらめることはできません。

これから収入が減ってもお金を貯めていけるような方法はないでしょうか。今のところ結婚の予定はなく、生涯独身だと思いますので、老後に生活できるだけのお金を貯めたいです。

【相談者プロフィール】

会社員、40歳、独身

手取り月:38.2万円

年間ボーナス:約180万円

貯金:約230万円

【支出状況(総支出額:37.9万円)】

住居費:9.5万円(住宅ローン・管理費)

食費:7.3万円

水道光熱費:1.8万円

通信費:1.7万円

日用品代:0.8万円

教育費:1.8万円(大学院関連)

被服費:3.1万円(主にクリーニング代。洗濯は下着以外はクリーニング)

交際費:4.8万円

その他:4.1万円

使途不明金:3万円


横山: 40歳で大学院で勉強しているとは、努力家ですね。なかなかできることではありません。学費を払い、一時的に貯金額が減っているだけと思えますが、毎月の収入からあまり貯金ができていないことが気になります。学費支払い後の貯金額から見ると、ボーナスからもあまり貯金ができていなかったように思えます。支出の仕方を改善し、余剰金がしっかり残せるやりくりができることが、お金を貯められるようになる近道です。

まず支出の把握し「浪費」を見直す

お金を貯めたいということなら、まずご自身の支出の全体像を把握し、そこからムダ支出を見つけることをしなくてはいけません。自分が毎月何にいくら使っているのかお分かりでしょうか。

今回は上記のような家計表となりましたが、これが毎月同じような感じなのか、今回が特別、食費や交際費、被服費が多いのかがわかりませんから、3カ月ほどノートなどに支出を記録してみましょう。そうすると自分のお金の使い方の傾向がわかるはずです。それが分かってから、多すぎる、無駄だといえる支出をカットしていきましょう。

例えば、今回は食費が一人暮らしとしては多いと言える金額です。もし外食ばかりで高くなっているのであれば外食の仕方を変えたり、総菜類や冷凍、レトルトの食材を取り入れるなど、完全な自炊ができなくても工夫はできるはずです。

洗濯は下着以外はクリーニング任せという事ですが、これも同じです。高いと思えるのであれば、アイロンの要らない衣類は自分で洗濯するなどできるはずです。交際費として飲み会が多ければ、全部に参加する必要があるのかどうかを考えて参加の頻度を調整することも必要です。惰性で参加する飲み会代は「浪費」と言えます。また、使途不明金もできるだけ少なくしましょう。

このように、自分にとって価値のある支出はしっかりとする一方で、価値がない、無駄だと思えるものは減らしたり削減したりするというメリハリが、お金を貯める近道です。

今考えられる必要な老後資金は?

相談者さんは現在40歳なので、将来の年金受給額ははっきりしませんが、どのくらいの老後資金が必要なのか考えてみましょう。

厚生年金に40年加入した、平均的な給与をもらっている人の65歳からの年金受給額は、男性で約18万円です。住宅ローンの返済が終わったとして生活費を見てみると、毎月の生活費は

年金18万円-(今の生活費37.9万円-住宅ローン9.5万円)=△10.4万円

10万円以上足りません。ということは、1年で約125万円、10年で約1250万円を貯金から補わなければならないということです。30年となると、約3750万円も必要になってしまいます。

もし支出を見直して毎月の不足額が5万円になったとしたら、1年の補てん額は60万円、30年では1800万円です。支出の見直しをすることは貯金を増やすことのほかに、このような効果もあるのです。

生活費以外の介護医療費も念頭に

ただ老後は生活費を補えればよいというわけではなく、生活以外の介護医療費など生活以外で必要な支出も予定しておかなくてはいけません。その分で500~1000万円ほどを上乗せさせたいところです。

こう考えていくと、もし、支出の削減が5万円ほど可能だと見込めるのであれば、生活の補てん額として1800万円、それ以外で500万円の2300万円を目指して貯めていくとよいでしょう。もし退職金が出るのであれば、それも老後資金に含めて考えて構いません。

当然ですが、必要な生活費が減ると、生活費の補てん額はもっと減ります。年金収入額に支出が近づくほど生活費の補てん額を少なくできます。

老後資金作りにはiDeCo等も活用を

生活費を削減できると、老後までに準備する金額が少なくてすむことがお分かりいただけたでしょう。では、その老後資金を貯めるにはどうするとよいでしょうか。

まずは生活費を少なくし、余剰金を貯めることです。ただ、貯めるといっても今は超低金利の時代です。貯金をしていてもなかなかお金は増えません。ですから貯金をしつつ、一部を投資しして、効率よく増やしていくことを検討しましょう。

投資は、iDeCoやつみたてNISAなど、国が勧める非課税制度を利用することをお勧めします。iDeCoは、会社員は企業年金の加入状況により最大2万3000円を積立投資できます。60歳まで引き出せないという条件がありますが、掛け金が全額所得控除、運用益が非課税になるという制度です。今では60歳までしか積み立てられませんが、2022年4月からは65歳まで積み立てることが可能になります。つみたてNISAは金融庁が認めた投資信託などと、投資商品が定められており、運用益が非課税となる長期投資制度です。

貯金だけと比べて大きな差が出る

例えばiDeCoを利用し、月の上限額2万3000円の掛け金で積立投資をした場合、仮に3%の運用益が出たとしたら、20年で約750万円、25年で約1020万円になります。運用益は一定ではなくその都度変わるので金額も多少前後しますが、このような見通しが立てられるのです。これがもし貯金しただけなら、20年で552万円、25年で690万円です。かなりの差が出ます。

もっと効率よく貯めていきたいのであれば、更につみたてNISAで投資額を増やすなどしてもよいでしょう。つみたてNISAは2042年末まで投資できます。2023年までに開始すると、20年間、非課税投資ができます。

ただし、どんなに良いとお勧めしてもその掛け金をねん出できる家計づくりが第一です。まずは支出を見直し、貯金と投資をしていくだけの余剰金が出せるようにしていきましょう。

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