完全養殖クロマグロから早期採卵 世界初の成功 長崎・水産技術研 天然並み生残率、大量生産に道

クロマグロの早期産卵技術

 水産研究・教育機構(横浜市)は31日、水産技術研究所長崎庁舎(長崎市多以良町)の研究で、完全養殖クロマグロの採卵時期を大幅に早めることに世界で初めて成功したと発表した。天然種苗(幼魚)と同等の生残率や成長が見込め、大量生産につながるとしている。
 日本のクロマグロ養殖は、近海で採れる天然種苗に依存。資源量が回復しておらず、完全養殖技術による人工種苗の大量生産が待望されている。
 しかし、養殖いけすで親魚から採卵できる時期は6~7月。海上で養殖を始める夏秋時点で人工種苗の体長は5センチ程度しかなく、4~5月に生まれて30センチ程度に育つ天然種苗と比べ小さい。このため冬の低水温に耐えられず、1万粒から成長し出荷できるのは1~10尾程度と生残率が低いのが課題だ。
 同研究所によると、水槽の水温や日照の代わりの光を当てる時間を調整。採卵時期を3月上旬に前倒しできた。
 長崎庁舎内には国内で唯一、飼育環境を厳密に調整できる親魚用大型陸上実験水槽(直径20メートル、深さ6メートルの円形)がある。養殖クロマグロに産卵させるには、自然界と同じように水温や日照時間を周期的に変動させなければならず、この水槽で6~7月の産卵期の環境条件を2カ月早め、4~5月に再現させた。
 昨年5月から親魚約70尾を飼育し、今年3月9日に約10万粒の産卵を確認。多い日には1600万粒を超えた。今後は早期採取した卵の質を検証し、九州・四国の海上で実用化に向けた実験を行う。
 同研究所養殖部門まぐろ養殖部の玄浩一郎部長は「採卵から1年後の生残率を2倍に引き上げたい」と述べた。
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 国立研究開発法人の同機構は7月20日付で、西海区水産研究所(長崎市多以良町)など全国9研究所をなくし、横浜を中核とする水産資源研究所と、長崎を中核とする水産技術研究所に再編した。

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