公的病院の役割を果たし医療と経営の両輪を回す

**桐生厚生総合病院
加藤 広行 病院長(かとう・ひろゆき)**
1983年浜松医科大学医学部卒業。
群馬大学大学院医学系研究科病態総合外科学講師、獨協医科大学第一外科主任教授、
福島県立医科大学特任教授、桐生厚生総合病院副院長などを経て、2020年から現職。

2020年4月、桐生厚生総合病院の病院長に就任した加藤広行氏。就任早々新型コロナウイルス感染症対策に追われながらも、今後の病院のあるべき姿をしっかりと見据えている。

経営の効率化 医師不足の解決へ

桐生市とみどり市で構成される桐生地域医療組合が運営する桐生厚生総合病院。近郊約16万人の住民の医療と福祉を支える中核病院。加藤病院長は2019年に副院長として赴任、2020年からは病院長として、リーダーシップをとる。

「救急や専門性の高い医療はもちろん、公的病院の重要な役割である周産期医療などの医療ニーズにも、しっかり応えていきたいと考えています。その上で、経営効率化や医師不足の解消など、抱えている課題を一つひとつクリアし、医療と経営の両輪を回していくつもりです」

就任時期が、ちょうど新型コロナウイルス感染症の拡大時期と重なり、就任当初から、その予防のための対応に追われた。

「病態の全貌が見えない中、院内感染が起きないよう、職員は緊張の中で治療に当たらなくてはならず、大変に苦労したと思います。少し落ち着いてきたこともあり、今後は新型コロナの対策もしっかりと行いながら、経営改善に向けて、病院全体で取り組んでいくつもりです」

外科医は挑戦の連続

〝日本一暑い街〟のキャッチフレーズで知られる埼玉県熊谷市に生まれた。父親は大工。その背中を見ながら少年時代を送った。

高校に進み、成績が良くなったことで、医学部の受験を勧められた。選んだのは、静岡県の浜松医科大学。卒業後は熊谷市に最も近い、当時の群馬大学医学部第一外科へ入局を決めた。

「外科医になってからは、先輩の手術から学び、自分が手術を任されるようになったら、また新しい手術に挑戦していきました。患者さんのために一生懸命にすることは当たり前。『型があるから型破り、型が無ければ、それは形無し』という言葉があるように、基本型が重要であり、その上にチャレンジをしていくことが大切です」

専門である食道がんの手術は1000例近くにもなるという。第72回日本食道学会学術集会会長を務めるなど、多くの経験が今の自分を形成していると話す。 「現状維持は後退と同じです。まだ群馬県では例のないような新しい手術に挑戦できる設備や環境を、この病院に備えるなど、挑戦は続けていきます」

医師育成のためのプロセス〝守破離〟

今後は、若手医師の育成を、この病院で実現したいと語る。そのために必要な新病院建設の準備委員会設立も目標に掲げる。

「若い医師を集めるためには、まずは新しい施設であること、そして手術支援ロボット『ダビンチ』を備えるといった高度医療が実践できるなど、魅力ある病院にしていかなければならないと考えています。若い医師が増えることで、病院も地域も活性化していくはずです」

人材育成は今後の医学界において重要な課題。医師は修行にも似た長い育成期間が必要であり、三つのプロセスを経て独り立ちしてほしいと語る。

「それが〝守破離(しゅはり)〟。修行の理想的なプロセスを示す、武道や茶道などに由来する言葉です。師の教えをしっかり学びこれを基本とするのが『守』。その基本に自分の考え方を加えるのが『破』。そして新たな世界を切り開いて師を乗り越えるのが『離』。これらを忘れず、医師としての能力拡大に真正面からチャレンジしてほしいと思います」

桐生厚生総合病院
群馬県桐生市織姫町6-3 ☎️0277-44-7171(代表)

© 株式会社九州医事新報社