2018年度 「倒産発生率(普通法人)」調査

 2019年度の全国企業倒産は8,631件(前年度比6.42%増)で、11年ぶりに増加に転じた。また、新型コロナの感染拡大が企業経営を直撃し、全国的に疲弊感が広がっている。
 普通法人の倒産発生率は、2009年度以降、10年連続で低下し、2018年度は0.24%にまで下がった。これは2001年以降では最も低率で、2008年度の0.53%から10年間で半減(54.7%減)したことがわかった。
 リーマン・ショック時の2009年12月施行の中小企業金融円滑化法やリスケ(返済猶予)対応など、中小企業への資金繰り支援策の広がりに伴い、2018年度の普通法人の倒産は10年前の2008年度と比べ52.9%減少している。一方、普通法人数が2008年度から2018年度の10年間で、4.7%増加したことも影響している。
 新型コロナ感染拡大という稀有の事態を受けて、企業倒産が増勢の気配を見せるなか、規模や業種、地域を問わずあらゆる企業で経営環境の悪化が叫ばれている。企業倒産が増加をたどれば、2019年度、2020年度の普通法人の倒産発生率への影響は避けられない。

  • ※本調査は、2018年度までの都道府県別の倒産発生率(普通法人)をまとめた。倒産発生率は、普通法人倒産件数÷普通法人の申告法人数×100で算出した。分子は東京商工リサーチ調べの個人企業等を除いた普通法人倒産件数とし、分母は2018年~2020年公表の国税庁統計法人税表(平成28~30年度分)に基づく法人数で、小数点第3位を四捨五入した。
  • ※普通法人は、会社等(株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人。

2018年度の倒産発生率は0.24%、10年連続で低下

 普通法人の倒産発生率は2016年度0.26%(前年度比0.02ポイント低下)、2017年度0.25%(同0.01ポイント低下)と低下が続き、2018年度は0.24%(同0.01ポイント低下)と、2001年以降で最低となった。
 倒産発生率は、リーマン・ショックが発生した2008年度に0.53%(前年度0.46%)と0.50%台まで上昇した。中小企業金融円滑化法の施行された2009年度以降は、倒産発生率は年々低下をたどり、10年連続で前年度を下回った。
 2014年度以降、全国企業倒産(個人企業を含む)は1万件を割り込む低水準で推移し、2018年度は8,110件と過去20年で最少だった。普通法人の倒産発生率もこの動きに連動している。

倒産発生率

倒産発生率は静岡が高水準

 2017年度まで3連続で倒産発生率が最も高かったのが静岡で、2016年度が0.40% 、2017年度が0.36%だった。対して、2018年度には0.28%と低下し、宮城が0.29%でトップに代わった。宮城は2017年度が0.20%(34位)だったが、復興需要がピークを越え、倒産が増加していた。続いて高知が2017年度の0.26%(17位)から2018年度は0.29%と発生率が高まり、全体の2番目の高率だった。3位がこれまでトップだった静岡。

都道府県別 熊本県が3年連続で最低

 倒産発生率の最低は、2011年3月の東日本大震災の復興特需を背景に、2015年度まで4年連続で福島県だった。しかし、2016年度以降は、熊本県が2016年度0.10%、2017年度0.10%、2018年度0.12%と3年連続で最低を維持している。2016年度の熊本県の倒産件数(個人企業を含む)は35件(前年度比48.5%減)で、前年度(68件)から半減し、過去20年間で最少を記録した。2016年4月に発生した熊本地震で、被災企業を中心に、国や自治体、金融機関の支援策で倒産が抑制されたのが要因とみられる。

地区別倒産発生率 近畿、関東、東北が高率

 地区別の倒産発生率は、2016年度から2018年度まで3年連続で近畿が最高だった。2018年度は、近畿に次いで、関東(倒産発生率0.25%)、東北(同0.23%)、中部(同0.23%)、九州(同0.21%)、四国(同0.21%)、北陸(同0.20%)、北海道(同0.19%)、中国(同0.18%)の順。近畿と関東が高率で、北海道と中国は低率だった。
 最も高率の近畿は、2018年度に大阪(同0.28%)、滋賀(同0.27%)、和歌山(同0.26%)、京都(同0.26%)、奈良(同0.26%)が比率を押し上げた。関東は、社数が圧倒的に多い東京(同0.26%)で高率が続いたことが響いた。東北は、復興需要のピークを過ぎ、経営環境の悪化から倒産した企業が多かった。
 最も低率の中国は、2018年度は5県のうち、3県(島根、岡山、山口)が0.1%台で、倒産発生率を押し下げた。北海道も倒産件数が減少し、0.19%まで低下した。

産業別 卸売業が最高

 2018年度の産業別の倒産発生率は、卸売業(倒産発生率0.45%)が最高で、2015年度から4年連続で最高率が続いている。倒産件数が高止まりし、普通法人数は年々減少していることも背景にあるとみられる。次いで、ソフトウェア業や出版、広告制作業を含む情報通信業(同0.44%)だった。人手不足などによる倒産増が高率を招いている。
 一方、倒産発生率が低率だったのが、金融・保険業(同0.05%)。倒産件数が10産業のうち最少で、減少が続いている。一方、法人数が増加し、結果的に発生率も年々低下している。次いで、不動産業(同0.07%)は、普通法人の倒産件数が2017年度の273件から2018年度は228件と減少。一方で、不動産業の起業が増え、法人数の増加も倒産発生率の低下につながっている。

 2009年度以降、低下している倒産発生率は2018年度には0.24%となった。金融機関がリスケ要請に積極的に応じてきたことなどを背景に倒産が抑制されている。全国の企業倒産件数の減少とは対照的に、普通法人数は2012年以降増加していることが倒産発生率が低下している背景だ。
 倒産発生率は近畿、関東、中部など大都市圏を含む地区で高水準となった。一方で、低率となったのは、熊本や福島など災害の発生による金融支援や復興需要のあった地域で、必ずしも各都道府県の景気動向に左右されるわけではなかった。
 現在、新型コロナにより企業が疲弊するなか、国や自治体、金融機関をあげた支援策がとられている。これにより、全国的に倒産発生率が抑えられる可能性も出てきたが、支援が途絶えたり、再び感染が拡大すれば、発生率の上昇が懸念される。

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