60歳時ローン残高1250万円なのに手取り月7万減「老後が不安で夜も眠れない」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、52歳、会社員の男性。60歳時点でローンが1250万円残っているのに、手取りが月7万円減ってしまい、老後が不安とのこと。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

手取りが月7万円も下がり、住宅ローンも60歳時点で1250万円程残り、老後の生活がものすごく不安で眠れなくなる日もあります。中途入社のため、退職金も500万円程しかもらえず、住宅ローンの返済で無くなってしまいます。

同居している妻の母は、78歳で年金10万円があるが身体が少し不自由になってきていて妻が面倒をみているので妻はアルバイトが精一杯です。妻の母からは年金から食費を負担してもらっている。

【相談者プロフィール】

男性、52歳、既婚(妻、52歳)

職業:会社員

住居の形態:持ち家(戸建て)

子どもの人数:1人(23歳 ※就職して一人暮らし)

同居の家族:妻、妻の母

毎月の世帯の手取り金額:32万円(夫28万円、妻4万円アルバイト)

年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

毎月の世帯の支出の目安:27万円

【支出の内訳】

住居費:7.7万円

食費:2万円 ※会社での昼食代や外食費や飲み会費は各自で支払う

水道光熱費:2万円

保険料:2.7万円

通信費:2.5万円

車両費:1.2万円

お小遣い:1.5万円

その他:固定資産税12万円/年、自動車税3.5万円/年

【資産状況】

毎月の貯蓄額:4万円

ボーナスからの年間貯蓄額:80万円

現在の貯蓄総額:400万円

現在の投資総額:100万円

現在の負債総額:1850万円

退職金:相談者500万円

年金:夫婦で22万円程

【ローン】

住宅ローン:購入額3000万円、借入額2800万円、 金利1.3%

購入年2008年40歳、返済期間35年・完済時75歳、残債1850万円

2015年借り換え時に返済額軽減で繰り上げ返済実施

2018年に夫が精神疾患により当面は借り換えや保険の見直しはできない


渡邊: こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。

老後の生活準備についてのご相談ですね。今のまま生活していくと、60歳時点で住宅ローンが1000万円以上残っており、収入も減ってしまった中、老後の準備が十分なのかどうか不安ということです。

この不安という気持ちは、先行きがどうなるか見えないことに対して抱くことが多いかと思います。今のままだとどうなるのか、また生活が安心して出来る為には、今からどのような準備をしていけば良いのかが分かると、日々の生活に安心が生まれます。

まず、ご自身の老後の生活について考えてみましょう。今回は、今の生活費をもとに考えますが、実際にはリタイア後どのような生活を送りたいか、老後やりたいことなども具体的に思い浮かべながら考えるのをおすすめします。

65歳以降に必要な老後生活費を算出する方法

老後に必要な資金の目安は下記の式で概算を算出できます。

月の収入(年金等)―月の支出(住居費・食費など生活費)

= 月々の足りない金額

月々の足りない金額×12カ月+年間の予備費(旅行・趣味など)

= 年間の足りない金額

年間の足りない金額×生きる年数+特別支出(介護・リフォームなど)

= 老後に必要な資金の目安額

ご相談者の場合で当てはめてみましょう。今回、月の支出に関しては、まず住宅ローンを別枠にして考えてみます。保険については、65歳までに払い終わるのが月々2万円ほどありますので、それを差し引いています。

月の収入(年金等)22万―月の支出(住居費・食費など生活費)20万

=月々の余剰金額2万

月々の余剰金額2万×12カ月―年間の予備費(旅行・趣味など)50万

=年間の足りない金額26万

年間の足りない金額26万×生きる年数25年+特別支出(介護・リフォームなど)500万

+住宅ローン残債870万(65歳時点概算)

=老後に必要な資金の目安額 2020万

65歳以降に必要な資金の目安としては、大体2020万円程度ということが分かりました。
では、現状のままの生活でそれが準備出来るかについてみていきましょう。

年間いくら貯めればいいのか計算してみる

年間いくら貯蓄が出来れば、貯蓄目標である2020万を準備出来るでしょうか。60歳以降は働いていたとしても収入が下がる可能性があるので、60歳までの8年間でこの2020万円を最低限準備すると考えます。

老後に必要な資金の目安額2020万―現在の貯蓄総額500万―退職金500万

=60歳までの貯蓄額1020万

60歳までの貯蓄額÷60歳までの期間8年

=年間貯蓄目標127万

60歳までに年間平均127万円貯蓄することができれば、90歳までは生活することが可能です。年間の予備費やリフォームなどの特別支出も組み込んでいますので、最低限生活するためには、もう少し抑えられるかもしれません。

現在の年間貯蓄が月々4万+ボーナス80万で、年間128万円の貯蓄ですので、ちょうど今ぐらいの生活を続けて行けば、リタイア後も同じ生活感を継続することが出来そうです。

今後のお金の流れが分かれば繰上げ返済も

また、他の支出の様子などをみながら繰上げ返済も組み合わせていけば、利息軽減効果もあり、より効果的です。

ざっくりですが、年間貯蓄の約半分の60万円ずつを繰上げ返済していくと、60歳のタイミングで退職金と手元資金とで約760万円支払えば、60歳以降の住宅ローン負担がなくなります。この場合の繰上げ返済による利息軽減効果は約160万円です。専門家にシミュレーションを作成してもらい、直近の支出項目に注意しながら、計画的に繰上げ返済していくと良いでしょう。

対策を立てることで不安は軽減できる

今回の試算では、旅行など年間の予備費を50万円、リフォームや介護などの特別支出として500万円計上しており、ある程度余裕を持った試算になっています。夜も眠れないほど不安とのことでしたが、現状の生活を続けても、何とかなるかもしれないということが分かるだけでも安心に繋がるかと思います。

将来を見るのが怖いという方も多いですが、漠然として不安を抱えるより、問題点が見え対策を立てることができたほうが、安心して前向きに生活できます。案外、今のままでも大丈夫ということもあるかもしれません。

ぜひ、安心した生活を実現してほしいと思います。

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