【Red vs. Blue】北朝鮮が核のボタンに近づいて、アメリカは攻撃開始へ?(2017/05/15)

アメリカの二大政党は共和党と民主党。保守共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青だ。人工的には保守派、リベラル派の比率は約半々で、アメリカ分断と言われる理由は、両社の意見が水と油ほど異なるためだ。この連載ではアメリカ国内で報道されたひとつの記事に対して保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれの見解を披露する。

 北朝鮮の動向は、全世界の注目の的だ。第一回目の核実験Xデーと目された4月15日の金日成生4月15日に行われた金日成生誕105周年直前に、複数の米国情報当局の職員が「米国は北朝鮮に対して通常兵器による先制攻撃を開始する用意ができている」と語ったとされる報道がなされ、アメリカでも人々がその恐怖に震えた。直後、米国は朝鮮半島沖の北朝鮮核実験サイトから300マイル(約483キロ)の位置に2隻の駆逐艦トマホークを待機、グアムには北朝鮮に向けて重爆撃機が配備、航空母艦カールヴィンソンを朝鮮半島に向かわせるなどの「行動」に出たが、情報当局職員が語った「準備が出来た」発言に対して、RedとBlueはそれぞれどう反応したのか。

元記事『NBC News』:http://www.nbcnews.com/news/world/u-s-may-launch-strike-if-north-korea-reaches-nuclear-n746366

【Red】冷戦の最後の扉、北朝鮮

当局情報筋の見解は恐怖でも何でもない。マルクス・レーニン共産主義の教義に固執する、世界で最後の抵抗者である北朝鮮。これまで世界は、2500万人の北朝鮮の人々が置かれた窮境に目をつぶってきた。人口の半数が飢餓状況に置かれ、金正恩体制に批判的な言動が少しあったというだけの理由で20万人以上の北朝鮮市民が強制収容所に送られている。ところが今、北朝鮮の核ミサイル発射が可能になり、近隣国、特に韓国、日本、そして米国にとっては大変な脅威になっている。北朝鮮にとって失うものはほとんど何もないのだから、開戦は十分考えられること。これまでテロ、誘拐、核兵器開発による脅しを手段に西側の世界から物質を確保してきたが、今、稼働可能な核ミサイルを手にする寸前にあって、世界はこれ以上北朝鮮を無視し続けるわけにはいかない。

【Blue】パンドラの箱には蓋を

 冷戦は冷戦のままであってもらいたい。北朝鮮は永久的にソウルに狙いを定めた大砲を配備しているし、日本にはミサイルを向けている。そのうえ核兵器を持っていると主張している。全面戦争になった場合、日韓の都市は壊滅状態に陥る可能性が大だ。
2017年に入り、米国と北朝鮮は、距離をおいた冷ややかな関係から武力による威嚇関係へ移行した。トランプ政権は、「金日成」生誕記念日に準備されているという噂の核実験を阻止するため、米軍の艦隊が朝鮮半島に向かって進んでおり、先制攻撃の準備はできていると発表した。実際には、艦隊が朝鮮半島に向かったのは数日後のことだ。
アメリカの強さを鼓舞してみせるこうした演出はハッタリに見えて危険だ。威嚇ゲームを何年も続けている金は、こけ脅しを見逃しはしないだろう。他の国がゲーム参加の義務を感じる前に、中国が北朝鮮をなだめてくれるよう祈る。

(記事トピックスは過去のメジャーな事件やニュースも含みます。)

寄稿者

【Red】ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

【Blue】ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

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