逗子・斜面崩落半年(上) 続発の地元、行政の注意喚起「崖はいずれ崩れるものと」

事故が起きた斜面はモルタルで吹き付けられて防護柵も置かれ、片側通行となっている=4日、逗子市池子

 神奈川県逗子市池子で斜面が崩落し、高校3年の女子生徒が死亡した事故から5日で半年。生活道路に突然約70トンもの土砂が落下し、尊い命が失われた事故は地域に衝撃を与えた。崩落の危険や安全対策に、どう向き合っていくか考えた。

 「もし、少し早く駐車場に戻っていたら…。巻き込まれたかもしれないと思うと、本当に恐ろしい」

 横須賀市のパート女性(48)は振り返る。7月19日午後9時40分ごろ、逗子市内の飲食店で食事し、逗子海岸エリアの駐車場に戻ると、車の周りには樹木が散乱していた。隣接する斜面の崩落だった。

 知人と110番通報。斜面は高さ約30メートル、幅約10メートルにわたり崩れ、車も一部破損した。幸いけが人はいなかったが、身震いした。

 すぐ脇の斜面でも昨年5月に崩落が起き、コンクリート壁で固める工事が進められているさなかだった。女性は「隣の斜面で崩れていれば危険の想像は付く。何かあってからでは遅い」と憤る。

 6月末に市内の住宅街で斜面が崩落した際も、近くの住民は「いつ大規模崩落が起きるか分からず、恐怖と隣り合わせだ。一刻も早く、対策工事を進めてほしい」と実感を込めた。

 国土交通省によると、今年1~6月に全国で発生した崖崩れなどの土砂災害は194件(速報値)。神奈川はうち28件と全国最多で、記録的な大雨が続いた7月には三浦半島を中心に県内だけで40件以上の土砂災害が確認された。

 2019年は1996件で集計を始めた1982年以降4番目に多く、うち神奈川は214件と全国で2番目。豪雨や地震が全国で相次いだ2018年は3459件と同最多を記録している。

 崖地が多い三浦半島は災害リスクと隣り合わせだ。逗子市では今年、崩落事故が起こり、尊い命が二度も失われた。今年2月の女子高生の死亡事故は晴れた日に発生し、国交省は「直接的な引き金は不明だが、複合的な作用で風化が促進された」などと報告。4月には海岸の崖が崩れ、70代の男性が亡くなった。現場は土砂災害警戒区域外で、崩落原因も分かっていない。

 市は7月、ホームページに注意喚起を促す項目を設け、こう明記した。『尊い命が失われる事故が発生しています。今まで想定していなかったところの崖崩れもあります。崖はいずれ崩れるものと認識せざるを得ない時が来ました』

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