読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、3人の子どもを持つパートの女性。月の手取りは50万以上あるものの、高3・高1・中2のお子さんの塾代などで毎月数万程度の赤字になってしまうそう。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。
毎月赤字で、昨年からの1年間で社内預金が100万円減ってしまいました。貯金は社内預金のみでしています。
高校3年生、高校1年生、中学2年生の子どもがおり、高校進学、大学進学も目前なのですが、進学資金が不足していることが気になっています。
共働き夫婦なので、世帯収入は額面で1000万円を超えています。子どもの塾代などでお金がかかる時期ではあるのですが、他のご家庭と同じようにしているだけなので、やむを得ないと思います。ですが収入からいうと、もっと貯金ができていても良いのではないかとも思っています。
普段は贅沢はしていないつもりですが、子どもはかわいそうな状況にならないよう、冷凍の食品や塾に持っていけるお菓子は余分に買っているかもしれません。また、塾の途中で何か食べるものを購入するようにお小遣いを渡すこともあります。
これから先、子どもの進学費用も心配ですが、住宅ローンも早期完済したいです、私たち夫婦の老後資金も貯めたいと思っています。どのように貯めていくと良いでしょうか。
【相談者プロフィール】
相談者(46歳・パート)、夫(47歳・会社員)
長男(公立高校3年)、長女(公立高校1年)、次男(区立中学2年)
世帯の毎月の手取り収入:相談者10万4000円、夫41万8000円
年間の手取りボーナス:夫約140万円
貯金:280万円(夫の社内預金のみ。1年間で100万円減った後の金額)
投資信託:110万円
【支出状況(総支出額:56万円)】
住居費:13.2万円(ローン、管理費)
食費:9.3万円
水道光熱費:2.1万円
通信費:3.2万円
生命保険料:2.4万円
日用品代:1.8万円
教育費:12.4万円(主に3人分の塾代)
被服費:2.1万円
こづかい:6.2万円(夫4、長男1.2、長女0.7、次男0.3)
その他:3.3万円
FP: 教育費や将来必要な資金についてご心配されているのですね。確かに現状は赤字家計ですし、ご主人のボーナスはどのようになっているのか疑問に思います。確かにお金がかかる時期ではあるのですが、毎月の収入もしっかりありますし、ご主人のボーナスもあるので、工夫次第で貯金を増やしていくことは可能だと思います。
支出の優先順位づけは必須
毎月52万円ほどの手取り収入があるのに、全て生活費に使って残らないのは、全体的に支出が多くなり家計がメタボ化しているか、何か特定な費目にお金をかけていることが多いものです。
相談者さんの家計の支出状況を見ると、その両方が影響しているように見えます。教育費に突出してお金を使っているのに、その他で食費、日用品代、通信費、被服費などにも支出を多くしています。理由があってこのような支出になっているのかもしれませんが、全てを正当化して支払っているといくら収入があっても足りなくなります。本当に必要な支出中心にお金を使えるようにお金の使い方を考え直してみましょう。
コツは、支出一つずつについて、優先順位を考えてみることです。優先順位が高いものはしっかりとお金を出すべきですし、優先順位が低いものは支出をカットしたり、毎月ではなくとも隔月、2〜3カ月ごとなど、間隔を空ける支出の仕方でも良いかもしれません。そのように支出ごとにお金のかけ方をコントロールできると、次第に1カ月の総支出額を減らしていくことができるでしょう。
全部必要だと思って支払っていたはずなのに、意外といらない支出だっということに気がつくことも多いと思います。
教育費は大切ですが、全部必要なのか再検討の余地あり
お子さんが受験の時期になると、塾代などでお金がかかりますよね。仕方がないと考えがちですが、はたしてそうでしょうか。塾は確かに効率の良いアドバイスをくれますし、受験直前には心強いものですが、受験までまだ期間が長いという場合は、負担が大きいという場合もありえます。家計の負担も大きく、貯金できるスピードに影響しますから、できるだけ必要最低限に抑えたいものです。お子さんも交え、必要なのか、過剰なのかを話し合っても良いと思います。
進学に向けた貯金が十分にあるのなら、多少多めに塾があっても良いのかもしれませんが、相談者さんのご家庭は現状、そうとは言えません。長男さんの大学1年目をなんとか支払えるかどうかという貯金の状況です。
この状況で塾代などを無理して払っていけば、進学資金を貯めることができず、せっかく合格できても費用の工面、例えば教育ローンを借りる、奨学金を検討するなどで大慌て。最悪、お金の都合で進学を諦めなくてはいけないという事態も念頭に置かなくてはいけなくなります。
このような状況で教育費でお金を使ってしまい、または不足して教育ローンを組んでしまい、老後資金が全く準備できないという方も割といらっしゃいますので、今からでも下のお子さんたちの教育費のために、貯金ができる家計を作りましょう。長男さんには間に合わないかもしれませんが、奨学金の利用も検討できるでしょうし、お子さん自身に多少負担してもらうなども可能でしょう。進学先にもよりますが、今の貯金でどこまで学費を負担できるのか、両親と長男でいくら準備する見込みになるのかなどの計画をたれられれば、より良いだろうと言えます。
預金は「使う」「貯める」の役割別に預け先を変えて
ところで、相談者さんのご家庭の貯金は、ご主人の会社の社内預金のみということですが、これはお金の持ち方として少し不便な部分もあるのではないかと思います。引き出しは自由な場合が多いですが、銀行のATMのように機械にカードを入れてすぐ引き出せるものではなく、会社で手続きをして、1週間以上後にお金を手に入れられるという仕組みである場合がほとんどだからです。
つまりすぐ使えるお金を置いておくには少々不便かと思います。できれば緊急時にもすぐに使える口座を一つ準備し、しっかり貯めたいお金は金利が高く設定されている社内預金に入れるなど、役割を分けると便利です。
「使う」「貯める」口座に入れておく金額の目安
すぐ使えるようなお金は「使う役割の口座」に生活費とともに入れておきましょう。目安は毎月の生活費の1.5カ月分です。不安であれば2〜3カ月分などを入れて置いても構いませんが、このくらいあれば毎月の生活費には困りませんし、急な支出があっても余分に入れている0.5ヵ月分から支払うことができます。それ以上のお金は「貯める役割の口座」として、社内預金を活用すると良いと思います。ここには生活費の6カ月以上、1年分などを入れておくことが理想です。そして教育費など数年内に使うお金は、できればこの6カ月ないし1年分のお金とは別に貯めることが理想ですが、相談者さんは今から準備するのは難しいと思うので、その辺りは流動的にできれば良いかと思います。
口座を役割別に分けると、「貯める役割の口座」からお金を引き出すことなく、生活していくことができます。これがとても大切です。そして、社内預金は金利が高く設定されていますので、今回は貯める口座に社内預金を勧めましたが、一般の銀行口座でも構いません。
きちんと貯める仕組み、つまり支出を見直して毎月余剰金を作ること、簡単に引き出して使うことがない口座にしっかり貯められるようにし、今後の教育費や老後資金づくりを目指してください。