ウィズコロナで訪れる"ニューノーマル時代"の変化を楽しむために

新型コロナウィルスの猛威により生活が一変し、ウィズコロナのニューノーマル(新たな状態や常識。避けられない変化を意味する)時代を生きるため、生活そのものの変容が求められてもいます。

私たちはきっとこの変化にもうまく適応して、自分たちらしい楽しい生活を見つけられるはずです。限られた環境下で最大限の成果を出す事は一人ひとりの余暇時間も増やし、QOLを高めることにつながります。

コロナ禍で働き方が大きく変化する今、自分らしい生き方を大切にしながらも、仲間と共に楽しく成果を出して働けるようにするためにはどんな組織力が必要になるでしょうか。


働き方が変わる今こそ、日本の労働生産性を見直すチャンス

今、世界の中で日本は経済的にどのような立ち位置なのでしょうか。様々な角度から分析をすることができると思いますが、今年、働く場にとても大きな変化をもたらした労働量・時間に関わるデータから少しひもといてみましょう。

例えば労働生産性といったデータから見ていくと、日本は諸外国の中でもかなり低い労働生産性のまま、かつ、この20年ほどで更に幅を広げられている業界が多いことが見てとれます。

労働生産性とは大まかに述べると労働の成果(付加価値)を労働投入量(労働者数か時間あたりの労働量)で割った、『労働者が1時間で生み出す成果』のことです。

たとえば、米国の生産性水準を100とした時、各種18業界に分けた業界で2017年に100を超えたのは化学業界のみです。製造業全体は100に対して69.8、サービス業全体は48.7でした。尚、1997年は製造業全体が72.7とサービス業全体が57.3と20年間で米国と比較した労働生産性が悪化したことがみてとれます(※1)。

過去に言われたようなJapan as No.1は品質のことという声もあるかもしれません。労働生産性を分析する専門家も、この成果の中に例えばサービス品質などを盛り込むと結果は変わってくるが、データがとりづらいなどの声もあります。

しかし、長きにわたってその品質を高め、維持し続けている中で20年前より労働生産性が他国に差を広げられてしまっている現実があります。また、品質についても、既に諸外国の品質の高さは日本を超えているものも数えきれないほどあるでしょう。日本は労働投入量をもっと効果的に活用できないのでしょうか。コロナ禍の変化はチャンスになる可能性があります。

コロナ前後の働き方の変化

政府は数年前から働き方改革を謳い、残業時間減少を目指してきましたが、制度よりも半強制的な力でこの働き方改革を後押ししてくれたのが新型コロナウィルスでしょう。コロナ禍での働く人の意識調査結果(※2)から、労働時間については43.2%が減少したと感じ、業務量も37.6%が減少したと感じています。

さらに自宅での勤務が29.0%の企業で導入され、時差出勤や短時間勤務などの働き方の変化が起こっています。ただし、自宅での勤務での効率は(上がった、やや上がった)との回答は33.8%と、まだ在宅での仕事の効率化が進んでいない様子がうかがえます。

効率は今一歩なものの、コロナ禍収束後もテレワークを希望する人は62.7%です。業務の見直しやweb会議や決済などのツールの工夫も必要ですが、働き方が柔軟になることと、一人ひとりの改善が、今までの高い品質と成果を保ちながら、一気に日本の労働生産性を高めるチャンスとも言えでしょう。

時間を効率的に使うために発信し、応えてもらえる環境づくり

では、どうやって効率的に時間を使うか、それが大きな問題です。私事ですが、コロナ禍にいわゆるコロナ婚をして、生活に大きな変化が生じました。37年間の人生、特に18歳で大学進学の状況から19年間(約半生!?)は一人暮らしで本当に自分だけのための時間を謳歌していました。他人との生活が始まり、互いのために工夫しなければいけないことの多さに戸惑いの日々です。

コロナ禍で在宅ワークが適用されていなかったら、今頃どうなっていたか想像もできません。パートナーの勤務時間(昼から夜)と私の今までの勤務時間(朝から夕方)とが大きくずれているために、なんらかの工夫が必要でした。

狭い家では2パターンの生活リズムが共存できません。私の職場環境の方が時間固定ではない環境だったため、まずは上長に相談しました。相談内容はフレックスの活用度合いについてです。上長はまず私の置かれている状況と、変化によるストレスに耳を傾けてくれました。そのうえで、何時からスタートするのであれば、負荷がかからないかの改善案を共に考えてくれました。

その際、お客様に迷惑をかけたり、仕事に支障が出ないようにするためにはどうしたらいいか、上司の働き方の希望も伝えてくれました。上司は朝型。私は夜型。お互いの生活リズムと体調にはその分担がぴったり。

そこでお互いが仕事中として共有できる時間である午後イチがネット会議の時間を設定しようと調整もできました。会社としては朝から夜までどちらかが対応はできますし、互いの共有もそれぞれの仕事後半、もしくは前半に持つことができます。

この話し合いの時に改めて感じたのは発信することの大切さと、応えてくれる上長側のリーダーシップの影響力の大きさです。もちろん困っている側が発信することは言うまでもなく必要です。人が何に困っているかは言わなければ伝わりません。その後の上長が発揮してくれたリーダーシップはまさに上長とともに昨年末オーストリアで学んできた今のドイツを支えるリーダーシップそのものでした。

これからのリーダーシップのあり方

今ドイツで必要とされるリーダーシップは旧来型の権威をふりかざすリーダーシップではありません。社員同士の人間関係を築き上げ、情報を皆で共有し、互いに権限を与え、自律的に問題を解決し、課題を達成できる組織づくりを行うリーダーシップです。

私の変化に寄り添い、フレックス制度をうまく活用できることと上司自身の生活リズムを開示して共有してくれ、私が働いている時間に私が自分の管理下で仕事がこなせるように任せてくれました。

そのような環境だからこそ、私自身はその働く中で問題が生じた時には解決を目指したり、その案を報告・相談することができますし、より高みを目指せる部分も自分なりに工夫したい気持ちがわいてきます。

信頼され、期待されると人はその信頼・期待に応えたくなる。そんな当たり前の心の動きを自分自身が実感しています。私の結婚生活のクオリティをも尊重してくれる上司のリーダーシップを見て、私自身も周囲にその姿勢と態度を示したいとより一層感じられるようになりました。

人として互いの背景まで尊重し合える組織づくり、それがニューノーマル時代に必要な基盤となると身をもって感じています。上記のリーダーシップのポイントは上長だけが持つべきものではないと思います。部下が先にその要素をもって接することが周囲に良い影響を及ぼすことが必ずあると思います。

コロナ禍の変化は人によってさまざまな影響を及ぼしているはずです。前回のコラムでも書きましたが、自分の変化だけではなく、周囲の困りごとに耳を傾け互いに協力し合える組織づくりができるときっと理想の環境に近づいていくはずです。

自組織の制度をうまく活用しながら仲間とともに成果を出すことも、今から新しく働く場を見つける方々は新しい組織で、または最近では在宅でできる派遣のお仕事、おうち派遣という制度なども私の所属する組織でも事業として開始しています。

様々な働き方が可能になってきた社会でどう自分が自由に羽ばたいていくか、考えるチャンスが今訪れているのかもしれません。

※1 公益財団法人 日本生産性本部「生産性レポート Vol.13「産業別労働生産性水準の国際比較 ~米国及び欧州各国との比較~」
※2 公益財団法人 日本生産性本部「第1回 働く人の意識調査~新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響を調査~」

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