WEC:トヨタ、半年ぶりのシーズン再開となるスパでローダウンフォース仕様を初投入へ

 WEC世界耐久選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは、8月13〜15日にベルギーのスパ・フランコルシャンで行なわれる2019/2020年シーズン第6戦『スパ・フランコルシャン6時間』レースで、4年連続となる勝利を狙う。

 WECの2019/20年シーズンは、当初予定されていたサンパウロ・ラウンドの代替戦となる2月の第5戦オースティン(COTA:サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)を最後にシーズンが中断。3月に予定されていたセブリング1000マイルがキャンセルとなり、本来4月に予定されていたスパ戦も8月へと延期されていた。

 今回のスパ6時間レースは新型コロナウイルス対策のため無観客で開催されることになるが、サーキットのスパ・フランコルシャンはTOYOTA GAZOO Racing WECチームの本拠地であるドイツ・ケルンから約120kmとほど近く、トヨタにとっては富士スピードウェイに次ぐ“ホームレース”となる。

 トヨタは現在、スパで3年連続の勝利を挙げており、今回のレースでは4年連続の勝利を目指し、2台のトヨタTS050ハイブリッドを投入する。

 LMPのドライバーズタイトル争いは激しさを増しており、選手権をリードするトヨタ7号車マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組からわずか5ポイントの差で、トヨタ8号車のセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組が続いている。

 変更されたカレンダーでは9月に第7戦のル・マン24時間が予定されており、“ル・マン前哨戦”というスパの位置づけは変わらない。トヨタは例年と同じく、ル・マンで使用する予定のローダウンフォース(ロードラッグ)仕様の空力を今季初めて、スパで投入する。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズで行なわれた2019-2020シーズン第5戦ではサクセスハンディキャップが重くのしかかり、ノンハイブリッドのプライベーター勢の後塵を拝した。

 エンジニアとドライバーたちは、レースのない期間にも戦いの感覚を維持するため、本来であればル・マン24時間レースが行なわれていた週末に、バーチャル・ル・マン24時間レースに参戦。ドライバー=エンジニア間の協力関係の感覚を取り戻せたという。

 また、7月上旬には南仏のポールリカールにおいて3日間のテストも実施し、WECのレース再開、そしてシリーズ最大のイベントであるル・マン24時間レースに備えてきた。

 なおスパ6時間レースでは走行初日となる13日のセッションを、フォーミュラEベルリンに参戦するブエミが欠場。8号車は一貴とハートレーがドライブする。

■「サクセスハンデを乗り越えるのは容易ではない」と小林可夢偉

 スパでのレースに向け、村田久武チーム代表は「再びレースをできることが大変楽しみです」とコメントしている。

「万全な体制で安全を確保し、レース再開にこぎつけたFIA国際自動車連盟/WECの多大な努力に感謝します。世界中が大変な事態になっていますが、来週行なわれる2月以来となるWECレースにより、多くの耐久レースファンの皆様に笑顔が戻ることを願っています」

「レースがない間、チームのメカニック、エンジニアからドライバーに至るすべてが緊張感を持ち続け、この日のために全力で準備をしてきました。もちろん優勝を目指して戦います。それがまたル・マンへの最大の準備になると確信しています」

 ふたりの日本人を含むTOYOTA GAZOO Racing WECチームドライバーのプレビューコメントは以下のとおりだ。

●マイク・コンウェイ(7号車)

「我々7号車はここ数年、スパでは力強いレースを戦ってきたが、自力ではどうにもならない要因で勝利には届かずにいた。ル・マンも同様で、それもレースではあるけれど、それだけに本当に勝利を切望しているし、そのために全力を尽くす」

「スパはル・マンへ向けた準備という意味でも重要なレースなので、ポール・リカールテストでのデータをもとに、ローダウンフォース仕様から最高のパフォーマンスを引き出す必要がある」

●小林可夢偉(7号車)

「ふたたびレースを戦うのが待ちきれません。特にスパのような最高のサーキットならなおさらです」

「我々7号車のメンバーは全員が勝利へ向けて高い士気に満ちあふれています。とはいえ、サクセス・ハンディキャップがあるのでそれが容易ではないことも分かっています」

「我々7号車はここ何年か、スパでは本当に速さを見せていたのですが、さまざまな理由で勝利には手が届きませんでした。それだけに今度こそは表彰台の真ん中に立つべく全力で挑みます」

●ホセ-マリア・ロペス(7号車)

「スパでのレースは本当に楽しいし、とくにTS050ハイブリッドでこの最高のコースを走るのは素晴らしい体験だ」

「オースティンでレースを戦ってからずいぶん時間が経ってしまったので、チーム全員がふたたびレースをするのを待ちきれない状態だ。先月のテストでふたたびTS050ハイブリッドをドライブできたことはもちろんうれしいが、いまはとにかく実際のレースの現場に戻るのが待ち遠しい」

7号車トヨタTS050ハイブリッドを駆る選手権リーダーのマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組。

●セバスチャン・ブエミ(8号車)

「来週末、スパでローダウンフォース仕様のTS050ハイブリッドをドライブするのが楽しみだ。ポール・リカールでのテストはうまくいったが、実際のレースウイークと比べることはできない」

「スパはル・マン24時間レースへ向けた重要なステップでもある。私自身は、スパでは、直近の3年勝利を挙げるなど、いくつも良い思い出がある。今年もその勢いを維持できるよう頑張るよ」

●中嶋一貴(8号車)

「ここ数カ月、モータースポーツイベントの優先度が低いなかで我慢を強いられてきたので、ようやくレースに戻ることができて本当にうれしいです」

「ノンハイブリッドLMP1勢との戦いは厳しいものになると思いますが、我々はスパではいつも強さを見せていますし、今回も全力で挑みます」

「またローダウンフォース仕様のTS050ハイブリッドで戦うのが今季初めてとなりますので、ル・マンへ向けた準備という意味でも大変重要です」

●ブレンドン・ハートレー(8号車)

「TS050ハイブリッドで初めてスパでのレースを戦うことになるのでとても楽しみだ」

「スパはほとんどのレーシングドライバーが大好きなコースだと思うし、長いインターバルからの再開の舞台としては最適だと思う。スパのコースは素晴らしいコーナーと高低差のあるレイアウトが流れるように連なり、最高だね」

「先月の耐久テストもうまくいったし、全員がレース復帰へと準備万端。チャンピオン獲得へ向けて戦い続けるよ」

8号車トヨタTS050ハイブリッドをドライブする中嶋一貴。マイク・コンウェイ、ブレンドン・ハートレーとともに、7号車を追う。

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