『この世の果て、数多の終焉』フランス人青年兵士の目を通して描かれる戦争の残虐さ

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 第2次世界大戦末期のフランス領インドシナを舞台に、ギョーム・ニクルー監督が、心に傷を負ったフランス人の青年兵士の目を通して、戦争が生む憎悪、人間の残虐さを描いた戦争映画です。終戦間近の1945年、フランス領インドシナに進駐していた日本軍がクーデターを起こし、それまで協力関係にあったフランス軍に一斉攻撃を仕掛け、大虐殺されるシーンから始まります。

 たった一人生き延びた青年兵士ロベールは、兄を残虐な方法で殺害したベトナム解放軍の将校への復讐を誓い、部隊に復帰します。ベトナム人の娼婦マイに惹かれて一途に愛を求める一方、ジャングルでゲリラとの戦いを重ねるうち、次々に目の当たりにする残虐な人間の行いを前に心を壊していってしまいます。

 ロベールを演じるのは、映画『ハンニバル・ライジング』などハリウッドでも活躍するギャスパー・ウリエル。派手な演出もなく、少ないセリフで若き兵士の慟哭を表現するギャスパーの芝居からは静かな狂気が伝わってきて、まるでいつまでも終わらない悪夢が続いているような、これまでの戦争映画とは全く違った雰囲気の作品となっています。

 8月15日の終戦記念日には、多くの映画館で戦争をテーマにした作品が上映されますが、日本でもなく、ハリウッド映画で描かれるアメリカでもない、フランスの兵士が過ごした暗澹たる日々を追体験してみてはいかがでしょうか。映画館から出たら、コロナ禍の日本ですらホッとため息が出てしまうと思います。★★★★☆(森田真帆)

8月15日(土)から全国順次公開

監督:ギョーム・ニクルー

出演:ギャスパー・ウリエル、ジェラール・ドパルデュー

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