上場企業「新型コロナウイルス影響」調査(8月11日時点)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、業績を下方修正した上場企業は8月28日12時までに1,091社に達した。業績の下方修正分の合計は、売上高が10兆1,646億円と10兆円を超え、最終利益も4兆9,656億円と5兆円に迫った。
 業種別での下方修正企業の最多は製造業だった。グローバル展開を進めるなか、新型コロナウイルスによる世界的な市況減退の影響を受けている。次いで、外出自粛や臨時休業・営業時間短縮による個人消費の急減が直撃したサービス業、小売業の順。上位3業種が約7割を占め、新型コロナのインパクトの大きさを物語っている。

  • ※2020年1月以降、適時開示で「業績予想の修正」や「従来予想と実績との差異」などで、業績の下方修正を開示した上場企業のうち、新型コロナの影響を理由としたものを抽出し、集計した。
    全決算期を対象として集計。従来予想を一旦取り下げ、「未定」とした場合は社数のみをカウント。ただ、一度 新型コロナによる影響を理由として下方修正した上で、それを取り下げたケースは下方修正分を集計。

売上の下方修正、最大はキヤノンの6,200億円 1,000億円超は23社

 新型コロナの影響による売上高、利益の下方修正は1月30日に日本ゼオン(株)(東証1部)が初めて公表、3月26日に売上高マイナス分が1兆円を突破した(135社、売上高▲1兆1,944億円、利益▲1兆1,177億円)。以降、企業業績への影響が深刻化するに連れ、下方修正を開示する上場企業が相次ぎ、業績下方修正額、社数ともに加速度的に拡大した。
 売上高の下方修正額の最大はキヤノン(東証1部、2020年12月期)で、当初予想から6,200億円引き下げた。4月23日に新型コロナの収束時期の見通しが立たず「業績予想の合理的な算定が困難」として従来予想を一旦取り下げた。その後、7月28日に再び業績予想を公表し、事業環境悪化による大幅な業績ダウンの見通しを明らかにした。
 次いで、原油・ガス開発最大手の国際石油開発帝石(東証1部、2020年12月期)、ヤマハ発動機(東証1部、2020年12月期)などが続く。
 7月28日時点までに集計した売上下方修正額のマイナス分は合計7兆6,628億円だった。その後、ヤマハ発動機(東証1部、売上高▲3,900億円)、資生堂(東証1部、売上高▲2,670億円)、AGC(東証1部、売上高▲2,000億円)、キリンホールディングス(東証1部、売上高▲1,760億円)、横浜ゴム(東証1部、売上高▲1,240億円)など、12月期決算企業の大手が相次いで通期予想の大幅な下方修正を発表した。
 12月期決算は通期で新型コロナの影響を受けるため、下方修正額も大規模となるとみられる。売上高の見通しを1,000億円以上引き下げた企業は、7月28日時点の17社から約10日間で23社に拡大した。

業績下方修正額の推移(累計)

製造業、サービス業、小売業で約7割

 業績の下方修正企業の業種別では、製造業が443社(構成比40.6%)で約4割を占めた。製造拠点を置く中国での混乱に始まり、サプライチェーンの乱れなどがあったほか、感染が世界中に拡大するに連れて世界的な景気停滞に伴う市場の縮小予測など、多大な影響が及んでいる。
 次いで、インバウンド需要の消失や、緊急事態宣言に伴う休業、外出・移動の自粛に伴う国内消費の落ち込みの影響を受けたサービス業の193社(同17.6%)、小売業の153社(同14.0%)と消費関連の業種が続く。
 製造・サービス・小売の上位3業種で、789社(同72.3%)と約7割を占めた。
 このほか卸売業93社(同8.5%)では、原油価格の下落などによる資源関連の大幅な特別損失を計上した総合商社などが目立った。

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