阪神ガルシア、“大荒れ”も勝負機は逃さず 藪恵壹氏がポイントに挙げた5回の攻防

阪神のオネルキ・ガルシア【写真:荒川祐史】

序盤は制球が荒れて球数かさむも、7回を108球で投げきる

■阪神 9-2 DeNA(11日・横浜)

阪神は11日、敵地でのDeNA戦に9-2で勝利した。先発したオネルキ・ガルシア投手は、今季8度目の先発マウンドで初勝利を記録。「今日の勝因はガルシアですよ」と白星に相応しい投球だったと評価するのは、阪神OBの藪恵壹氏だ。

立ち上がりは制球が荒れ、ボールとストライクの差が歴然としていた。初回に味方が1点を先制しても、裏の攻撃で楠本泰史外野手にあっさり同点ソロを許す失投も。3回までは毎回四球で歩かせるなど、球数がかさみテンポの悪い登板だった。

だが、4回を3者凡退に締めるなど徐々に状態を上げ、気が付けば7回を投げて108球、4安打7奪三振4四球1失点と力投し、今季初勝利を手に入れた。

ガルシアにとってカギとなったは「5回を無失点に抑えたことでしょう」と藪氏は言う。

「5回表、1死から植田(海)選手がフォアボールを選んで出塁します。ここで打席に入ったガルシアは送りバントの構えを見せますが、カウント3-1から植田選手が二盗を試みました。結果は失敗。こういうプレーがあった時の直後は、なぜか投手が崩れることが多いんですよ」

重要な局面に立たされたガルシアだったが、ここで見事に3者凡退。序盤は6回まで持ちそうもない様子だったが、尻上がりに状態を上げて7回を投げきった。

「ガルシアが6回で降板していれば、阪神は7回からブルペンを使うしかなかった。そうなると勝利の行方は正直、分からなかったと思います。ガルシアが7回を投げきってくれたから、ブルペン陣に負担はかかりませんでしたし、8回以降のマネジメントがしやすくなりましたね」

投手のマネジメントをしやすくなるという意味では、先発は投げられるところまで投げさせる、という従来の形ではなく、藪氏は「先発は7回もしくは110球のいずれかをクリアするよう目標を立てればいいんですよ」と話す。

「先発が7回、110球目までと分かっていれば、救援陣はいつから肩を作ればいいのかが分かる。何か目安となる数字を掲げておけば、周りは自然と準備を始めたり、心積もりをするようになります。そうすれば、いつ投げるのかも分からない中継ぎ投手が無駄に肩を作り続ける必要はない。投げ過ぎ防止にも繋がって、故障が減ると思います」

また、藪氏によれば、いきなり9回を投げきるように課題を出されるよりも、達成できそうな目標を与えられた方が、投手は集中力高く、その範囲で全力を尽くすようになるため、若手投手を育成する時にも有効だとという。

「6回で終わったか、7回まで投げきったか。この差は大きいです。今日は初勝利に相応しい力投でした」

この勝利をきっかけに、2勝目、3勝目と積み上げていきたい。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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